豊竹山城少掾

豊竹山城少掾の生涯

豊竹山城少掾（とよたけ やましろの しょうじょう）は、義太夫節の名人として知られ、明治・大正・昭和の三代にわたり活躍しました。彼は1878年12月15日に東京の浅草に生まれ、本名は金杉彌太郎（かねすぎ やたろう）です。8歳からは義太夫の修行を開始し、室町時代から続く伝統的な芸能の継承者としてその名を馳せました。

来歴

山城少掾の芸術家としてのキャリアは、若年期の師匠たちによって形成されました。彼は3歳のとき、三代目片岡我童の弟子として歌舞伎に出演、その後8歳で竹本政子太夫および鶴澤清道の指導を受け、義太夫節の世界に足を踏み入れます。1887年には五代目竹本津賀大夫に入門し、小津賀太夫を名乗り、1889年には大阪に移って三代目竹本津太夫に学びました。この年には文楽座での初舞台も果たしています。

1909年には二代目豊竹古靱太夫を襲名し、若手の中で持ち歌の技術が評価されます。1930年以降、彼は四代目竹本津太夫、六代目竹本土佐太夫と共に三巨頭の一角として名を広めました。1942年には文楽座に所属し、1943年には帝国芸術院賞を受賞するなど、その実力が認められます。1946年には帝国芸術院の会員となり、翌年には秩父宮から掾号を拝受し「豊竹山城少掾藤原重房」と改名しました。そして名実ともに当時の第一人者として認知されました。この年、昭和天皇の前で演奏する機会も得ています。

1955年には人間国宝に指定され、その後も彼の影響力はさらに強まりました。1959年に文楽座での引退興行で『二月堂』の良弁役を演じ、この年には大阪市民文化賞を受賞します。1960年には文化功労者に選ばれ、1964年には勲三等旭日中綬章を授与されました。1967年4月22日、彼は気管支肺炎により88歳でこの世を去ります。

芸風と影響

山城少掾の芸の特徴は、非常に深い戯曲の解釈と詳細な心理描写にあります。加えて、音遣いが豪華でありながら技巧であることから、彼のスタイルは「山城風」と呼ばれ、同時代の名人の中でも特に評価が高かったです。彼の相三味線の師匠には三代目鶴澤清六や四代目鶴澤清六が名を連ね、特に四代目清六とのコンビで知られるようになりました。

後進への影響

豊竹山城少掾の教えを受けた門下生には、八代目竹本綱大夫がいるほか、四代目坂田藤十郎も彼の発声法を学んでいます。数多くの逸材を育成した彼の影響は、現代の義太夫節にも大きく残っています。

著作と関連書籍

彼の芸術を理解するための著作として『山城少掾聞書』や『十人百話 第7』などがあり、関連書籍も多く出版されています。特に渡辺保の『昭和の名人豊竹山城少掾 魂をゆさぶる浄瑠璃』や藤田洋編の『豊竹山城少掾覚書』は、彼の芸術の深さを知るために重要な資料です。

山城少掾の名と業績は、今なお多くの人々に影響を与え続けており、義太夫節を愛する人々にとって欠かせない存在であると言えるでしょう。

もう一度検索