賀茂在昌

賀茂在昌（かも の あきまさ）

賀茂在昌は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活動した公家兼陰陽師であり、その洗礼名はマノエル（Manoel）です。彼は正二位・勘解由小路在富を父に持ち、官位としては従四位下・陰陽頭を授与されました。彼の人生に関する詳細な記録は乏しいため、多くの点が未解明とされています。

生い立ちと家系

在昌は、賀茂朝臣姓を持ち、陰陽道を歴代で継承してきた賀茂家に生まれました。具体的には、彼の家系は家祖である賀茂忠行や賀茂保憲に遡ります。『歴名土代』には「故在富卿子実」と記載されていますが、実際には何らかの経緯により養子に出された可能性も指摘されています。永正17年（1520年）または永正16年（1519年）のいずれかの年に生まれたと推測されており、出身地は山口であったとされます。

父、在富はその弟の子である在種を養子とし、在種は天文20年（1551年）に21歳の若さで亡くなりました。この出来事によって、在昌は在富家の唯一の継承者となりました。

キリシタン陰陽師としての活動

在昌が特筆すべき点として彼の信仰が挙げられます。永禄2年12月（1560年1月）、当時の宣教師であるガスパル・ヴィレラたちとの接触を通じて、彼はキリシタン信仰を受け入れ、洗礼を受けました。さらに、永禄7年（1564年）には、家族を伴い京を離れ、豊後府内に移住しました。

この道中、彼の妻は出産の兆しを見せ、伊予国堀江に立ち寄った際に男児を出産したと伝えられています。この子は後に勘解由小路在信と考えられています。在昌はまた、息子メルショルを修道士として奉仕させることを決意しましたが、メルショルは後に修道助祭として叙階された後、短い生涯を送りました。

家族と後継問題

在昌が豊後に移住した翌年の永禄8年（1565年）には、父・在富が後継者不在のまま死去しました。在昌の失踪により、勘解由小路家は後継者問題に悩むこととなります。在昌の死後も家系が完全に断絶することはありませんでしたが、彼の息子と思われる在信に関する記録は後の時代に途絶え、間もなく賀茂氏勘解由小路家は絶家してしまいました。

陰陽頭としての活動

在昌が京に戻った後、天正8年（1580年）には初めて文献に登場し、その活動が認められるようになります。彼は陰陽頭に任ぜられ、その後も織田信長の元で行われた天正十年改暦問題に関与しました。気象と天文の専門家としての彼の知識は評価され、豊臣秀吉に重用されていたことも窺えます。

天正18年（1590年）4月には、方広寺大仏殿の地鎮祭を執り行い、その活動は天皇家にも認められました。彼はその後、従四位下に叙位され、慶長4年（1599年）に亡くなるまでの間、その影響力は衰えることがありませんでした。

結論

賀茂在昌の生涯は、戦国時代の波乱の中で陰陽道とキリスト教信仰を結びつけた異色の公家として、後世に伝えられています。彼の歴史的な背景や家系は複雑ながらも、在昌を通じて見えてくるのは日本における信仰の多様性と、その時代の陰陽道の役割の重要性です。彼の孫にあたる在信の行方は今だ不明であり、賀茂氏勘解由小路家はその後、歴史の中で静かに消えていきました。

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