超高分子量ポリエチレン

超高分子量ポリエチレン（UHMWPE）

超高分子量ポリエチレン（ULTRA HIGH MOLECULAR WEIGHT POLYETHYLENE、略称 UHMWPE）は、通常のポリエチレンよりも分子量が格段に高い特殊な樹脂です。分子量は一般的に2万から30万の範囲から、なんと100万から700万にまで引き上げられます。これは、熱可塑性樹脂に分類され、スーパーエンジニアリングプラスチックとしても位置付けられています。商標名としては、ダイニーマ（Dyneema）やスペクトラ（Spectra）が広く知られています。

製法

UHMWPEは、低圧の懸濁重合法を用いて製造されます。この製法では、反応時間を延長することによって、ポリエチレンの分子量を高めることが可能です。これにより、強靭で耐久性の高い特性を持つ樹脂が得られるのです。

特徴

このポリエチレンの最も顕著な特徴は、その耐衝撃性の高さです。ポリカーボネートを上回る性能を持ち、さまざまな温度環境下でもその特性が保持されます。また、耐摩耗性にも優れ、砂を使用した摩擦試験でもフッ素樹脂やポリアセタールよりも優れた結果が出ています。さらに、UHMWPEは耐薬品性も持っているため、食品安全樹脂としても利用が可能です。比重は0.92から0.94と軽量で、吸水率も低いため、優れた寸法安定性を維持します。

成形には特別な方法が必要です。この樹脂は溶融した際の流動性が非常に低いため、射出成形には不向きです。代わりに、粉体を圧縮成形したり、中空成形する手法が用いられます。また、ガラス繊維や炭素繊維で強化した繊維強化プラスチックとしての改質が行われることもあります。

用途と歴史

超高分子量ポリエチレンは、1953年にドイツのマックス・プランク研究所のカール・ツィーグラーによって発見されました。当初は四塩化チタンと有機アルミニウム化合物を触媒として使用し、大分子のポリエチレン重合が実現されました。1980年代には、より高い活性を持つメタロセン系触媒が開発されたことで、UHMWPEの製造が一層進化しました。

この樹脂は、耐摩耗性を生かして機械部品や構造用部品に幅広く利用されています。具体的には、ギアやガスケットなどの小部品から、農機具やブルドーザーのブレードなどの大型機器部品まで多岐にわたります。また、アイススケートリンクに使われる非氷形の潤滑性技術や、低温環境でも使用されるスキー板の滑走面など、特異な物性に着目した利用例も存在します。

生体安全性が求められる用途では、人工骨や義肢の材料としても利用されることがあります。さらに、UHMWPEの粉体は、コンパウンド用材料や耐摩耗性を向上させるためのブレンドに利用されることもあります。

繊維状に成形されると、ピアノ線の約8倍の強度を示す非常に強靭な繊維が得られ、これを用いて船舶や登山向けのロープが製造されます。また、フィルム状に加工することで、離型フィルムや保護フィルムなどの用途にも応用されています。

今日、UHMWPEは戦闘用ヘルメットなどの素材としても研究が進められており、実用化に向けた試みが行われています。

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