超高層のあけぼの

映画『超高層のあけぼの』について

『超高層のあけぼの』は、1969年に公開された日本の劇映画で、当時の日本最高層ビルであった霞が関ビルディングの建設を題材としています。この映画は、鹿島建設の子会社である日本技術映画社（現Kプロビジョン）が制作し、東映が配給を担当しました。

制作の背景

鹿島建設会長の鹿島守之助が、映画『黒部の太陽』の成功に触発され、「自社を題材とした映画を」と考えたことが本作の制作のきっかけです。建設業界の技術力や、高度経済成長期の日本の勢いを広く伝えることを目的として企画されました。東映が制作に協力し、豪華なキャストとスタッフが集結しました。関川秀雄監督にとっては、最後の劇映画作品となりました。

ストーリー

物語は、関東大震災直後から始まります。東京帝国大学の学生であった古川（モデルは鹿島建設副社長の武藤清）は、震災で多くの建物が倒壊する中、上野の寛永寺五重塔が無事であったことに感銘を受け、耐震建築の研究を志します。それから約40年後、古川は東京大学工学部教授となり、耐震建築の世界的権威となります。鹿島建設の会長は、高度成長期で人口が増大する東京の都市問題を解決するには、超高層ビルが必要だと考え、古川に耐震性に優れたビルの設計を依頼します。

古川は鹿島のスタッフと共に、新技術を導入し霞が関ビルの設計に取り組みます。建設現場では多くの作業員が苦労を重ねながら、1968年の完成に向けて工事が進められます。この映画は、建設に携わる人々の情熱と苦労、そして日本の高度成長を支えた技術力を描いています。

キャスト

池部良（江尻所長）
木村功（佐伯構造設計課長）
丹波哲郎（木下工事部長）
平幹二朗（古川教授の兄）
佐久間良子（佐伯の妻）
新珠三千代（江尻の妻）
田村正和（島村オペレーター）
藤井まゆみ（土橋道子）
佐野周二（鹿島建設会長）
中村伸郎（古川教授）
根上淳（三井不動産常務）
丹阿弥谷津子（古川の妻）
三宅邦子（鹿島建設副会長）
北林谷栄（飯場の小母さん）
花柳喜章（水野）
菅井一郎（磯部建設社長）
見明凡太郎（亀田）
内田朝雄（小川）
山本豊三（学生時代の古川教授）
小林昭二（小森）
鈴木瑞穂（松本所長代理）
南廣（宮本第二工務課長）
寺島達夫（佐々木第一工務課長）
二本柳寛（青柳）
伊豆肇（東技研建築部長）
利根はる恵（星野の妻）
関京子（下宿のおばさん）
瀬良明（道子の父）
永井秀明（鮫島）
池田駿介（大原工務課員）
杉義一（鹿島建設会長秘書）
河合絃司（菊地工務部長）
岡野耕作（三田第三工務課長）
相馬剛三（霞が関現場守衛）
片山滉（吉村次長）
佐藤晟也（集金の洋服屋）
植田灯孝（新聞記者）
谷本小夜子（飲屋のおかみさん）
北川恵一（柿本）
田川恒夫（筒井部員）
都健二（第一工務課員）
小林稔侍（霞が関現場作業員）
小塚十紀雄（村田常務）
高須準之助（ロール置揚係員）
菅原壮男（中西部員）
山田甲一（平沼大型掛長）
篠恵輔（大型工場職員）
木川哲也（石井第一工務課員）
伊達弘（霞が関現場作業員）
清島晃一（霞が関現場作業員）
滝見孝二（鳶職人）
秋山敏（坂口東京支社長）
相原昇（町田工事部長）
山之内修（月岡見積部員）
山浦栄（苗田構造設計課員）
仲塚康介（技研電子計算機の係員）
仲原新二（新聞記者）
林田博（鳶職人）
サトウ・サブロウ（煙草屋の男）
伴淳三郎（星野）
松本幸四郎（江戸英雄）

スタッフ

製作：岩佐氏寿
企画：栗山富郎
原作：菊島隆三
脚本：工藤栄一、岩佐氏寿
監督：関川秀雄
撮影：仲沢半次郎
照明：桑名史郎
録音：井上賢三
美術：中村修一郎
編集：長沢嘉樹
音楽：伊福部昭
助監督：高桑信
製作主任：白浜汎城
制作：日本技術映画社（現カジマビジョン）
配給：東映

製作の舞台裏

当初、監督は工藤栄一が務めていましたが、脚本の遅れや製作上の問題から関川秀雄に交代しました。キャスティングも難航し、多くの俳優が『トラ・トラ・トラ！』などの他の作品とスケジュールが重なり、代役を立てるなどの混乱がありました。特に、主演クラスの俳優の降板が相次ぎ、製作スケジュールは大幅に遅れました。

撮影

撮影は東映東京撮影所を中心に行われましたが、一部ロケは霞が関ビルや世界貿易センタービル、長野県白馬八方尾根スキー場などで行われました。特に世界貿易センタービルでのロケは、工事中の危険な状況で行われました。

宣伝と興行

鹿島建設は本作の宣伝に巨額の費用を投じ、過去最高額と言われる宣伝費1億円を投入しました。その結果、150万枚の前売り券を売り上げ、劇場は鹿島建設の関係者で埋め尽くされました。興行的には成功を収め、1969年度の邦画興行ランキングで2位となりました。しかし、一般客の動員は少なく、興行収入のほとんどが前売り券によるものでした。

テレビ放映とリバイバル上映

公開から1年後の1970年には、TBSでテレビ放映されました。これは当時の映画業界では異例の早さであり、その後の映画のテレビ放映にも影響を与えたと言われています。その後、劇場でのリバイバル上映はほとんど行われていませんでしたが、2007年に東京のシネマヴェーラ渋谷で特集上映されました。

作品の評価

『超高層のあけぼの』は、日本の高度成長期における建設技術の進歩と、それに携わった人々の情熱を描いた作品として評価されています。しかし、企業PR映画としての側面も強く、その点が賛否両論を生む要因ともなりました。また、製作過程での混乱や、キャスティングの難航など、多くのエピソードが残されています。

ソフト化

2009年にDVDとしてソフト化されました。

その他

鹿島建設の会長である鹿島守之助が、本作のタイトルにもなった霞が関ビルをモデルにした映画を製作することに非常に熱心であったことや、映画のタイトルが一般公募によって決定されたことなど、様々なエピソードが残されています。

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