越中国分寺

越中国分寺について

越中国分寺は、富山県高岡市伏木一宮に位置する高野山真言宗の寺院で、通称「薬師堂」として知られています。この寺院は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺の一つで、越中国における国分僧寺の後継寺院とされています。ここでは、現在の寺院の様子とともに、史跡として指定されている越中国分寺跡、そして越中国分尼寺の推定地についても詳しく解説します。

概要

越中国分寺は、富山県北西部の二上丘陵北端、伏木台地に位置しています。この地は、かつて国分僧寺が建立された場所であり、境内とその周辺は国分僧寺跡として比定されています。過去には小規模な発掘調査が行われましたが、伏木台地では瓦用の粘土が大量に採取されたため、多くの遺構が失われており、伽藍の詳細は現在も不明な点が多いです。境内は1965年に富山県指定史跡「越中国分寺跡」に指定されました。周辺には、越中国府の推定地とされる勝興寺や、北陸地方最古級の寺院跡である御亭角廃寺跡があります。

歴史

古代

越中国分寺の創建時期は明確ではありませんが、天平13年（741年）の国分寺建立の詔の後に創建されたと考えられています。『万葉集』には、僧侶の玄勝、国師従僧の清見、講師僧の恵行といった、越中国分寺に関わるとされる人物が登場します。これらの僧侶が国守の館での宴に参加したり、重要な役職を担っていたことから、当時、越中国分寺が存在していた可能性が指摘されています。一方で、国分寺という名称が直接見られないことから、これらの僧侶は御亭角廃寺に関わる人物だったとする説や、越中国分寺の創建を天平勝宝8歳（756年）12月とする説もあります。

天平宝字3年（759年）の記録には、「国分金光明寺田」という記載が見られ、また、別の地図には「東大寺与国分寺堺畔」という記述があり、越中国分寺の寺田が礪波郡東部に存在したことがわかります。弘仁11年（820年）の『弘仁式』や延長5年（927年）成立の『延喜式』には、国分寺料として稲3万束があてられていたことが記されています。しかし、その後の変遷については、詳しいことはわかっていません。

近代以降

近代に入ってからは、以下のような動きがありました。

1936年：堀井三友・上田三平による発掘調査
1937年：堀井三友・上田三平による実地調査
その後、越中国分寺跡の場所について、海岸説や海中説を退け、現在の薬師堂付近が有力視されるようになる。
1965年10月1日：薬師堂境内地が「越中国分寺跡」として富山県指定史跡に指定
1966年：薬師堂境内土壇付近の発掘調査（富山県教育委員会・富山考古学会ら）
1986-1990年度：越中国府関連遺跡調査（高岡市教育委員会）
1986年度：国分堂北側の発掘調査（成果なし）
1987年度：国分堂東側の発掘調査（1988年に報告書刊行）
1989年度：国分堂周辺の発掘調査（1990年に報告書刊行）

越中国分寺跡

僧寺跡の寺域は、薬師堂を中心とした一辺約216メートルの範囲と推定されています。この地域には、現在も関連する地名が残っています。薬師堂境内には、版築による土壇や、推定される礎石が残っており、これらは僧寺の堂宇跡（特に金堂跡）であると考えられています。しかし、伏木台地での瓦用粘土の採取により、多くの遺構が失われており、伽藍配置の詳細は不明です。寺域からは、瓦や土器などが多数発見されており、特に瓦の様式は三河国分寺や国分尼寺のものと類似していることが注目されます。

越中国分尼寺跡

尼寺跡の正確な場所はわかっていません。伏木台地で古瓦が出土する場所が候補地として考えられています。かつては、『正倉院文書』に見られる「北法花寺講」という記述が越中国分尼寺と関連があると考えられていましたが、これは奈良の法華寺を指すものであるとされています。

文化財

越中国分寺には、以下の文化財があります。

富山県指定文化財
有形文化財
木造文殊菩薩坐像（南北朝時代頃）
史跡
越中国分寺跡（1965年指定）
高岡市指定文化財
有形文化財
木造毘沙門天立像（鎌倉時代）
木造大日如来坐像（江戸時代）
その他
木造地蔵菩薩立像（鎌倉時代）
帝釈天像（平安時代、弘仁年間）
天部像2躯（平安時代、弘仁年間）

現地情報

所在地: 富山県高岡市伏木一宮1丁目
交通アクセス
鉄道: JR氷見線 越中国分駅（徒歩約14分）、伏木駅（徒歩約16分）
バス: 加越能バス「伏木一の宮」バス停下車（徒歩約3分）
車: 能越自動車道 高岡北ICから約8キロメートル

周辺情報

勝興寺：越中国府の推定地
気多神社：越中国一宮
御亭角廃寺跡

参考文献

史跡説明板（富山県教育委員会・高岡市教育委員会、2013年設置）
『越中国府関連遺跡調査概報IV -平成元年度国分寺周辺地区の試掘調査-（高岡市埋蔵文化財調査概報 第11冊）』高岡市教育委員会、1990年。
「越中国分寺跡」『日本歴史地名大系 16 富山県の地名』平凡社、1994年。

関連文献

『越中国分寺とその周辺の遺跡調査報告書』富山県教育委員会、1967年。
武田旨弘『越中の国分寺と砺波郡の東大寺墾田地』1978年。
「国分寺東側地区」『越中国府関連遺跡調査概報II -昭和62年度勝興寺周辺地区の試掘調査-（高岡市埋蔵文化財調査概報 第4冊）』高岡市教育委員会、1988年。

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