越野忠則

越野忠則：努力とユーモアで世界を掴んだ柔道家

越野忠則（こしの ただのり）は、1966年4月3日生まれ、北海道白糠町出身の柔道家です。講道館柔道六段の腕前を持ち、1991年の世界柔道選手権では金メダル、1992年のバルセロナオリンピックでは銅メダルを獲得しました。現在は国際武道大学の准教授として、次世代の柔道家の育成に力を注いでいます。

内向的な少年が柔道に目覚めるまで

代々漁業を営む家庭の長男として生まれた越野は、幼少期は内向的な性格でした。両親の勧めで小学校3年生の時に柔道を始め、心身を鍛える中で柔道の魅力に引き込まれていきます。白糠中学時代には、北海道内でもその名を知られる存在となりました。中学卒業後、家業を継ぐ予定でしたが、柔道への情熱を諦めきれず、「全道大会で優勝したら高校に進学する」という条件を両親と約束し、見事に優勝を果たします。

恩師との出会いと大学での飛躍

経済的な理由から地元の白糠高校に進学しますが、部員が少ないながらも、恵まれた指導環境の中で実力を磨きます。高校3年次にはインターハイで3位入賞を果たし、大学からのスカウトを受け、東海大学に進学を決意します。東海大学柔道部は当時最強を誇り、佐藤宣践との出会いが越野の才能を開花させました。佐藤の指導のもと、軽量級ながら奥襟を持つ独特の組手を習得し、正力杯連覇、講道館杯準優勝など、数々の実績を挙げ、細川伸二の後継者として期待されるようになります。

大学時代には、山下泰裕から大きな影響を受けました。自身の卒業論文では「背負い投げの研究」に取り組み、現在も指導の参考にしているそうです。越野は、佐藤と山下を恩師として深く尊敬しており、特に佐藤に対しては「俺ほど佐藤先生とウマが合った奴はいない」と語るほどです。

オリンピックでの銅メダル獲得

大学卒業後、東洋水産に入社し、実業団選手として活躍。講道館杯4連覇、全日本選抜体重別選手権3連覇など、国内で圧倒的な強さを見せつけます。1991年の世界柔道選手権ではついに金メダルを獲得し、翌年のバルセロナオリンピックでは銅メダルを獲得しました。準決勝で敗れたものの、3位決定戦では見事な一本勝ちを収め、その晴れやかな表情は多くの人々に感動を与えました。

指導者としての新たな道

オリンピックを最後に現役を引退した越野は、1993年から国際武道大学で教鞭を執っています。恩師である佐藤との「世界チャンピオンになったら教員のポストを用意してやる」という約束が実現したのです。現在は准教授として、柔道部監督を務め、後進の育成に尽力しています。指導者としての目標は、国際武道大学を東海大学に勝てるチームにすることだと語っています。

人柄

越野は、内股、背負投、小内刈、小外刈などを得意技としていました。特に足技を得意とし、山口香の小内刈を参考に強靭な足首を鍛え上げました。北海道弁混じりのユーモアあふれる語り口が特徴で、学生からの信頼も厚いです。オリンピック後の「金じゃなくてゴメンね」という発言は、彼の飾らない人柄を象徴するエピソードとして語り継がれています。

主な戦績

1984年 - インターハイ 3位
1989年 - 世界柔道選手権 2位
1990年 - アジア競技大会 優勝
1991年 - 世界柔道選手権 優勝
* 1992年 - バルセロナオリンピック 3位

越野忠則は、努力とユーモアを兼ね備えた、まさに「愛されるチャンピオン」です。彼の柔道に対する情熱と、後進育成にかける熱意は、これからも多くの人々に感動と勇気を与え続けるでしょう。

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