足三里穴

足三里（あしのさんり）とは

足三里は、足の陽明胃経に属する45番目の経穴（ツボ）であり、古くから「三里」とも呼ばれています。手の陽明大腸経にも同名のツボがあるため、区別するために「足三里」と呼ばれています。また、足三里は、お腹全体の不調を改善する「肚腹の宗穴」としても知られています。

足三里の歴史と効果

4世紀頃に書かれた医学書「傷寒論」には、体を冷やさないことの重要性が説かれています。東洋医学では、腹部の冷えが様々な不定愁訴（原因不明の不調）の原因となると考えられてきました。例えば、夏風邪、下痢、食欲不振、頻尿、倦怠感、頭痛、耳鳴り、肩こり、めまいなどが挙げられます。なかなか治らない五十肩や腰痛も、腹部の冷えが原因となっている場合があります。

このような場合に、よく用いられるツボが足三里です。足三里は、腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸障害、膝痛や足のしびれなどの足の障害、歯痛、歯槽膿漏などにも効果があるとされています。さらに、夏バテ防止や冷房病対策など、現代人特有の悩みにも効果が期待できます。

足三里の場所

足三里は、以下の手順で探します。

1. 脛骨（けいこつ：すねの骨）の前面を下からなぞり、指が止まるところを探します。
2. 腓骨頭（ひこつとう：膝の外側にある骨の出っ張り）の下にある陽陵泉穴（ようりょうせんけつ）を探します。
3. 1で見つけた場所と陽陵泉穴の中間点が、足三里です。膝のお皿の下のくぼみから指4本分下の、すねの外側に位置します。

通常は、椅子に座るか、仰向けに寝て膝を曲げた状態でツボを探します。

足三里の効果・効能

足三里は、様々な症状に効果があるとされています。

慢性的な消化器疾患（胃炎、胃アトニー、胃弱など）
自律神経失調症
中風（脳卒中）による半身不随
小児麻痺

また、足三里は、体全体の機能を高める「保健強壮のツボ」としてもよく用いられます。総腓骨神経麻痺（下垂足）の治療にも応用されています。

足三里の名前の由来

「三里」という名前は、犢鼻穴（とくびけつ：膝のお皿の下にあるくぼみ）から3寸（約9cm）下にあることに由来すると言われています。また、三焦（さんしょう：体を上焦・中焦・下焦の3つに分けたもの）の疾患を治療するツボであることから名付けられたという説もあります。

足三里と文学

足三里は、古くから経穴の代名詞として、文学作品にもよく登場します。松尾芭蕉の「おくのほそ道」には、「ももひきの破れをつづり、傘の緒つけかへて、三里に灸すうるより、松島の月まづ心にかかりて……」という一節があります。このことから、足三里にお灸をすることは、旅の準備として欠かせないことだったと考えられます。「三里に灸のあとがない者とは旅をするな」ということわざもあるほどです。

足三里は、まさに万能のツボであり、日々の健康管理に役立てることができます。ぜひ、ご自身の体でその効果を実感してみてください。

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