足立遠元

足立遠元（あだち とおもと）：武蔵の地を基盤とした鎌倉初期の武将

足立遠元は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した武将で、足立氏の祖として知られています。武蔵国足立郡（現在の東京都足立区から埼玉県北[[足立郡]]にかけて）を本拠地とし、この地で勢力を拡大しました。彼の館跡は、現在の桶川市やさいたま市などに複数存在しています。

出自

足立氏は、武蔵国足立郡を拠点とした在地豪族です。遠元の父である藤原遠兼が武蔵国足立郡に土着し、遠元が「足立」を名乗ったとされています。『尊卑分脈』によると、藤原北家魚名流の藤原山蔭の後裔であり、安達盛長は遠兼の弟にあたるとされています。しかし、兵庫県丹波市の足立九代次氏所蔵の「足立氏系図」では、藤原北家勧修寺流の藤原朝忠の後裔とされています。一方、武蔵国造家の流れを汲み、承平天慶の乱の時代に足立郡司であった武蔵武芝の子孫とする説もありますが、武蔵国造家の系譜である「西角井系図」には、武芝の外孫である菅原氏が氷川神社の祭司・足立郡司を引き継いだことが記されているものの、遠元の名前は見当たらず、その系譜の信憑性には疑問が残ります。このように、遠元以前の系譜は不明確であり、諸説が入り乱れている状況です。

略歴

遠元は、平治の乱では源義朝の陣に従い、右馬允に任官し、源義平率いる17騎の一人として奮戦しました。治承・寿永の乱（源平合戦）においては、源義朝の遺児である源頼朝が挙兵した際に、事前にその命を受けていました。頼朝が下総国から武蔵国に入った際には、豊島清元や葛西清重父子らとともに、武蔵の武士として最初に迎えに参上しました。頼朝が鎌倉入りした直後の10月8日には、武蔵国足立郡を本領として安堵されています。この本領安堵は、頼朝が東国武士に対して行った最初のものでした。

元暦元年（1184年）10月6日、公文所が設置されると、遠元は5人の寄人の一人に選ばれ、幕府の初期運営に携わりました。建久元年（1190年）には、頼朝が上洛した際に、右近衛大将拝賀の布衣侍7人のうちの一人として選ばれ、参院の供奉を務めました。さらに、奥州合戦での功績により、頼朝から御家人10人の成功推挙を与えられた際には、その一人として選ばれ、左衛門尉に任じられました。

頼朝の死後、2代将軍源頼家の時代に成立した十三人の合議制には、安達盛長とともに名を連ねました。元久2年（1205年）の畠山重忠の乱では、重忠とともに遠元の外孫である重秀も戦死していますが、『吾妻鏡』の承元元年（1207年）3月3日条には、娘婿である北条時房をはじめとする有力御家人が参加した闘鶏会に、遠元も参加したことが記されており、この乱で失脚したわけではないことがわかります。この記録を最後に、遠元の名前は史料から姿を消しており、少なくとも70歳を超える高齢に達していたと考えられ、その後間もなく没したと推測されています。

遠元は、幅広い縁戚関係を築いており、娘の一人は院近臣である藤原光能に嫁ぎ、京都の権門との深い繋がりを持っていました。また、別の娘は畠山重忠と北条時房にそれぞれ嫁ぎ、男子をもうけています。武士でありながら公文所の寄人に選ばれるなど、坂東武士の中でも特に文官的な素養を持っていた人物として知られています。

脚注

金澤正大 「鎌倉幕府成立期に於ける武蔵国々衙支配をめぐる公文所寄人足立右馬允遠元の史的意義」『政治経済史学』156・157、1979年5月・6月
金澤正大 「武蔵武士足立遠元」『政治経済史学』554、2013年2月

関連作品

テレビドラマ

草燃える（1979年、NHK大河ドラマ） - 演：金子元
鎌倉殿の13人（2022年、NHK大河ドラマ） - 演：大野泰広

外部リンク

足立氏系譜（武家家伝）
鎌倉時代の武将達
* 足立系図　　　丹波国氷上郡山垣村足立九郎兵衛蔵本明治廿一年六月修史局編修長重野安繹採訪廿三年二月謄寫了　東大史料編纂所データベース

もう一度検索