藤原山蔭
藤原山蔭（ふじわら の やまかげ）は、平安時代前期の公卿として、その名を歴史に刻んでいます。越前守・藤原高房の三男として生まれた彼は、官僚としての道を歩み、その才能を発揮しました。
山蔭の官歴は、仁寿4年（854年）の左馬大允から始まりました。その後、衛門少尉を務め、天安2年（858年）には皇太子・惟仁親王（後の清和天皇）の春宮大進に任ぜられました。同年11月、惟仁親王が即位すると、山蔭は従五位下に叙せられ、天皇の側近として活躍することになります。
清和朝では、蔵人や近衛少将といった要職を歴任する傍ら、備後権介、伊予介、美濃守といった地方官も兼任しました。貞観6年（864年）には従五位上に昇叙しましたが、その後10年近く昇進の機会に恵まれませんでした。しかし、貞観14年（872年）の太政大臣・藤原良房の死去を機に、山蔭は急速に昇進し、貞観15年（873年）には正五位下、貞観17年（875年）には従四位下・蔵人頭兼右近衛権中将に叙任されました。
貞観18年（876年）に陽成天皇が即位すると、山蔭は清和上皇に仕えるため、近衛中将の辞任を申し出ました。翌貞観19年（877年）には一旦辞任が許されましたが、すぐに右大弁に任ぜられたため、再度辞任を上奏しました。しかし、陽成天皇の慰留を受け、太上天皇宮別当を兼帯しながら右大弁を務めることになりました。元慶3年（879年）には従四位上に叙せられ、同年10月には参議に任じられ、公卿の仲間入りを果たしました。元慶4年（880年）に清和上皇が崩御した後も、山蔭は出仕を続け、元慶5年（881年）には左大弁、元慶6年（882年）には正四位下に叙任されました。
光孝朝の仁和2年（886年）には従三位・中納言に至り、そのキャリアの頂点を迎えました。しかし、仁和4年（888年）2月4日、65歳で薨去しました。最終官位は中納言従三位兼行民部卿でした。
山蔭は、四条流庖丁式の創始者として長く認識されてきましたが、実際には山蔭自身が庖丁式を執り行ったという記録は見つかっていません。庖丁式に関する最も古い記録は、白河天皇の時代に藤原家成が鯉庖丁を披露したというものです。このように、山蔭と庖丁式との関係は、後世の誤解に基づいていると考えられます。
一方で、山蔭は吉田神社、総持寺、新長谷寺（真如堂内）の建立・創建に関わったとされています。吉田神社には、山蔭を祀る山蔭神社があり、庖丁の神、料理・飲食の祖神として信仰されています。
『今昔物語集』には、山蔭が助けた亀のおかげで、幼い息子（僧の如無）が救われたという説話が収録されています。この説話は、山蔭の善行がもたらした奇跡として伝えられています。
以下に、山蔭の官歴をまとめます。
仁寿4年（854年） 正月：左馬大允
斉衡3年（856年） 正月：右衛門少尉。3月：左衛門少尉
時期不詳：正六位上
天安2年（858年） 3月：春宮大進（皇太子・惟仁親王）。9月14日：右近衛将監。10月：蔵人。11月7日：従五位下（惟仁親王即位）
貞観元年（859年） 3月22日：備後権介
貞観2年（860年） 8月26日：右近衛権少将、備後権介如故
貞観3年（861年） 正月13日：兼伊予介
貞観4年（862年） 11月：蔵人
貞観5年（863年） 2月10日：右近衛少将。3月28日：次侍従
貞観6年（864年） 正月7日：従五位上
貞観7年（865年） 10月9日：禁色
貞観9年（867年） 2月29日：兼美濃守
貞観15年（873年） 正月7日：正五位下
貞観16年（874年） 正月15日：兼備前守
貞観17年（875年） 正月21日：従四位下。3月：蔵人頭。8月25日：右近衛権中将
貞観19年（877年） 正月5日：辞右近衛権中将。2月29日：右大弁。閏2月15日：見太上天皇宮別当
元慶3年（879年） 正月7日：従四位上。10月23日：参議
元慶5年（881年） 2月：左大弁。7月16日：兼播磨権守
元慶6年（882年） 正月7日：正四位下。日付不詳：播磨守
元慶9年（885年） 正月：去播磨守
仁和2年（886年） 6月13日：従三位、中納言
仁和3年（889年） 5月11日：兼民部卿
仁和4年（888年） 2月4日：薨去（中納言従三位兼行民部卿）
山蔭の系譜は以下の通りです。
父：藤原高房
母：藤原真夏の娘
妻：筑前介有孝の娘（姓不明）
男子：藤原有頼
男子：藤原公利
男子：藤原遂長
男子：藤原言行
男子：藤原兼三
男子：藤原中正 - 後裔に伊達氏?
生母不詳の子女
三男：如無（867-938）
女子：藤原元善子 - 光孝天皇女御
女子：藤原定方室
女子：雅望王室
女子：藤原家宗室
武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 上下巻』戎光祥出版、2009年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年
鉢かづき
山蔭神社
総持寺縁起絵巻
経歴
山蔭の官歴は、仁寿4年（854年）の左馬大允から始まりました。その後、衛門少尉を務め、天安2年（858年）には皇太子・惟仁親王（後の清和天皇）の春宮大進に任ぜられました。同年11月、惟仁親王が即位すると、山蔭は従五位下に叙せられ、天皇の側近として活躍することになります。
清和朝では、蔵人や近衛少将といった要職を歴任する傍ら、備後権介、伊予介、美濃守といった地方官も兼任しました。貞観6年（864年）には従五位上に昇叙しましたが、その後10年近く昇進の機会に恵まれませんでした。しかし、貞観14年（872年）の太政大臣・藤原良房の死去を機に、山蔭は急速に昇進し、貞観15年（873年）には正五位下、貞観17年（875年）には従四位下・蔵人頭兼右近衛権中将に叙任されました。
貞観18年（876年）に陽成天皇が即位すると、山蔭は清和上皇に仕えるため、近衛中将の辞任を申し出ました。翌貞観19年（877年）には一旦辞任が許されましたが、すぐに右大弁に任ぜられたため、再度辞任を上奏しました。しかし、陽成天皇の慰留を受け、太上天皇宮別当を兼帯しながら右大弁を務めることになりました。元慶3年（879年）には従四位上に叙せられ、同年10月には参議に任じられ、公卿の仲間入りを果たしました。元慶4年（880年）に清和上皇が崩御した後も、山蔭は出仕を続け、元慶5年（881年）には左大弁、元慶6年（882年）には正四位下に叙任されました。
光孝朝の仁和2年（886年）には従三位・中納言に至り、そのキャリアの頂点を迎えました。しかし、仁和4年（888年）2月4日、65歳で薨去しました。最終官位は中納言従三位兼行民部卿でした。
人物
山蔭は、四条流庖丁式の創始者として長く認識されてきましたが、実際には山蔭自身が庖丁式を執り行ったという記録は見つかっていません。庖丁式に関する最も古い記録は、白河天皇の時代に藤原家成が鯉庖丁を披露したというものです。このように、山蔭と庖丁式との関係は、後世の誤解に基づいていると考えられます。
一方で、山蔭は吉田神社、総持寺、新長谷寺（真如堂内）の建立・創建に関わったとされています。吉田神社には、山蔭を祀る山蔭神社があり、庖丁の神、料理・飲食の祖神として信仰されています。
説話
『今昔物語集』には、山蔭が助けた亀のおかげで、幼い息子（僧の如無）が救われたという説話が収録されています。この説話は、山蔭の善行がもたらした奇跡として伝えられています。
官歴
以下に、山蔭の官歴をまとめます。
仁寿4年（854年） 正月：左馬大允
斉衡3年（856年） 正月：右衛門少尉。3月：左衛門少尉
時期不詳：正六位上
天安2年（858年） 3月：春宮大進（皇太子・惟仁親王）。9月14日：右近衛将監。10月：蔵人。11月7日：従五位下（惟仁親王即位）
貞観元年（859年） 3月22日：備後権介
貞観2年（860年） 8月26日：右近衛権少将、備後権介如故
貞観3年（861年） 正月13日：兼伊予介
貞観4年（862年） 11月：蔵人
貞観5年（863年） 2月10日：右近衛少将。3月28日：次侍従
貞観6年（864年） 正月7日：従五位上
貞観7年（865年） 10月9日：禁色
貞観9年（867年） 2月29日：兼美濃守
貞観15年（873年） 正月7日：正五位下
貞観16年（874年） 正月15日：兼備前守
貞観17年（875年） 正月21日：従四位下。3月：蔵人頭。8月25日：右近衛権中将
貞観19年（877年） 正月5日：辞右近衛権中将。2月29日：右大弁。閏2月15日：見太上天皇宮別当
元慶3年（879年） 正月7日：従四位上。10月23日：参議
元慶5年（881年） 2月：左大弁。7月16日：兼播磨権守
元慶6年（882年） 正月7日：正四位下。日付不詳：播磨守
元慶9年（885年） 正月：去播磨守
仁和2年（886年） 6月13日：従三位、中納言
仁和3年（889年） 5月11日：兼民部卿
仁和4年（888年） 2月4日：薨去（中納言従三位兼行民部卿）
系譜
山蔭の系譜は以下の通りです。
父：藤原高房
母：藤原真夏の娘
妻：筑前介有孝の娘（姓不明）
男子：藤原有頼
男子：藤原公利
男子：藤原遂長
男子：藤原言行
男子：藤原兼三
男子：藤原中正 - 後裔に伊達氏?
生母不詳の子女
三男：如無（867-938）
女子：藤原元善子 - 光孝天皇女御
女子：藤原定方室
女子：雅望王室
女子：藤原家宗室
参考文献
武田祐吉、佐藤謙三訳『読み下し 日本三代実録 上下巻』戎光祥出版、2009年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年
関連項目
鉢かづき
外部リンク
山蔭神社
総持寺縁起絵巻
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