軍事刑務所

軍事刑務所とは

軍事刑務所（Military prison）または軍事監獄とは、戦争犯罪や軍規に違反した軍人や戦闘員を専門に収容する施設を指します。これには、具体的な裁判を経た上で服役する者を対象にした刑務所や、軍隊内での懲罰としての拘束施設である営倉が含まれることもあります。また、より広い定義では、軍によって管理される強制収容施設も含む場合があります。

概要

軍事刑務所には二つの主な種類があります。
1. 自軍の軍人が軍事規律を犯した場合に収容する施設。
2. 戦時に捕虜や「敵性戦闘員」として扱われる者を収監する施設。後者は特に捕虜収容所（Prisoner of War camp）と称されます。

前者のケースでは、暴力行為や脱走、武器の不正使用などの軍規違反を憲兵が発見し、軍法会議による裁判を経て収監されることが一般的です。また、基地内での簡易的な懲罰目的で利用される営倉もこの範疇に入ります。

後者においては、戦争が終了するまで収監が続く場合や、軍法会議に基づいて収監期間が定められることがあります。軍事刑務所は古くから存在し、その形態は様々に変遷してきました。古代から中世にかけては、軍隊と刑務所が密接に関連しており、軍事力が囚人の管理や刑の執行において重要な役割を果たしていました。

各国の軍事刑務所

アメリカ

アメリカ軍においては、統一軍事裁判法に基づき処遇が決定されます。脱走兵の捜査は、陸軍の犯罪捜査司令部や海軍の情報部警察によって行われ、軍法会議を経て収監されます。アメリカ陸軍の犯罪者は、カンザス州にある教化隊や複数の基地の収容所に収監されます。また、空軍や海軍にもそれぞれ独自の収容施設があります。

カナダ

カナダ軍では、14日以上の拘留が必要な事案の場合、エドモントン基地に収容され、その後2年以上の収監が決定されると民間の刑務所に移されます。

イギリス

イギリス軍では、28日以上収監される場合、コルチェスター・ギャリソンにある修正訓練センターに収監され、イギリス刑務局の管理下に置かれます。

日本

日本の軍事刑務所は、戊辰戦争後に旧幕府軍の捕虜を隔離したことが始まりです。近代の日本軍においては、1888年に衛戍条例が施行され、衛戍監獄が設立されました。最初の監獄は東京に設けられ、その後、陸軍や海軍の監獄が発展しました。日本の敗戦後、軍事刑務所は廃止され、収監者は一般刑務所に移送されました。

シリア

シリアの首都ダマスカスにはサイドナヤ刑務所があり、多くの反政府主義者が収監されています。人権団体は、この刑務所で多くの人々が虐待に遭い、多くの死亡者が出ていることを指摘しています。

軍事刑務所の問題点

軍事刑務所の運用には、虐待などの問題が発生することが多く見られます。特に捕虜収容所では、戦時国際法に厳格に従わない場合が多々あり、法の遵守が疎かにされることがあります。グァンタナモ基地やアブグレイブ刑務所で発生した虐待事件はその代表的な例です。

作品における軍事刑務所

映画や文学において、軍事刑務所は特に第一次世界大戦から第二次世界大戦をテーマにした作品でよく描かれています。例えば、『戦場のメリークリスマス』や『大脱走』などがその例です。

参考文献

重松一義の『図説 世界の監獄史』をはじめとする文献が、資料として有用です。軍事刑務所は、軍事法廷や戦争犯罪、一般の刑事制度との関わりにおいて重要なテーマとなっています。

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