辰巳栄一

辰巳栄一：激動の時代を生きた陸軍軍人

辰巳栄一は、1895年（明治28年）1月19日に佐賀県で生まれ、1988年（昭和63年）2月17日に生涯を終えた日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍中将。激動の時代を生き、戦前・戦中・戦後と日本の歴史に深く関わりました。

軍人としてのキャリア

辰巳は、佐賀中学校を経て、1915年5月に陸軍士官学校（27期）を卒業。同年12月に歩兵少尉に任官し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。その後、陸軍歩兵学校付などを経て、1925年11月には陸軍大学校（37期）を優等で卒業。エリート軍人としての地位を確立します。

1928年には山東出兵に出動し、その後イギリス駐在を経て、1930年代には関東軍参謀、満州国大使館付武官補佐官などを歴任。1940年には陸軍少将に昇進します。太平洋戦争開戦に伴い、1942年にイギリスから帰国。東部軍参謀長、第12方面軍参謀長などを務め、1943年には陸軍中将に進みました。1945年、第3師団長として中国へ出征し、鎮江で終戦を迎えます。

戦後の活動

終戦後、辰巳は1946年に復員し、1947年には公職追放仮指定を受けました。しかし、その間にも彼は、吉田茂とGHQの橋渡し役として、戦後の日本の再建に大きく貢献します。特に、吉田にウィロビーを引き合わせたことは、その後の日本の歴史に大きな影響を与えました。ウィロビーの発案によって河辺機関が組織され、戦後の情報収集活動の基礎が築かれます。

また、警察予備隊の幹部人選にも、吉田茂の腹心として関与しました。旧陸軍の将官クラスをまとめ、警察予備隊の基礎を作った人物としても知られています。

CIA協力者としての顔

一方で辰巳は、「POLESTAR-5」というコードネームを持つCIA協力者でもありました。内閣調査室（現在の内閣情報調査室）や自衛隊の設置に関わる資料をアメリカ政府に流していたことが、2009年に機密解除されたアメリカ国立公文書記録管理局の資料によって明らかになりました。この事実は、戦後の日本の政治に、アメリカが深く関与していたことを示す一例として、歴史研究者の間で大きな注目を集めています。

その他の活動と晩年

1975年から1978年まで偕行社会長を務め、1988年に93歳で亡くなりました。

辰巳栄一は、軍人としてのキャリアだけでなく、戦後の日本の再建、そしてアメリカとの複雑な関係を象徴する人物として、その生涯は歴史の中で深く記憶されるべきでしょう。

栄典

1945年（昭和20年）1月25日 - 勲二等瑞宝章

親族

弟：辰巳繁（海軍主計大佐）

参考文献

外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年、新版1993年。
福川秀樹編著『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
有馬哲夫『大本営参謀は戦後何と戦ったのか』 新潮新書、2010年。

評伝

* 湯浅博『歴史に消えた参謀　吉田茂の軍事顧問　辰巳栄一』 産経新聞出版、2011年/文春文庫、2013年

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