通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律

通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律について

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」（以下、通貨法）は、日本における通貨の額面価格の単位、貨幣（硬貨）の製造と発行、種類などを定める法律です。この法律は、昭和62年（1987年）に制定され、日本の通貨制度の根幹をなしています。

所管官庁

この法律は、財務省理財局国庫課通貨企画調整室が所管しています。

制定の背景

通貨法の制定以前は、貨幣法と臨時通貨法が日本の硬貨発行の根拠法でした。特に貨幣法は金本位制を基本としていましたが、昭和初期の金輸出再禁止と兌換停止により、金本位制は事実上形骸化しました。戦時体制下では臨時通貨法が制定され、以降の硬貨は全て臨時補助貨幣となりました。

第二次世界大戦後のハイパーインフレーションを経て、貨幣法は実質的に無意味化しました。その後、小額通貨整理法により銭や厘といった補助貨幣が廃止されましたが、臨時通貨法には依然として少額貨幣の規定が残存。このような状況が約半世紀も続きました。また、天皇陛下御在位六十年記念硬貨の発行を機に、臨時補助貨幣の制度の不備が指摘され、従来の通貨関連法令を整理する動きが高まりました。

この流れを受け、記念貨幣の発行を弾力化し、造幣局が実費で販売することを可能にする必要性が認識され、昭和62年に新たな通貨に関する法律が制定されるに至りました。

法律の概要

通貨法は昭和62年6月1日に公布され、昭和63年4月1日に施行されました。この法律によって、以下の法律が廃止されました。

通用を禁止した貨幣紙幣の引換えに関する件
貨幣法
臨時通貨法
小額通貨の整理及び支払金の端数計算に関する法律
オリンピック東京大会記念のための千円の臨時補助貨幣の発行に関する法律
天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する法律

この法律では、通貨の額面単位を円とし、1円の整数倍と定められました。また、貨幣の種類は五百円、百円、五十円、十円、五円、一円の6種類と規定。さらに、千円以上の記念貨幣の発行が閣議決定で可能となりました。

1円未満の単位は、銭と厘（1円の1/100と1/1000）と定義されましたが、小額通貨整理法により、既にこれらの硬貨は廃止されています。現在、銭や厘は計算単位としてのみ使用されます。債務の弁済における端数処理は、小額通貨整理法の規定と同様のものが設けられています。

戦前に発行された金貨は、この法律によって正式に廃止。旧金貨幣の引換え期間が設定されましたが、その金額は古銭としての価値を大幅に下回るものでした。ただし、紙幣に関しては、戦前発行の一部一円紙幣は依然として有効です。

1988年3月31日までに発行された硬貨や天皇陛下御在位六十年記念硬貨以前の記念貨幣は、「貨幣とみなす臨時補助貨幣」として、引き続き通用力が認められました。これにより、臨時補助貨幣という名目はなくなり、1円から500円の硬貨は「貨幣」と呼ばれることになりました。ただし、法貨としての通用限度は20枚とされ、臨時通貨法の規定が事実上維持されています。

法律の構成

通貨法は、以下の構成となっています。

本文

第1条（趣旨）
第2条（通貨の額面価格の単位等）
第3条（債務の支払金の端数計算）
第4条（貨幣の製造及び発行）
第5条（貨幣の種類）
第6条（貨幣の素材等）
第7条（法貨としての通用限度）
第8条（磨損貨幣等の引換え）
第9条（貨幣の無効）
第10条（造幣局による貨幣の販売）

附則

第1条（施行期日）
第2条（通用を禁止した貨幣紙幣の引換えに関する件等の廃止）
第3条 - 第7条（旧金貨幣の引換え）
第8条（貨幣とみなす臨時補助貨幣）
第9条（小額紙幣の引換準備に関する経過措置）
第10条（小額通貨の引換え等に関する経過措置）
第11条（簡易生命保険契約の保険料の払込方法等に関する経過措置）
第12条（日本銀行法の一部改正）
第13条（造幣局特別会計法の一部改正）
第14条（補助貨幣損傷等取締法の一部改正）
第15条（大蔵省設置法の一部改正）
第16条（罰則の適用に関する経過措置）

関連情報

貨幣の詳細については「日本の硬貨」、記念貨幣については「日本の記念貨幣」を参照してください。

まとめ

通貨法は、日本の通貨制度を根底から支える重要な法律です。この法律によって、旧来の貨幣制度が整理され、現代の通貨制度の基礎が築かれました。貨幣の単位、発行、種類、法的な取り扱いまで、幅広く規定されており、日本経済を理解する上で欠かせない法律と言えるでしょう。

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