運輸省 (フィリピン)

フィリピン運輸省（DOTr）の概要

フィリピン運輸省（Department of Transportation, DOTr）は、フィリピン政府の行政機関であり、国家の復興と経済発展に不可欠な、効率的で信頼できる交通システムの維持と拡大を担っています。陸上、航空、海上の各交通インフラの整備・運営を管轄しています。かつては運輸通信省（DOTC）として知られていましたが、情報通信技術省の設立に伴い、通信部門が分離され、現在の運輸省となりました。

歴史

初期

1899年から1979年まで、フィリピンにおける全ての交通関連業務は、公共事業・運輸通信省（MPWTC）に統合されていました。1979年7月28日、大統領令第546号により、MPWTCは運輸通信省（MOTC）と公共事業道路省（MPWH）に分割され、MOTCが正式に設立されました。MOTCは、信頼性の高い交通通信網の促進、開発、規制を担当する政府機関として、政策決定、計画策定、調整、実施などの管理を行いました。

この時期には、以下の主要なインフラプロジェクトが実施されました。

マニラ・ライトレール・トランジット・システム
コンピュータ制御交通信号システム
マニラ国際空港のニノイ・アキノ国際空港への改名
ケソン市、カローカン、マカティ、サンフアンの中央郵便局の整備

また、自動車登録と管理が改善され、永久車両ライセンスプレートと系統的な登録システムが導入されました。バス貸与計画により、マニラ首都圏には新たに1000台のバスが供給されました。フィリピン国鉄とメトロ・マニラ交通社も拡張・改善され、ビコル地方へのサービスを提供するフィリピン国鉄南方本線の再生も進められました。

1986年以降

1986年のエドゥサ革命後、コラソン・アキノ大統領により、エルナンド・B・ペレス下院議員が運輸通信大臣に任命されました。1987年3月には、テクノクラートのライネリオ・O・レイエスがMOTC長官に就任しました。その後、MOTCは大統領令第125号と125A号により再編され、省（Department）に格上げされました。レイエス長官の下で、省内の準司法機能は、大統領令第202号により設立された陸上交通許認可規制委員会に移管されました。

フィデル・ラモス政権下では、ヘスス・B・ガルシアが長官に任命されました。ガルシア長官の時代には、固定電話や携帯電話事業への新規参入が許可され、老朽化したタクシーが廃止され、新型や後期型のものが導入されました。

現在

2016年5月20日、ベニグノ・アキノ3世政権下で、共和国法第10844号「情報通信技術省設立法」が成立しました。これにより、情報通信技術局が科学技術省（DOST）から分離され、運輸通信省の通信部門と統合されて情報通信技術省が設立され、運輸通信省は単に運輸省となりました。2017年7月には、長年本部を置いていたマンダルヨンのコロンビアタワーから、パンパンガ州マバラカットのクラーク地区に本部を移転しました。

現在、DOTrはロドリゴ・ドゥテルテ大統領の掲げる「インフラ黄金時代」構想のもと、ドゥテルテノミクスの一環として、2018年から2022年の間に3.6兆PHPを投じる公共インフラ計画を推進しており、多くのプロジェクトが展開されています。

進行中の主要計画

鉄道

マニラ首都圏地下鉄（9号線）: メトロマニラ初の地下鉄として建設が進められており、2025年の完成を目指しています。当初はメガマニラ地下鉄と呼ばれていました。
MRT2号線東部延伸: MRT2号線を東へ4km延長し、マリキナのサントラン駅からアンティポロのマシナグ駅まで接続する計画です。これにより、マルコスハイウェイ沿いの交通渋滞緩和と、1日あたり8万人の旅客輸送能力の向上が期待されています。完成すれば、レクト駅からマシナグ駅までの所要時間が3時間から40分に短縮されます。2019年に完成予定です。
国鉄南北通勤鉄道: タルラック州カパスのニュー・クラーク・シティからラグナ州カランバを結ぶ通勤鉄道の建設が進んでいます。北方線はマニラのトゥトゥバン駅からニュー・クラーク・シティまで106kmであり、2021年の完成を見込んでいます。南方線も電化され、標準軌の複線に再建される予定です。建設は2019年2月に始まりました。

空港

パングラオ国際空港が新たに開設されたほか、ビコル国際空港の開設、クラーク国際空港、タンブラー空港、マクタン・セブ国際空港、プエルト・プリンセサ国際空港などの拡張計画が進められています。

組織構造

運輸省は、運輸大臣を長とし、7人の次官と13人の次官補で構成されています。

次官

管理・財務担当次官
道路・インフラ担当次官
航空・空港担当次官
鉄道担当次官
法務・調達担当次官
計画・プロジェクト開発担当次官
海事担当次官

次官補

法務次官補
管理・財務次官補
航空情報・執行次官補
調達次官補
通信次官補
海事次官補
道路輸送・インフラ次官補
鉄道次官補
計画担当次官補
プロジェクト実施次官補

付属機関

陸上・道路:
陸運局 (LTO)
陸上交通許認可規制委員会 (LTFRB)
通行料規制委員会 (TRB)
鉄道:
ライト・レール・トランジット・オーソリティ (LRTA)
フィリピン国鉄 (PNR)
メトロ・レール・トランジット(MRTC)
フィリピン鉄道研究所 (PRI)
航空:
フィリピン民間航空庁 (CAAP)
民間航空委員会 (CAB)
フィリピン航空宇宙開発公社 (PADC)
フランシスコ・バンゴイ国際空港 (DIAA)
マニラ国際空港公団 (MIAA-NAIA)
クラーク国際空港
マクタン・セブ国際空港公社 (MCIAA)
海上:
海事産業庁 (MARINA)
フィリピン沿岸警備隊 (PCG)
フィリピン国立商船大学 (PMMA)
フィリピン港湾庁 (PPA)
セブ港湾庁 (CPA)
その他:
運輸保安局 (OTS)
陸運組合局 (OTC)

歴代大臣

（詳細なリストは割愛）

外部リンク

* Department of Transportation official website

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