達古武湖

達古武湖：静かな水面に映る歴史と自然

北海道釧路町に位置する達古武湖（たっこぶこ）は、別名達古武沼とも呼ばれる、釧路湿原国立公園に含まれる美しい淡水湖です。その名の由来は、アイヌ語の「タㇷ゚コㇷ゚（tapkop）」、つまり「ぽこんと盛り上がっている小山」からきており、湖の北側に広がる丘陵の形状を表していると言われています。

穏やかな水面と豊かな生態系

達古武湖は、達古武川をはじめとする幾つかの河川から水を供給され、北西には釧路川へと流出しています。この湖は、かつて海であった場所が後退してできた海跡湖であり、現在では多様な生物が生息する豊かな生態系を育んでいます。

1970年代に行われた魚類調査では、スナヤツメ、イトウ、アメマス、エゾイワナなど、多様な魚種が確認されました。現在もワカサギ釣りは冬の風物詩として親しまれています。また、鳥類ではオジロワシやタンチョウなど、貴重な鳥たちの姿を見ることができます。一方、外来種であるウチダザリガニの侵入も確認されており、生態系のバランス維持に向けた課題も抱えています。

さらに、絶滅危惧種の藻類であるマリモも生息しており、その希少性から、この湖の自然環境の豊かさを物語っています。達古武湖周辺地域は、釧路湿原再生事業の対象地域にも指定されており、貴重な自然を守るための取り組みが続けられています。

歴史の足跡：霞ヶ関牧場

達古武湖の歴史は、自然だけでなく、人間活動とも深く関わっています。昭和21年（1946年）、元内閣総理大臣の米内光政氏を中心としたグループによって「北海道牧場株式会社」、通称霞ヶ関牧場が設立されました。しかし、昭和27年（1952年）には経営破綻という歴史を刻みます。

この牧場は、明治末期に安田善次郎氏の勧めで杉田巻太郎氏（大垣共立銀行監査役）が取得した土地に設立されました。杉田氏はそこに別荘を構えていました。太平洋戦争後、米内光政氏の参入は、杉田氏の子息である杉田主馬氏（米内氏の海軍大臣時代の副官）、小島秀雄氏（元海軍少将）、麻生孝雄氏（米内大臣副官）らの勧誘によるものでした。米内氏の死去後、農地は竹中工務店が所有し、その後地元の農家へと売却されました。現在、その跡地はオートキャンプ場として整備され、多くの人々が自然を満喫できる空間となっています。

アクセスと観光

達古武湖へは、JR北海道釧網本線細岡駅からアクセスできます。湖の北東岸にはオートキャンプ場が整備されており、カヌーなどのアクティビティを楽しむことができます。静かな湖面と豊かな自然、そして歴史の重みを肌で感じられる、魅力的な観光地です。

参考文献

* 『ザひがしホッカイドウ・no7』（1993年　東北海道社発行）142ｐ

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