遷御

遷御（せんぎょ）

遷御とは、神霊や神社を別の場所へ移動させることを指します。特に伊勢神宮において、新社殿に神体が移される儀式がこの名称で呼ばれます。また、天皇が住まいを移す行為も遷御と呼ばれることがあります。そのため、遷御には二重の意味が存在します。

遷御の儀

遷御は「遷御の儀」として行われ、伊勢神宮における式年遷宮の一部分を成しています。この儀式では、旧殿から新殿へ神体を移す重要な神事が行われ、式年遷宮のクライマックスとも位置づけられています。通常、伊勢神宮の遷御は皇大神宮（内宮）が最初に行われることが通例ですが、式年遷宮では内宮が優先される特別な慣習があります。

遷御の日程

歴史的には、遷御は毎年変わることなく、古代から延暦23年（804年）に記載された資料に基づいて、旧暦の9月17日に執り行われていました。この日付は神嘗祭と関連づけられており、遷御が行われる年には神嘗祭は開催されていなかったのです。近代以降は、天皇が遷御の日取りを決定することが定められ、「御治定」という形で実施されます。一般的には、内宮の遷御が10月2日、外宮の遷御が10月5日に行われることが慣例となっています。

前祭

遷御の前祭には三つの儀式があります。最初は「御装束神宝読合」で、ここでは神宝や装束を確認し、形式的に受け渡しを行います。次に行われるのが「川原大祓」で、神宝や装束を清める儀式です。この儀式は遷御の前日に行われ、特定の場所で神職たちが清めを行います。最後に「御飾」が行われ、遷御当日の正午に新殿内の準備が整えられます。

本祭

遷御を実施する際は、宮内庁から勅使が派遣され、通常の祭祀とは異なり特別な衣装を身にまとった奉仕者たちが参加します。儀式の数時間前から準備が始まり、遷御が行われる午後8時に新しい社殿へ神体を移す行列がスタートします。この際には神楽が演奏され、特別な唱え声に合わせて神体が進みます。

後祭

遷御が終わった後、いくつかの儀式が行われます。「大御饌」では奉仕者が神前に初めて食物を捧げ、次に「奉幣」として勅使が幣帛を奉納します。その後、旧正殿に残った神宝が新しい殿へ移される「古物渡」が行われ、遷御の翌日には神楽の初演が行われます。

別宮の遷御

内宮、外宮の遷御の後、神宮にある14の別宮も同様に遷御されます。遷御の実施は定められた日程に基づき、内宮の荒祭宮や外宮の多賀宮など、順次執行されます。これにより、神道の信仰が継承され、神棚や関連する社の修繕や新設時には通常の遷御儀式が行われることもあります。

メディアの報道

近年の遷御に関しては、多くのメディアが報道に取り上げ、特に大きなイベントとして位置づけられています。特別番組の放送も行われ、全国的にその重要性が認識されています。特に第62回式年遷宮では、多くの周知を得て、一般の人々がその姿を直に見守る機会にもなりました。

このように遷御は単なる神事ではなく、日本の文化や信仰の象徴として、深い意味合いを持つ重要な儀式なのです。

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