郷照寺

郷照寺：歴史と信仰が織りなす時宗と真言宗の融合

香川県宇多津町に佇む郷照寺は、時宗と真言宗という異なる宗派が共存する珍しい寺院です。四国八十八箇所霊場の第七十八番札所として、古くから多くの巡礼者や参拝者を迎えてきました。正式名称は仏光山広徳院郷照寺。本尊は阿弥陀如来で、その慈悲深い姿は多くの人の心を癒やし、安らぎを与えてくれます。

歴史の重み：行基から現代へ続く信仰

寺伝によれば、725年、行基によって開基されました。当初は「道場寺」と呼ばれ、一尺八寸の阿弥陀如来像が本尊として祀られました。その後、807年には空海（弘法大師）が伽藍を整備し、厄除の祈願を修したと伝えられています。この際に納められた大師像は「厄除うたづ大師」として、現在も厚い信仰を集めています。


平安時代には、理源大師による阿弥陀三昧の行や、恵信僧都による釈迦堂の建立など、数々の歴史的な出来事が郷照寺を彩ってきました。鎌倉時代には一遍上人が滞在し、踊り念仏の道場を開いたことも、郷照寺の信仰を深める大きな出来事となりました。


天正年間の兵火により堂宇を焼失するも、寛文4年（1664年）、高松藩主松平頼重によって再興されました。この再興と、時の住持と徳川家との関係により、郷照寺は時宗に属することとなり、現在の名称に改称されました。しかし、古い文献には「道場寺」の名が見られるなど、歴史の深さと複雑さを物語っています。

見どころ：多様な仏像と静寂の庭園

郷照寺には、歴史と信仰の証である数多くの見どころがあります。


本堂: 一遍上人像が安置され、その慈悲深い表情に心が安らぎます。
大師堂: 厄除け祈願の場として多くの信徒が訪れ、静かな祈りの空間が広がっています。
万体観音堂: 大師堂の奥にある洞窟には、無数の観音像が安置され、荘厳な雰囲気を醸し出しています。
庚申堂: 青面金剛を本尊として祀る庚申堂は、独特の雰囲気を漂わせています。
ぽっくり地蔵: 讃岐三大ぽっくり地蔵の一つとして知られ、そのユニークな姿は多くの人々の目を惹きつけます。
庭園: 本坊の裏手に広がる庭園は、池を配した静寂の空間で、訪れた人の心を癒やします。
鐘楼: 高台にある境内から望む瀬戸大橋方面の景色は絶景です。
不動明王堂（御祓所）: 2024年建立された新しいお堂です。


これらの建物や仏像は、郷照寺の長い歴史と、人々の信仰の深さを物語る貴重な文化財です。

文化財：歴史を刻む貴重な遺物

郷照寺には、県指定有形文化財に指定されている貴重な文化財がいくつかあります。


木造阿弥陀如来坐像: 檜材寄木造りの阿弥陀如来像は、鎌倉時代後期の作と推定され、その精緻な造形は圧巻です。
絹本著色釈迦三尊二声聞図: 鎌倉時代後期の作で、宋様式を取り入れた優美な絵画です。


これらの文化財は、郷照寺の豊かな歴史と文化を伝える貴重な遺産であり、後世に伝えるべきものです。

アクセスと周辺情報

郷照寺へのアクセスは、JR四国予讃線宇多津駅から徒歩約1.5km、または高松自動車道・瀬戸中央自動車道坂出ICから車で約2.5kmです。周辺には、日本一大きい閻魔大王像を安置した浄泉寺の閻魔堂など、見どころも豊富です。


郷照寺は、歴史、信仰、そして自然が融合した、魅力あふれる寺院です。四国遍路の旅の際には、ぜひ訪れてみてください。

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