鄭克ソウ

鄭克塽（てい こくそう）とは

鄭克塽（1670年8月13日 - 1707年9月22日）は、17世紀後半に台湾を支配した鄭氏政権の最後の主です。鄭成功の孫であり、鄭経の次男として生まれました。幼名は秦、字は実弘、号は晦堂と称しました。

若くして王位を継承

1680年に重臣の陳永華が死去、翌1681年には父である鄭経も亡くなると、鄭氏政権内では権力闘争が勃発しました。重臣の馮錫範は、鄭経の従兄弟たちと結託してクーデターを起こし、監国であった鄭克𡒉を殺害。わずか12歳であった鄭克塽を延平郡王に擁立しました。

清朝への降伏

1683年、清朝の水師提督である施琅が率いる軍が澎湖海戦で鄭氏軍を破り、澎湖諸島を占領します。鄭氏軍の主将であった劉国軒は台湾に逃げ戻りましたが、情勢は圧倒的に清朝優位でした。馮錫範は、鄭克塽に清朝への降伏を勧め、7月5日に降伏文書を作成させます。そして、7月15日には鄭克塽を施琅のもとへ送り、8月13日には施琅が台湾に入り、鄭氏政権は清朝に降伏しました。

その後の鄭克塽

降伏後、鄭克塽は北京に移り住み、清朝の漢軍正紅旗に組み込まれて、海澄公に封じられました。康熙46年（1707年）に病没し、爵位を継ぐ者はいませんでした。鄭克塽は馮錫範の娘を娶り、鄭安福をもうけています。また、弟には鄭克挙がいます。

鄭克塽の死後、母親である黄氏は、清朝に対して鄭家の財産を返還するように要求しましたが、認められませんでした。

子孫

台湾の著名な詩人である鄭愁予は、鄭克塽の子孫にあたります。このことは、歴史上の人物が現代にも影響を与えていることを示唆しています。

小説『鹿鼎記』における鄭克塽

鄭克塽は、金庸の武侠小説『鹿鼎記』にも登場します。小説の中では、実際の年齢よりも10歳年上として描かれており、李自成と陳円円の娘である阿珂と恋仲になります。しかし、阿珂は後に主人公である韋小宝と結婚し、鄭克塽とは別れることになります。

『鹿鼎記』における鄭克塽は、実際の歴史上の人物とは異なり、悪役として描かれています。小説の中では、傲慢で嫉妬深く、自己中心的で、策略を弄する人物として描かれています。この作品を通して、鄭克塽は歴史上の人物としてだけでなく、文学作品のキャラクターとしても人々に知られることとなりました。

まとめ

鄭克塽は、鄭氏政権の最後の主として、その短い生涯の中で激動の時代を生きました。若くして王位を継承するも、重臣のクーデターや清朝の侵攻により、最終的に降伏を余儀なくされました。歴史的には悲劇の人物として捉えられることが多いですが、その後の文学作品での描かれ方を通して、より多角的に語り継がれています。

参考文献

『清史稿』卷二百二十四 - 列傳十一
奈良修一 『鄭成功―南海を支配した一族』山川出版社「世界史リブレット人」、2016年 ISBN 978-4634350427

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