里見義弘

里見義弘

里見義弘（さとみ よしひろ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての安房国（現在の千葉県南部）を治めた大名であり、安房里見氏の第6代当主として知られています。

生涯

享禄3年（1530年）に、同じく安房国の大名であった里見義堯（よしたか）の嫡男として生まれ、幼名は義舜（よししゅん）と名乗りました。永禄年間に入ると、父から実権を譲り受け、義弘と改名したとされています。

義弘の時代は、後北条氏との激しい抗争が特徴的です。永禄4年（1561年）には、越後国の上杉謙信（うえすぎ けんしん）による北条氏康（ほうじょう うじやす）攻めに呼応し、また永禄7年（1564年）の第二次国府台合戦（こくふだいかっせん）では、北条綱成（ほうじょう つなしげ）と戦うなど、父と同様に徹底して後北条氏と対立しました。

しかし、第二次国府台合戦での大敗により安房国へ退却を余儀なくされ、更に北条水軍の攻撃や、正木時忠（まさき ときただ）、土岐為頼（とき ためより）、酒井敏房（さかい としふさ）ら上総国（かずさのくに：現在の千葉県中部）の有力領主の離反によって、上総国の大部分を失うという苦境に立たされました。これにより、里見氏の勢力は一時的に衰退します。

しかし、永禄10年（1567年）の三船山合戦（みふねやまかっせん）において、義弘は北条軍を見事に撃破し、勢力を挽回することに成功します。佐貫城（さぬきじょう）を本拠地として、安房国から上総国、下総国（しもうさのくに：現在の千葉県北西部、茨城県南西部、埼玉県東部）にかけて領国体制を築き上げ、里見氏は最盛期を迎えます。

永禄12年（1569年）には、上杉謙信と北条氏政（ほうじょう うじまさ）の間で越相同盟（えつそうどうめい）が締結されたことで、上杉氏からの支援を失います。さらに、下総国の関宿城（せきやどじょう）が陥落するなど、後北条氏の攻勢が強まりました。これに対抗するため、義弘は武田信玄（たけだ しんげん）と甲房同盟（こうぼうどうめい）を締結します。越相同盟が破棄され、武田信玄と北条氏政の間で甲相同盟（こうそうどうめい）が復活した後も、武田氏との同盟関係は継続されました。しかし、武田勝頼（たけだ かつより）が長篠の戦い（ながしののたたかい）で敗れたことで、武田氏は西の織田信長（おだ のぶなが）との全面対決に専念せざるを得なくなり、甲房同盟の価値は失われます。一方で、上杉氏からの働きかけによって謙信との同盟を復活させたものの、謙信も足利義昭（あしかが よしあき）の要請を受けて織田信長との全面対決に臨むことになり、北条氏の勢力拡大を軍事的に牽制できる勢力はなくなってしまいました。

そして天正5年（1577年）、義弘はこれまでの態度を一転させ、後北条氏と和睦を結びました（房相一和：ぼうそういちわ）。

天正6年（1578年）、義弘は久留里城（くるりじょう）にて急死しました。しかし、遺言において弟（庶長子とも）・義頼（よしより）と嫡男・梅王丸（うめおうまる）への領土分割を命じたことが、死後に里見氏の分裂を招くこととなりました。

統治

義弘は、領民からの意見を政治に反映させるため、落首（らくしゅ：世相を批判する内容の匿名歌）を推奨したと伝えられています。『里見九代記』によると、義弘が領内を巡視していた際、

福原の都人とは聞きつれど　年貢につけてしなのあしさよ

という落首を見つけました。これは、福原信濃守（ふくはら しなののかみ）による年貢徴収の不正を告発したものであり、義弘はこれを受けて福原を処罰したとされています。

関連作品

* 小説：今村翔吾『青に恋して』（『戦国武将伝 東日本編』収録、2023年、PHP研究所）

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