野々村仁清

野々村仁清：京焼の巨匠とその芸術世界

野々村仁清は、江戸時代前期(17世紀)に活躍した、京焼を代表する陶工です。生没年は不明ですが、丹波国桑田郡野々村(現在の京都府南丹市美山町大野)の出身で、通称は清右衛門でした。

若き日は粟田口や瀬戸で陶芸の技術を磨いたと伝えられており、その後京都に戻り、正保年間(1644～1648年)頃に仁和寺の門前に御室窯を開きました。中世以前の陶工は、たいてい無名でしたが、仁清は自身の作品に「仁清」という印を押すことで、作品への責任と作者としての意識を明確に示しました。これは、近代的な意味での「作家」「芸術家」としての意識を持った、初期の陶工と言えるでしょう。なお、仁清という号は、仁和寺の「仁」の字と、自身の通称である清右衛門の「清」の字を組み合わせたものと伝えられています。

仁清の卓越した技量は、特に轆轤（ろくろ）の技術に顕著に表れています。現存する茶壺などを見ると、その大ぶりな作品を均一で繊細な薄さに仕上げる轆轤技は、見る者を圧倒するものです。また、色絵雉香炉や法螺貝形香炉に見られるように、彫塑的な作品にも秀でていました。

仁清の作品の特徴は、立体的な器面をキャンバスに見立て、金彩や銀彩を交えた華麗な色絵装飾を施している点です。MOA美術館所蔵の色絵茶壺などがその好例であり、茶道を愛好した大名、佐々木京極家によって江戸時代初期から収集され、明治時代には三井家にも多くの作品が伝わっています。

代表作：国宝から重要文化財まで

仁清の作品は、現在数多くの美術館や博物館に所蔵され、国宝や重要文化財に指定されているものも多くあります。その代表的な作品をいくつか挙げると、

国宝: 色絵雉香炉(石川県立美術館)、色絵藤花図茶壺(MOA美術館)
重要文化財: 色絵雌雉香炉(石川県立美術館)、色絵梅花図茶壺(石川県立美術館)、色絵金銀菱文茶碗(MOA美術館)、色絵輪宝羯磨文香炉(藤田美術館、岡田美術館)、色絵鱗波文茶碗(北村美術館)、色絵瓔珞文花生(仁和寺霊宝館)、銹絵水仙文茶碗(京都・天寧寺)、古清水色絵蓮華式香炉(京都・法金剛院 京都国立博物館寄託)、色絵釘隠(21個、京都国立博物館 伝仁清)、色絵月梅図茶壺(東京国立博物館)、色絵牡丹文水指(東京国立博物館)、色絵芥子文茶壺(出光美術館)、色絵鳳凰文共蓋壺(出光美術館)、色絵山寺図茶壺(根津美術館)、色絵法螺貝形香炉(静嘉堂文庫美術館、大阪・法人蔵)、色絵吉野山図茶壺(静嘉堂文庫美術館、福岡市美術館)、色絵若松図茶壺(文化庁)などがあります。

これらの作品は、その精緻な技巧と華麗な装飾、そして奥深い芸術性によって、現在も人々を魅了し続けています。

参考文献

林屋晴三『日本の美術138 仁清』至文堂、1977年
岡佳子『国宝仁清の謎』角川書店《角川叢書》、2001年
中島誠之助著「鑑定の入り口　やきもの百科」淡交社、2009年12月12日
吉岡康暢著「文化財探訪クラブ⑩ 陶磁器の世界」山川出版社、2001年8月20日

関連人物・場所

金森重近
妙光寺 (京都市) - 仁清の墓所が境内にあると伝えられています。

野々村仁清は、日本の陶芸史において、重要な役割を果たした陶工と言えるでしょう。彼の作品は、後世の陶工たちに大きな影響を与え、現在も日本の伝統工芸の最高峰として高く評価されています。

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