金森重近

金森重近（かなもり しげちか）

金森重近は、天正12年（1584年）に飛騨高山藩主・金森可重の長男として生まれました。幼少の頃から茶の湯に親しみ、その才能を開花させました。しかし、慶長19年（1614年）の大坂の陣では、父の徳川方への加担を批判したため廃嫡され、母と共に京都へ隠棲しました。

茶人としての歩み

京都では、宇治の茶師の下で茶を学び、その後大徳寺で禅を修め、「宗和」と号しました。祖父の長近や父の可重と同様に茶の湯に秀でており、公家との交流を通じて茶人としての名声を確立しました。近衛信尋や一条昭良、慈胤法親王など、多くの貴人や文化人と親交を深めました。

宗和流茶道の確立

宗和の茶道は、千道安、小堀政一（遠州）、古田重然（織部）らの作風を取り入れつつも、臨機応変で柔軟なものでした。特に、その優美で柔らかい茶風は「姫宗和」と称され、京の公家たちに愛されました。宗和が確立した茶道は、後に公家茶道に大きな影響を与えたとされています。また、江戸幕府3代将軍・徳川家光にも招かれ、茶を献じたと伝えられています。宗和の茶道は、今日まで宗和流として継承されています。

文化人としての貢献

宗和は、茶道だけでなく、文化的な面でも大きな貢献をしました。陶工の野々村仁清を見出したことは、その代表的な例です。また、大工の高橋喜左衛門と塗師の成田三右衛門らに命じて、飛騨春慶塗を生み出したとも言われています。加賀藩主前田利常からの仕官の誘いを辞退し、代わりに子が加賀藩に仕えたことで、子孫は金沢で茶道宗和流を継承し、藩に貢献しました。

晩年と死

晩年に至っても、宗和は精力的に茶会を催し、明暦2年（1657年）にその生涯を閉じました。墓所は京都の天寧寺にあります。

千利休との関わり

千利休の切腹後、利休の長男である千道安は金森可重に預けられていたとされています。この時、宗和は父と共に道安から茶を学んだとも、父から茶を学んだとも伝えられています。また、古田織部からも影響を受けたとされています。

逸話

武芸者との交流

伊予国大洲藩主の加藤泰興は、武芸の達人として知られていましたが、宗和の茶会に参加した際、その隙の無さに感銘を受けたとされています。加藤は宗和の茶の腕前を認め、その話を聞いた慈胤法親王も非常に喜んだという逸話が残っています。慈胤法親王は宗和の弟子であり、公家茶道の発展に貢献しました。

柄杓の逸話

一条昭良が宗和に茶を所望した際、宗和は柄杓の柄が自身の美意識に合わないと感じ、柄を切り詰めてから茶を点てたという逸話があります。このエピソードは、宗和の美に対するこだわりを示すものと言えるでしょう。

書籍

谷晃『金森宗和』（宮帯出版社 2013年）
東郷隆『洛中の露―金森宗和覚え書』（新潮社 1998年）

関連項目

* 山下氏勝 - 飛騨国出身の武将で、尾張徳川家に仕えました。宗和の娘が氏勝の子に嫁いでいます。

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