野上氏

野上氏（のがみし）

野上氏は、日本の複数の系統に分かれる氏族です。

野上氏の主な系統

野上連 魏族: 近衛将監筑紫史広島が、野上連の姓を賜ったとされます。
清和源氏武田氏族: 石見国（現在の島根県西部）に勢力を持った名族です。詳細は後述します。
桓武平氏三浦氏族: 常陸国（現在の茨城県）久慈郡野上邑を発祥とする系統です。詳細は後述します。

清和源氏武田氏族

石見国の野上氏は、清和源氏の流れを汲みます。具体的には、清和天皇の皇子である貞純親王の子、経基王を祖とする清和源氏の二代、源満仲の四男、頼信を祖とする河内源氏の系統です。さらに、頼義の三男である新羅三郎義光の三男、武田冠者義清の四男、安田義定の流れを汲む武田氏の傍流にあたります。

義定の子である安田義資は、梶原景時の讒言により父と共に罪を得て討たれますが、義資の遺児である逸見右馬允義広は、母方の親族である三浦義具を頼り、諏訪氏の下に身を寄せます。そして、義広は野上庄司正任の娘を妻とします。その子である野上太郎左衛門尉義正は石見国に下り、御神本氏に身を寄せました。その後、梶原景時父子が政争で鎌倉を追われ討たれると、義正は同国の益田兼栄を頼り、北条義時に訴え出て同国木東郷に地田130町を賜ったと伝えられています。

桓武平氏三浦氏族

常陸国の野上氏は、桓武平氏の流れを汲みます。桓武天皇の皇子である葛原親王の子、高見王が子 高望王を祖とする桓武平氏でその五男 村岡五郎こと平良文の流れを汲む三浦氏の支流にあたります。永正年間（1504年～1520年）には、野上監助兼良という人物が確認できます。この系統は佐竹氏の家臣にも名を連ねており、『佐竹知行目録』には、久慈郡窪之内に八貫五百文の知行を持つ武士として野上太郎左衛門の名が見られます。

常陸国のその他の野上氏

常陸国には、上記の平姓野上氏の他に、武蔵丹党の家系や、本姓が不明な家系も存在します。家紋については、武蔵丹党の野上氏が丸に違い鷹の羽、丸に木瓜、丸に雁木扇を使用し、本姓不詳の家系が丸に二つ引を使用していたとされます。

秋田藩士 野上氏

上記の桓武平氏流野上氏の流れを汲み、常陸国にいた野上氏のうち、慶長7年（1602年）に佐竹氏が秋田へ転封される際にこれに従った家系が2家あります。一つは野上対馬の家系です。

系譜：野上対馬―忠右衛門―久重―藤左衛門成久富

もう一つは次郎兵衛の家系です。同家は慶長7年（1602年）、通光の代に常陸国から秋田へ転封に従いました。

系譜：野上次郎兵衛―通光―通種―通定―通能

尊王志士・義民として活躍した野上氏

幕末の動乱期には、野上氏からも尊王志士・義民として活躍した人物が輩出されました。

野上大内蔵: 常陸国那珂郡村松村の修験者。天狗党の乱に参加し、慶応元年（1865年）に獄死。
野上久吉: 那珂郡八田村の百姓。天狗党に加わり、捕らえられて慶応元年に獄死。
野上藤蔵: 那珂郡八田村の百姓。天狗党に加わり、慶応元年に獄死。
野上喜十郎: 那珂郡八田村の百姓。天狗党に加わり、捕らえられて慶応元年に獄死。
野上源次平: 那珂郡若林村の百姓。慶応2年（1866年）に江戸佃島で獄死。
野上利平: 那珂郡若林村の百姓。慶応2年（1866年）に水戸で獄死。

これらの人々は、靖国神社に合祀されています。

参考文献

明田鉄男編『幕末維新全殉難者名鑑1』（新人物往来社、1986年）ISBN 4404013353
太田亮著、上田萬年、三上参次監修『姓氏家系大辞典 第3巻』（角川書店、1934年）
日本家紋研究会編『家紋でわかるあなたの祖先 茨城県北部地方』（日本家紋研究会、2001年）
常陸太田市史編さん委員会編『佐竹家臣系譜』（常陸太田市、1982年）

関連項目

佐竹氏
* 水戸藩

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