野元昭

野元昭 ― 幾多の困難を乗り越え、栄光を掴んだ競馬人生

野元昭氏は、1940年、宮崎県に生まれました。幼少期は、太平洋戦争という国の激動期と重なり、3歳の時に父親を亡くすという辛い経験をしました。母子家庭で育ちながらも、中学校では器械体操部に所属し、持ち前の明るさと強靭な精神力を培っていったといいます。

転機は、中学校で教師をしていた橋口弘次郎氏の伯父との出会いでした。その出会いをきっかけに、野元氏は騎手を目指すことを決意。東京都馬事公苑の騎手養成課程に入所し、厳しい訓練の日々を送ります。同期には、後に競馬界で名を馳せる池江泰郎氏、高橋成忠氏、吉岡八郎氏、福永甲氏、徳吉一己氏らがおり、切磋琢磨した日々は、後の野元氏のキャリアに大きな影響を与えたことでしょう。特に、同じ宮崎県出身で器械体操部で顔見知りだった池江氏とは、深い絆で結ばれていました。

1958年、京都競馬場で騎手デビューを果たした野元氏でしたが、華々しい活躍とは程遠い日々が続きました。幾度かの厩舎移籍を経て、甲状腺ホルモンの過剰分泌による病気で長期休養を余儀なくされる時期もありました。しかし、持ち前の不屈の精神で病を克服し、今度は調教師への転身を決意します。1979年、念願の調教師免許を取得、騎手生活に幕を閉じました。騎手としての通算成績は2051戦209勝でした。

1980年、栗東トレーニングセンターに厩舎を開業。初勝利、そして重賞初勝利と、順調にキャリアを重ねていきます。1991年には、管理馬リンデンリリーがエリザベス女王杯を制覇。GI競走初制覇という大きな喜びを手にしました。騎乗していた岡潤一郎氏（後に殉職）にとって、最初で最後のGI勝利となりました。

野元氏の調教師としてのキャリアの中でも特筆すべきは、馬主・平井豊光氏との深い繋がりです。平井氏が創業した栄進牧場とは、湯浅三郎氏、坂口正則氏、太宰義人氏と共に、長年にわたって強い信頼関係を築き、数々の名馬を世に送り出しました。特に「エイシン」を冠名とする馬との関係は深く、エイシンルーデンス、エイシンビンセンスといった重賞勝ち馬を輩出。そして、2008年にはエイシンデピュティが宝塚記念を制覇。野元氏自身にとっても、16年半ぶりのGI競走2勝目という大きな快挙となりました。

2011年、定年を迎え、調教師を引退。長きに渡る競馬界への貢献に幕を閉じました。しかし、野元氏の功績は、多くの関係者の記憶の中に、そして日本の競馬史に刻み込まれることでしょう。息子である野元昭嘉氏も元JRA騎手として活躍しており、親子二代に渡る競馬界への貢献は、大きな感動を与えてくれます。野元昭氏の波乱に満ちた人生は、困難を乗り越える大切さと、夢を諦めないことの素晴らしさを教えてくれます。

主な騎乗馬

ミトヒカリ (1960年タマツバキ記念〈秋〉2着)
ミスマウンテン (1963年京都大障害〈秋〉3着)
イーグル (1963年鳴尾記念2着)
フジサチ (1964年タマツバキ記念〈春〉2着)
チトセターザン (1964年阪急杯3着)
イトハン (1966年北海道3歳ステークス3着)
トウメイ (1969年シンザン記念2着)
アラブエース (1972年タマツバキ記念2着)

主な管理馬

カルストンイーデン (1980年京都大障害・秋)
ラッキーオカメ (1986年北九州記念)
リンデンリリー (1991年ローズステークス、エリザベス女王杯)
エイシンルーデンス (1999年チューリップ賞、2001年中山牝馬ステークス)
エイシンビンセンス (1999年北九州記念)
エイシンデピュティ (2007年エプソムカップ、2008年京都金杯、金鯱賞、宝塚記念)
ケイティラブ (2010年アイビスサマーダッシュ)

主な厩舎所属者

野元昭嘉 (1995年-1998年、2009年-2011年 騎手)
* 日吉正和 (2004年-2007年 調教助手)

もう一度検索