金幼孜

金幼孜（きん ようし）は、明代の学者であり官僚です。洪武元年（1368年）に生まれ、宣徳6年（1432年）に64歳で亡くなりました。字は幼孜で、通称として用いられました。本貫は臨江軍新淦県です。

生涯

建文2年（1400年）に進士に合格し、戸科給事中に任官しました。建文4年（1402年）に永楽帝が即位すると、翰林検討に転じ、解縉らと共に文淵閣で勤務しました。皇太子朱高熾に『春秋』を講義し、『春秋要旨』三巻を献上するなど、早くからその才能を発揮しました。

永楽5年（1407年）には右諭徳に転じ、侍講を兼任しました。永楽帝は金幼孜や胡広らに対し、任期満了後も異動させないよう吏部に命じ、その才能を高く評価していました。永楽7年（1409年）には永楽帝に従って北京に移り、翌年には第一次漠北遠征にも従軍しました。遠征中、永楽帝が駐屯した清水源で、金幼孜は銘文を、楊栄は詩を献上しています。また、通過する山川や要害について記録するよう命じられ、馬上で文章を起草するなど、その文学的才能は陣中でも発揮されました。オイラトからの使者が来朝した際には、永楽帝の側近として敵情聴取にもあたりました。

遠征中、金幼孜は胡広や楊栄らと道に迷い、谷に取り残されるというアクシデントにも見舞われました。落馬した金幼孜を楊栄が介抱し、翌日、無事行在所にたどり着きました。永楽帝は彼らの帰還を非常に喜び、安堵したと言われています。金幼孜はその後も度重なる漠北遠征に従軍し、『北征前録』と『北征後録』を編纂しました。永楽12年（1414年）には、『五経大全』、『四書大全』、『性理大全』の編纂も命じられました。永楽14年（1416年）には翰林学士に、永楽18年（1420年）には文淵閣大学士に進み、楊栄とともに重用されました。

永楽22年（1424年）、金幼孜は永楽帝の第五次漠北遠征にも従軍しました。軍が疲弊する中、金幼孜は永楽帝に遠征の中止を進言しますが、聞き入れられませんでした。しかし、永楽帝が夢の内容を語った際、金幼孜は遠征の危険性を進言し、撤退に導きました。帰路、永楽帝が崩御すると、金幼孜は楊栄らと協議し、帝の死を秘密にしました。その後、棺を守り北京へ帰還しました。

洪熙帝（朱高熾）が即位すると、金幼孜は文淵閣大学士を兼ねたまま、戸部右侍郎に任じられ、太子少保の位も加えられました。武英殿大学士も兼任し、洪熙帝の信任も厚く、楊栄、楊士奇らと共に輔政の臣として頼りにされました。洪熙元年（1425年）には、大学士・学士を兼ねたまま礼部尚書に進みましたが、母の看病のため帰郷を願い出ました。翌年、母が亡くなり喪に服しました。

宣徳帝が即位すると、金幼孜は再起を命じられ、両朝実録の編纂の総裁官に任じられました。宣徳3年（1428年）には、慶府郡王妃を冊封するために寧夏に赴きました。各地を巡察し、兵や民衆の苦境を観察し、帰還後、宣徳帝に上奏しました。宣徳帝の辺境巡幸に同行した際には、鶏鳴山にまつわる逸話に対し、歴史を踏まえた上で、皇帝への諫言を行いました。金幼孜は、宣徳6年12月16日（1432年1月19日）に64歳で亡くなり、少保の位を追贈され、文靖と諡されました。

金幼孜は、明代初期の政治・文化に大きく貢献した人物であり、その博識と卓越した文章力、そして国家を思う誠実な姿勢は、後世に長く語り継がれています。

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