金粉ショー

金粉ショー

概要

金粉ショーは、演者が身体全体に金色の粉末や塗料を塗布し、舞踊やダンス、様々な身体表現を行うパフォーマンスアートの一種です。全身を使った独特なボディペインティングによる視覚的なインパクトが特徴です。

歴史的展開

このパフォーマンスの源流は古く、記録によると、1909年にはヨーロッパで女性の全身を金色に彩る「ゴールデン・ビーナス」と称されるショーが行われていました。日本へは、戦前の1934年に吉本興業が招聘したアメリカのレヴュー団「マーカス・ショー」によって紹介されたと言われています。この時の公演で、銀粉をまとったダンサー「ブロンド・ビーナス」が大きな注目を集め、観客から熱狂的な支持を得ました。当時の著名な随筆家である寺田寅彦は、このショーを見て健康への懸念を示唆したと伝えられています。

戦後、1960年代から1970年代にかけて、日本のキャバレーやナイトクラブで金粉ショーが広く上演されるようになります。日本の前衛芸術である暗黒舞踏の創始者・土方巽は、自身の弟子たちをキャバレーに派遣し、金粉ショーを彼らの重要な演目の一つとしました。劇作家の唐十郎とその妻・李礼仙も、金粉ショーによる全国巡業で得た資金を、彼らの劇団「状況劇場」の活動拠点である紅テントの購入に充てたことは、しばしば語られるエピソードです。しかし、この時期には悲劇も発生しており、1969年には福島県の磐光ホテルで、金粉ショーの演出中に使用された松明が原因で火災事故が発生しています。

その後、キャバレーやストリップ劇場の衰退、温泉施設でのショーの減少といった社会の変化に伴い、金粉ショーの主な上演場所は変化していきました。現代においては、愛知県の大須大道町人祭や神奈川県の野毛大道芸といった国内有数の大道芸フェスティバルにおいて、屋外パフォーマンスとして披露される機会が増加しています。21世紀に入っても、舞踏家集団である大駱駝艦やささらほうさらといった団体が、この独特なパフォーマンス形式を継承し、新たな表現を追求し続けています。

健康に関する誤解

「金粉を全身に塗ると皮膚呼吸ができなくなり、短時間で死に至る危険がある」という話が、長年にわたり都市伝説のように語られてきました。この通説は、特に映画『007 ゴールドフィンガー』で全身を金色に塗られた人物が死亡するシーンの影響が大きいと考えられています。しかし、医学的に見て、人間は肺で呼吸を行うのであり、皮膚表面で呼吸しているわけではありません。したがって、皮膚を塗料で覆ったこと自体が直接的に呼吸を妨げ、生命を危険にさらすという科学的根拠は存在しません。ただし、使用される塗料に有害な化学物質が含まれている場合、それが皮膚から吸収されたり、粉末を吸入したりすることで、健康被害を引き起こす可能性は十分にあります。そのため、パフォーマンスに使用する素材の安全性には細心の注意を払う必要があります。

関連作品・項目

金粉ショーや全身を金色に塗る描写が登場するメディア作品や、関連性の深い項目がいくつかあります。

映画
『電送人間』（1960年）
『007 ゴールドフィンガー』（1964年）
『007 カジノ・ロワイヤル』（1967年）
『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』（1969年）
『あらかじめ失われた恋人たちよ』（1971年）
『三つ首塔』（1977年）
『少林十八銅女』（1978年）
『残虐13大淫魔術』（1995年）
『毒婦マチルダ』（1998年)

文学
谷崎潤一郎『金色の死』（全身に金箔を貼る描写がある）

関連芸術運動・団体
暗黒舞踏
土方巽 / 大駱駝艦
状況劇場

その他
11PM（テレビ番組）
磐光ホテル（火災事故現場）
異色肌（関連概念）

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