金興旺

金興旺（きん こうおう、生没年不詳）は、元末から明初の時代に活躍した軍人です。彼の前半生については詳しい記録が残っておらず、その出自や経歴は謎に包まれています。しかし、朱元璋が明朝を建国する過程で、重要な役割を果たした人物として歴史に名を刻んでいます。

金興旺は、朱元璋の軍に加わり、その能力を認められて威武衛指揮僉事に任命されました。その後、同知へと昇進し、徐々に頭角を現していきます。1368年、明朝が成立した洪武元年、徐達が河南から陝西へと転戦する際、金興旺は潼関の守備を任されることになりました。郭興の補佐として潼関の守りを固め、その功績が認められて指揮使へと昇進しました。

翌年、馮勝が臨洮を攻撃すると、金興旺は鳳翔へと移駐し、軍の食糧補給を担当しました。しかし、北元の賀宗哲が鳳翔に侵攻してくると、金興旺は知府の周煥と共に城に籠もり、激しい攻城戦を繰り広げました。この時、李思斉を降した王輅の援軍が駆けつけ、金興旺は鳳翔府城を守り抜くことができました。元軍は慶陽が陥落したという情報を聞き、撤退しました。この功績により、洪武帝（朱元璋）は使者を派遣し、金綺を贈って金興旺らの労をねぎらったとされています。

1370年、洪武3年、徐達が沔州に入ると、金興旺は張龍と共に鳳翔から派遣され、連雲桟を経て興元を攻めました。守将が降伏すると、金興旺は興元の守備を任され、大都督府僉事に抜擢されました。その後、夏の将である呉友仁が3万の兵を率いて興元に侵攻してくると、金興旺は城内の兵3000人を総動員して防戦にあたりました。激戦の中、流れ矢が顔に命中しましたが、矢を抜いて戦場に復帰し、数百人の敵兵を斬り伏せたと伝えられています。敵は数を増し、城壁を乗り越えようとしましたが、金興旺は一歩も引かず戦い続けました。呉友仁は外堀を埋め立てて城を攻め落とそうとしましたが、徐達は傅友徳に木槽関を夜襲させ、斗山寨を攻めさせました。傅友徳は兵一人あたり10本の炬火を持たせ、山上に並べさせたため、呉友仁は明軍の大軍が来援したと誤認して逃走しました。金興旺は兵を率いて追撃し、崖から石を落とし、多数の夏兵を討ち取りました。

1371年、洪武4年、金興旺は秦王朱樉の下で左傅を兼任しました。これは、金興旺が軍事面だけでなく、政治面においてもその能力を認められていたことを示しています。

金興旺の生涯は、明朝の成立期における混乱の中で、一貫して戦い続けた武人の姿を伝えています。彼は、潼関、鳳翔、興元といった要衝の地を守り抜き、明朝の版図拡大に大きく貢献しました。その勇猛果敢な戦いぶりは、後世に語り継がれるべきものであり、明朝の歴史を語る上で欠かせない人物の一人です。

参考文献：

* 『明史』巻134 列伝第22

もう一度検索