鈴木米次郎

鈴木米次郎：日本の音楽教育の礎を築いた巨匠

鈴木米次郎（すずき よねじろう）は、1868年（慶応4年）に江戸で生まれ、1940年（昭和15年）に没した、日本の作曲家、音楽教育家です。彼は、東洋音楽学校（現在の東京音楽大学）の創立者として知られ、日本の音楽教育の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと音楽との出会い

旗本の子として生まれた鈴木は、幼少期に幕末の動乱を経験し、一家で静岡、そして東京へと移り住みました。東京府中学校（現在の東京都立日比谷高等学校）を経て、築地の英学校で英語を学んだ後、1885年に音楽取調所伝習生となり、伊澤修二やギヨーム・ソーヴレーに師事しました。1888年には、東京音楽学校（現在の東京藝術大学）を卒業し、神奈川県尋常師範学校で教鞭を執りました。この時期に、パットン夫人と出会い、トニックソルファー方式の音楽教育に感銘を受けました。

教育者としての貢献

1891年には東京高等師範学校附属学校（現在の筑波大学附属小学校・中学校）の教員となり、12年間にわたり唱歌を教え、音楽教育の基礎を築きました。また、東京音楽学校でも音楽理論や作曲を教え、後進の育成に努めました。さらに、上原六四郎らと明治音楽会を設立し、管弦楽団を組織するなど、音楽振興にも尽力しました。1903年には、東京盲唖学校に移り、視覚障害者の音楽教育に携わり、点字楽譜の整備にも貢献しました。

東洋音楽学校の設立と発展

1907年、鈴木は自ら東洋音楽学校を設立し、校長に就任しました。彼は、管弦楽部を設け、アウグスト・ユンケルやハインリッヒ・ヴェルクマイスターなど、著名な音楽家を招聘し、演奏家の養成を目指しました。また、小中学校の教員を対象とした夏期講習会を毎年開催し、音楽教育の普及にも努めました。さらに、東京フィルハーモニー会を設立し、本格的なオーケストラ運動を展開しました。

東洋音楽学校は、多くの音楽家を輩出し、浅草オペラやハタノ・オーケストラなど、当時の音楽界で活躍する人材を育成しました。また、清国からの留学生も受け入れ、彼らは帰国後、音楽家として活躍しました。

音楽教育への情熱と功績

鈴木は、パットン夫人から学んだトニック・ソルファー方式を教育に取り入れ、音楽理論の理解を深めることに力を注ぎました。また、雅楽科を設置し、日本の伝統音楽の継承にも貢献しました。点字楽譜の整備や『訓盲楽譜』の著述など、視覚障害者の音楽教育にも尽力しました。

1930年には、教え子たちの寄贈により、鉄筋コンクリートの校舎が完成し、学校はさらに発展しました。オペラ教育にも力を入れ、専門教育のための課程を増設しました。

1939年、鈴木は東京音楽学校創立60周年記念式典で、音楽教育功労者として表彰されました。しかし、翌1940年に学校行事に参加後に体調を崩し、12月28日に72歳で生涯を閉じました。彼の功績を称え、翌年には追悼演奏会が開催されました。

鈴木米次郎の遺産

鈴木米次郎は、作曲家として100曲以上の唱歌を作曲し、日本の音楽文化の発展に大きく貢献しました。彼の遺した足跡は、現在も東京音楽大学や多くの音楽家たちによって受け継がれています。彼の教育理念と情熱は、今もなお、音楽教育界に影響を与え続けています。


主な編著書・訳書

音楽理論百ケ条. 鈴木米次郎 訳・編, 上真行 閲. 有正館, 1889年
新編音楽理論. オシレー 著, 鈴木米次郎 訳. 嵩山房, 1892年
新式唱歌 : 一名・トニック・ソルファー唱歌集. 鈴木米次郎 編. 十字屋, 1897年
新編中学唱歌集. 鈴木米次郎、野村成仁共編. 十字屋, 1902年
歴史唱歌 : 普通教育 東洋の部. 斎藤斐章 (古竹) 著, 鈴木米次郎 (長短子) 曲. 山海堂, 1903年
The one hundred English songs. By Yonezirô Suzuki. Sanseidô, 1909
訓盲楽譜. 鈴木米次郎 著. 文部省, 1910年
楽典大要. 鈴木米次郎 著. 十字屋楽器店, 1913年

主な作品

浮雲（落合直文詩） 1892年
旅順口の戦（旗野十一郎作歌） 1894年
近江八景（中村秋香作歌） 1902年
夢（旗野十一郎作歌） 1902年
* 赤穂浪士（森岡常蔵作歌） 1906年

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