鉄工場

交響的エピソード『鉄工場』作品19

アレクサンドル・モソロフが1926年に作曲した管弦楽曲『鉄工場』は、演奏時間約3分の短い作品ながら、作曲者の代表作として知られています。ボリショイ劇場の委嘱によるバレエ『鋼鉄』から編曲されたこの楽曲は、当時の社会情勢と芸術思潮を反映した、革新的な作品です。

歴史

初演は作曲と同じ1926年にモスクワで行われました。1930年には、リエージュ国際現代音楽祭で演奏され、大きな反響を呼びました。その後、世界各地で演奏、録音されるようになり、ロシア・アヴァンギャルド音楽の重要な作品として確立されました。しかし、その前衛的な音楽性は、次第にソ連の文化政策と相容れなくなり、国内での演奏機会は失われていきました。エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮、ソヴィエト国立交響楽団による再演は、モソロフの死後2年を経て実現しました。リッカルド・シャイー指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団による録音も存在します。

編成

ピッコロ1
フルート2
オーボエ2
コーラングレ
クラリネット2
バスクラリネット
ファゴット2
コントラファゴット
ホルン4
トランペット3
トロンボーン2
バストロンボーン
チューバ
ティンパニ
シンバル
スネアドラム
バスドラム
タムタム
金属板
弦五部

楽曲構成

楽曲は三部形式で構成されており、機械的な反復が特徴的です。

1. Allegro: 4分の4拍子。低音楽器を基盤に、クラリネットとヴィオラが六連符で機械の稼働開始を描写します。トランペットの三連符、装飾音を伴うヴァイオリン、ピッコロといった高音楽器が重なり、ホルンが威圧的な主題を提示します。

2. Poco più mosso: 速度が変化し、トランペットがシグナルを発すると、ホルンと木管楽器が呼応します。ティンパニが規則正しくリズムを刻み、行進曲のような雰囲気を醸し出します。

3. Tempo 1º: 最初の速度に戻り、ホルンの主題が再現されます。打楽器群の響きが増し、金属板などが効果的に使用されます。ホルンが三連符で演奏するうちに、速度と音量が次第に増し、最後は打楽器が支配する狂騒的な終結を迎えます。

関連作品

同時期に作曲された、機械文明をテーマにした作品として、以下のものがあります。

アルテュール・オネゲル：パシフィック231（1923年作曲、1924年初演）
セルゲイ・プロコフィエフ：バレエ「鋼鉄の歩み」（1925年作曲、1927年初演）

参考文献

SIKORSKI社 Score H.S.1585
日本・ロシア音楽家協会 編『ロシア音楽事典』（2006年 カワイ出版）ISBN 978-4-7609-5016-4
* 各種CD解説（メロディア盤-スヴェトラーノフ、デッカ盤-シャイー、セゾン・リュス盤-ゴレンシテイン）

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