銀河鉄道 (バス会社)

銀河鉄道株式会社（ぎんがてつどう）

東京都東村山市に拠点を置くバス事業者です。社名に「鉄道」と含まれていますが、設立当初から現在に至るまで鉄道事業は一切行っていないのが大きな特徴です。

概要

本社は東京都東村山市青葉町に位置し、バス事業に関するすべての業務は、東村山市久米川町にある太陽系地球営業所（旧称：本社営業所）で行われています。この営業所には車庫も併設されており、最寄りのバス停は東村山青葉恩多町線の「野際通り西」です。

事業内容は多岐にわたり、主に路線バス、貸切バス、特定バスといったバス事業を展開しています。貸切バスの営業区域は東京都および埼玉県所沢市に及びます。バス事業以外にも、霊柩車による貨物輸送や、2009年に登録した旅行業も手がけています。業界団体である公益社団法人日本バス協会の会員ではなく、交通系ICカードや「東京都シルバーパス」も利用できません。その代わり、独自のサービスとして「お達者定期」を発行しています。また、西武鉄道やJR東日本とは鉄道不通時の代行輸送に関する契約を結んでいないため、代行輸送は実施しないという見解を2012年に示しています。

沿革・エピソード

銀河鉄道株式会社は1999年11月15日に設立されました。社名は、設立年である1999年と著名なフィクション作品『銀河鉄道999』を組み合わせたものです。社長である山本宏昭氏は、幼少期からの熱心なバスファンであり、大型二種免許を取得して新車陸送のアルバイトなども経験しています。大学卒業後に家業の酒店を手伝う傍ら、1988年頃に中古バスを購入したことを契機に、バス会社を設立するという夢を抱くようになったといいます。

2000年4月1日より、特定輸送事業と貨物運送事業（霊柩限定）を開始しました。当初は、社長の知人が経営する斎場の利用客の輸送を主に行っていました。その後、2001年4月26日には東村山市コミュニティバスの運行計画策定事業者に選ばれ、同社の提案が採用されました。そして2003年1月23日からは、西武バス小平営業所と共同で東村山市コミュニティバス「グリーンバス」の運行受託を開始しています。しかし、2006年の道路運送法改正により、貸切免許でのコミュニティバス運行が困難になることを機に、路線バス事業の許可を取得。2008年4月7日からは、東村山市周辺で一般路線バス（小平学校線）の運行も始めました。一方で、コミュニティバスの運行からは2014年5月31日をもって撤退しています。

以来、同社は「大手バス事業者が撤退した地域」や「住民が長年にわたりバス運行を陳情しても実現しなかった地域」を中心に路線バスを展開するという独自の方針を掲げています。「税金には頼らない」という理念のもと、国や自治体からの運行補助金を受け取らない独立採算制での運営を行っています。また、乗降方式においても地域では珍しい「前乗り後ろ降り」を採用しており、乗車時に運転士と乗客が顔を合わせることでコミュニケーションを促進する狙いがあるといいます。

社会貢献活動にも積極的です。2017年からは、運転免許証を自主返納した65歳以上の高齢者に対し、バスの定期券を1年間無料で提供する取り組みを開始しました。これは、高齢者の交通事故を減らしつつ、外出を促すことを目的とした、採算を度外視した活動です。2011年の東日本大震災発生時には、約2,000人のボランティアを被災地まで無料で送迎しました。さらに、2020年の新型コロナウイルス感染症流行期には、東村山駅から新宿駅・東京駅への通勤バスを毎日運行し、片道約2時間の長距離ながら無料での提供を実施しました。

現行路線

東村山青葉恩多町線: 東村山駅東口から青葉町・恩多町のバス空白地域を結ぶ循環路線です。柳泉園や下里四丁目（久留米西団地）、東村山市運動公園などを経由します。平日・土曜は約15分間隔、日曜・祝日は約30分間隔で運行され、運賃は均一制です。
小平国分寺線: 小平駅南口から発車し、あかしあ通りを南下。小金井市と小平市の境界付近に点在する大学や学校が集まるエリアを経由して国分寺駅北口へ向かう路線です。2010年に「小金井循環線」として開設され、沿線住民の要望に応える形で2012年に経路を延長し現在の名称となりました。国分寺駅の乗り場は、以前は駅から離れた場所でしたが、2020年からは駅北口ロータリーへ変更されています。

休止・撤退路線

小平学校線: 2008年から2014年まで運行。新小平駅から、周辺の私立中学校・高校への通学を目的とした路線で、スクールバスに近いダイヤでした。
小平国分寺線13系統（特別快速）: 2022年に短期間実証運行後、継続されましたが同年中に休止。小平駅から学校エリアを経由せず、最短経路で国分寺駅を結ぶ系統でした。
* 東村山市コミュニティバス「グリーンバス」: 2003年から2014年まで、西武バスと共同で受託運行。PASMO・Suica導入に伴い西武バスへ委託が一本化され撤退しました。

車両

銀河鉄道は、路線車、貸切車、特定車を合わせて約20台のバスを保有しています。安全確保と車両を大切にする姿勢から、洗車機は使用せず、毎日手作業で丁寧にバスを清掃しています。

路線車については、東村山青葉恩多町線では主に小型の日野・リエッセが使用されますが、車両整備等の関係で中型車が代走することもあります。この路線では、東村山市の企業ラッピングが施された車両も運行されており、過去にはポールスタアの黒焼きそば、現在はエネックスのでんきラッピングバスが走行しています。小平国分寺線では、より多くの乗客を運ぶため、中・大型車が中心です。2015年以降は三菱ふそう・エアロスターが主力となり、予備車として日産ディーゼル・UAなども使用されています。

コミュニティバス「グリーンバス」運行受託時には、専用カラーの日野・リエッセCNG車が導入されましたが、後に日野・ポンチョに置き換えられました。これらの車両は、委託先が西武バスへ一本化された際に同社へ移籍しています。

貸切車に関しては、会社設立以前に社長が購入した日野・グランシアターが初期の代表的な存在でした。その後、いすゞ・KC-LV781R1（富士7HD架装）などが導入され、さらに2012年には1981年式の日野・RC701Pというモノコック構造の希少な観光車両を譲受し、排出ガス規制適合改修の上で運行に投入しました。この日野RCは、旧車イベントでのシャトルバスとして活躍したほか、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』のロケにも使用されています。その後も積極的に増車を進め、2014年には初の貸切新車として三菱ふそう・エアロエースを、2016年には三菱ふそう・エアロクイーンを導入するなど、車両の近代化を図っています。しかし、コロナ禍による経営状況の悪化を受け、2023年12月には保有する貸切車の一部（3台）を売却するに至っています。

同社は、テレビ東京のドキュメンタリー番組『日経スペシャル カンブリア宮殿』（2011年1月6日放送）で、「夢を仕事にした人」として紹介されるなど、メディアに取り上げられることもあります。

もう一度検索