バスファン

バスファンとは

バスファン（別称：バスマニア、英: Bus Spotter, Bus Fan）とは、バスを趣味とする愛好家のことです。路線バス、高速バス、観光バス、送迎バス、自家用バスなど、バスに関するあらゆる事象を趣味の対象としています。

身近な公共交通機関を対象とする趣味として、鉄道趣味との共通点が多く見られます。特に路線バスの分野でその傾向が強く、一方でバス車両は自動車の一形態であるため、自動車趣味の中の一ジャンルでもあります。専門用語にも自動車用語が多く使われ、特に同じディーゼル[[自動車]]メーカーが製造する大型車という点で、トラック愛好趣味との共通点も深く、鉄道趣味と自動車趣味の両方の特徴を併せ持ちながらも、どちらにも収まりきらない独特の立ち位置を持った趣味といえるでしょう。

日本におけるバス趣味の歴史

1970年代：バス趣味団体の結成

バスは、その初期から鉄道と同様に身近な公共交通機関でした。個人によるバス車両の撮影事例があることからもわかるように、古くから鉄道と同様に趣味とする人がいました。

1970年代後半から、バス趣味団体が結成されるようになり、1976年4月には日本初のバス趣味団体として「日本バス研究会」が結成されました。同会が発行する会誌『バスファン』は、同年6月に創刊され、一部の模型店でも販売されましたが、その後、分裂や他団体との合同を経て、現在は活動を休止しています。

1980年には、「日本バス友の会」が結成されました。鉄道ファン団体の趣味活動の中でバスが取り上げられることもあり、例えば「京急電車ファンクラブ」の会報『京急ファン』では、京浜急行電鉄直営時代の京浜急行バスの情報も掲載していました。

1980年代：バス趣味情報の広がり

1980年代に入ると、鉄道趣味雑誌にバスの情報が掲載されるようになりました。特に『鉄道ジャーナル』誌は、公共交通の話題を幅広く取り上げていました。同誌は1980年11月号で「鉄道と自動車」を特集し、和田由貴夫氏による「バス趣味」についての記述を含む長距離バスに関する記事を掲載しました。また、1984年からは同誌上でバス趣味のコーナー「BUS CORNER」の連載が開始され、バスに関する詳細な記事が掲載されるようになりました。

1985年には、初のバス趣味専門雑誌『バスメディア』が創刊され、書店でも販売されました。当時はインターネットやパソコン通信が普及していなかったため、誌面を通じてバスファン同士の交流が盛んに行われました。翌1986年には、季刊バス専門誌『バス・ジャパン』が創刊されました。雑誌『バス・ジャパン』は1992年に廃刊となりましたが、翌1993年より書籍『バスジャパン・ハンドブックシリーズ』が発行され、現在も刊行が継続されています。

また、テレビ番組でも1985年からTBS『そこが知りたい』で「日本全国各駅停車路線バスの旅」が放送され人気番組となり、その後の「ローカル[[路線バス乗り継ぎの旅]]」などに続く路線バス旅番組の先駆けとなりました。

1990年代：バス専門雑誌の創刊

1990年には、和田由貴夫氏がバス専門雑誌『バスラマ・インターナショナル』を創刊しました。これは現在刊行中のバス専門誌の中で最も古いものです。同誌の編集長は、「1980年代以降にバスファン層が市民権を得た」と述べており、出版物や放送メディアを通じてバス趣味の情報が一般に手に入りやすくなったのは、主に1980年代以降であると推定できます。

2001年には、講談社の自動車雑誌『ベストカー』の別冊として『The BUS』『The 路線バス』が発行され、これが発展して定期刊行の雑誌『バスマガジン』となりました。その後もバス趣味雑誌が創刊され、現在も刊行されています。

また、鉄道ファンがバスファンを兼ねるようになるケースも多く、SLブームに嫌気が差してバス趣味に移行した人や、画一化する鉄道や趣味者同士の知識比べに飽きてバス趣味に移行する人もいます。

鉄道関係の作家であった宮脇俊三氏や種村直樹氏も、ローカルバスなどを題材にした文章を雑誌に連載し、単行本としても出版しました。種村直樹氏は、バスファン向けの書籍にも紀行文を掲載しています。こうしたバス趣味人口の増加に伴い、バス事業者側でもバスファンを対象としたイベントが開催されるようになりました。

2000年代以降：趣味者によるバス会社設立

2000年代に入ると、バス愛好家が自らバス会社を立ち上げる例が現れるようになりました。東京都清瀬市の観光バス会社バスウェイや、東村山市の銀河鉄道などがその例です。これらの会社は、バスファンが乗務員として設立したケースや、異業種からの参入ながら地元のバスファンが設立したケースなどがあります。これらの動きの背景には、規制緩和によりバス事業への新規参入が容易になったことがあります。また、バスファンの中からバス乗務員を志す人も多く、趣味を仕事にする人も現れています。

バス趣味の分野

バス趣味の分野は多岐にわたります。以下に主なものを紹介します。

車両研究

バスの車両そのものを研究する分野で、鉄道趣味における「車両鉄」に相当します。自動車としての車両研究でもあるため、自動車趣味との共通点も深い分野です。

在籍車両調査

各営業所にどの車種が何台いるか、過去の車両の一覧、車両形態の種類などを調査してまとめます。バス事業者ごとの独自の技術や仕様などを研究するのもこの分野です。航空ファンにおける「スポッター」に相当します。

メーカー研究

バス製造メーカー（日野、いすゞ、三菱ふそう、UDトラックス）の特定の会社や車種を研究する分野です。特定のメーカーや車種を好む人は多く、全国の導入事業者のバスを撮影して回る人もいます。同じ車種でも導入事業者によってカラーリングも仕様も異なるため、事業者ごとの特徴や違いを楽しむ人もいます。

また、シャシーメーカーとは別に、バス車体を製造するコーチビルダー（富士重工、西日本車体工業、北村製作所など）のバスボディを愛好する人もいます。

乗車・貸切旅行

バスに乗車して乗り心地などをチェックする分野です。最前列の席や、エンジン音がよく聞こえる最後部の席を好む人もいます。車内の座席配置や設備、仕様に着目したり、ファンによって視点が異なります。また、除籍が迫っている車両や、特定の会社でしか見られない車両を貸し切って旅行を楽しむこともあります。

バス撮影

バスの形態やカラーリングなどを撮影する分野で、鉄道ファンにおける「撮り鉄」に相当します。バス撮影は、路上の他の車両や通行人などの存在があり、撮影の難易度が高いといえます。またバスの車体は、最低でも対角2方向から撮影しないと全体像を把握することができません。

廃車体の撮影や研究もこの分野に含まれます。廃車体を撮影し、元の車種や事業者などを推定する楽しみ方もあります。

バス運転

大型免許を取得して、自らバスを運転する分野です。バスの場合は、免許を取得すれば公道で運転することが可能であり、これを「最大の魅力」とするバスファンもいます。

バス保有

廃車になったバスを譲り受けて個人で所有し、保存する分野です。中には何台もの大型バスを所有する人もいますが、保管場所の確保や維持費がかかるため、趣味団体としてバスを共有する例もあります。

路線研究

運行ルート、ダイヤグラム、運賃などのバス運行形態を研究する分野です。鉄道趣味における「乗り鉄」と重なる部分もあります。また、秘境路線の雰囲気を楽しめる代替バスも、趣味的な乗り歩きの対象となることがあります。

路線乗りつぶし

特定の事業者のバス路線の全路線乗車を目指す分野です。バス路線は鉄道に比べて緻密な路線網を持ち、また路線の改廃も頻繁なため、一事業者の完乗にも長期間を要します。

路線設定調査

バス路線が、どのような目的でルート設定されているかを研究する分野です。過去の路線や歴史を調査するケースもあれば、現状を楽しむケースもあります。また、架空の路線を考えることもあります。

架空路線

地図上に自由に路線を引いて楽しむ分野で、鉄道趣味における「架空鉄道」に相当します。実際に車で走ってみたり、ダイヤグラムを作成したりする人もいます。

歴史・廃止路線調査

バス事業者の歴史や、営業所の改廃の推移、廃止路線などを調査する分野です。鉄道趣味における歴史や廃線を扱うものに相当しますが、バス路線の廃線調査は、残された資料が少なく、調査の難易度が高いです。

停留所・施設調査

バス停留所の標柱や待合所の形態などを調査する分野です。「珍名」のバス停を撮ったり、特定の事業者のバス停標柱を全て撮ろうとする人もいます。また、大規模なバスターミナルの施設研究もあります。

グッズ収集・録音など

バス関連グッズのコレクション、放送音声の録音やテープ収集などを行う分野です。鉄道趣味における「廃品鉄」や「音鉄」に相当します。近年は、バス廃品の販売やオークションも行われるようになりました。

廃品収集

時刻表や路線図などの配布物、バスカード、乗車券類、バス関連グッズ、バスに使用されている部品などを収集する分野です。

案内音声・方向幕画像収集

車内の案内音声を録音したり、廃品の8トラテープを購入して楽しむ分野です。また、さまざまな路線の方向幕（行先表示）を撮影し、収集・研究する人もいます。

模型収集・改造

バスの模型を収集したり、改造したりする分野です。鉄道模型のストラクチャーとしてバス模型が商品化されており、これを塗り替えたり、デカールを貼ったりして改造する人もいます。

投稿・同人誌発行

バス事業者や車両・路線について研究した結果をまとめ、雑誌に投稿したり、同人誌として発行したりする分野です。また、個人サイトやブログを作成したり、SNSで情報交換するなど、インターネットを活用したファン活動も盛んです。

日本のバス趣味団体

以下のようなバス趣味団体があります。

日本バス友の会 - 現存
日本バス研究会 - 活動休止
アキバエクスプレス - 解散
東京バスリサーチ - 後に法人化し、現バスウェイ (観光バス)

日本のバス趣味雑誌

以下のようなバス趣味雑誌があります。

バスメディア（廃刊）
バス・ジャパン（廃刊） - 書籍『バスジャパンハンドブックシリーズ』として刊行中
バスラマ・インターナショナル - ぽると出版
バスマガジン - 講談社ビーシー
バスグラフィック - ネコ・パブリッシング
バスホビーガイド - ネコ・パブリッシング
バスライフ - 笠倉出版社

バス関連のイベント

日本各地でバス関連のイベントが開催されています。

秋田バスまつり
盛岡市バスの日まつり
福島バスまつり
バスまつり in NAGANO
スルッとKANSAIバスまつり
とくしまバスまつり
ひろしまバスまつり

脚注

参考文献

『バス・ジャパン』バス・ジャパン刊行会
『バスの雑学読本』谷川一巳、中央書院
『鉄道ジャーナル』1980年11月号

関連項目

日本のバス
日本のバス車両
鉄道ファン
鉄道撮影
航空ファン
鈴木文彦
高島鎮雄
銀河鉄道 (バス会社)
バスウェイ (観光バス)
海部観光

外部リンク

日本バス友の会
日本バス研究会
Autobuses Digitales MX

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