銭形平次 (大川橋蔵)

銭形平次：18年間愛された時代劇の金字塔

1966年5月4日から1984年4月4日まで、フジテレビ系列で毎週水曜20時から放送された連続テレビ時代劇『銭形平次』。大川橋蔵主演で知られる本作は、野村胡堂の小説『銭形平次捕物控』を原作とする、日本のテレビドラマ史に燦然と輝く作品です。

驚異の長寿番組と記録

全888話という驚異的な放送回数は、ドラマ史上最長を誇り、ギネスブックにも認定されています。当初は白黒放送でしたが、1969年5月からカラー放送となり、高視聴率を獲得。特に1967年9月には最高視聴率35.5%を記録するなど、1975年頃までは常に20%台の視聴率を維持する人気番組でした。

2011年には、本作をタイアップしたパチンコ機『CRびっくりぱちんこ銭形平次withチームZ』が発売されるなど、現在でも高い人気を誇っています。

橋蔵平次の誕生：映画界からの転身と制作背景

本作は、フジテレビと東映の共同制作で、東映京都撮影所にて撮影されました。大川橋蔵の出演は、東映との専属契約が切れた時期であり、自身にとっての条件として「気心の知れた東映京都の仲間となら」という要望が提示され、それが実現した形です。

東映京都撮影所所長であった岡田茂は、時代劇映画の不振を打破するため、テレビ時代劇制作に力を入れることを決定。大川橋蔵は、スキャンダル報道による人気低迷もあり、テレビでの再起を図るという意味合いもあったとされています。

フジテレビプロデューサーの高橋久仁男は、当初長谷川一夫主演による『銭形平次捕物控』の成功を見て、改めて原作の持つ可能性に気づき、企画を立案。キャスティングでは当初様々な俳優が候補に挙がりましたが、最終的に大川橋蔵が抜擢されました。その際、橋蔵はテレビドラマ出演に不安を抱いていましたが、高橋久仁男の熱意と「東映京都撮影所での撮影」という条件によって承諾に至ったのです。

制作、撮影手法の進化

初期の撮影はアフレコ方式でしたが、大川橋蔵の要望により、2年目からはシンクロ方式に切り替わりました。これは、東映社長の大川博の決断によるもので、撮影条件の向上にも繋がりました。脚本家の人数増加や、スポンサーとの綿密な連携なども、番組の長寿に貢献しました。

監督陣は、佐々木康、長谷川安人に始まり、荒井岱志らも参加。演出面でも、初期の長谷川一夫版とは異なる、橋蔵自身の若々しさやアクションを強調した演出が工夫されました。衣装も、初期の長谷川版と異なる町人風スタイルへと変更されています。

10年目を迎える頃には、橋蔵自身も番組継続に悩む時期もありました。しかし、視聴率の維持、そして「橋蔵＝平次」というイメージが定着しつつある状況も鑑みて、番組を続ける決断をしました。

独特の演出と魅力的な脇役、ゲスト陣

本作では、橋蔵演じる平次の十手さばき、そして「投げ銭」のアクションが大きな見どころでした。半官流宗家・中島正義による指導を受けた十手術は、派手な技を駆使したものでした。また、映画時代からの立ち回り技術も活かされており、その高い身体能力は、視聴者の目を奪いました。

平次のライバルである岡っ引き「三ノ輪の万七」役は、初期の藤尾純から遠藤太津朗へと交代。憎めない敵役として人気を博しました。その他にも、森田健作、市毛良枝など、多くの個性的な脇役が番組を彩りました。

豪華ゲストも多数出演しており、橋蔵と映画で共演した先輩俳優・女優、アイドル、文化人が数多く登場しました。最終回には美空ひばり、里見浩太朗といった錚々たる顔ぶれが出演しています。

番組終了と大川橋蔵

18年にわたる長寿番組でしたが、1976年頃から視聴率低下が顕著になり、1980年代に入るとさらに低下。番組打ち切りが検討されるも、岡田茂の説得により、888回という節目をもって終了しました。番組終了の8ヶ月後、大川橋蔵は癌のため他界。その棺には、平次の十手と投げ銭が納められました。

まとめ

『銭形平次』は、時代劇映画の不振、テレビ時代劇の黎明期という時代背景の中で生まれた作品です。大川橋蔵の演技、豪華なゲスト陣、そして個性的な脇役、そして長きに渡る放送期間と、多くの要素が絡み合い、国民的な人気番組となりました。その成功は、単なる時代劇にとどまらず、テレビドラマの可能性を示す金字塔であったと言えるでしょう。

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