鎌田景弼

鎌田景弼：激動の時代を駆け抜けた官僚の生涯

鎌田景弼（かまた かげすけ / けいすけ）は、天保13年（1842年）に生まれ、明治21年（1888年）に47歳でこの世を去りました。幕末の熊本藩士として生を受け、明治維新後は裁判官、内務官僚として活躍し、佐賀県令・知事を務めました。彼の生涯は、日本の近代化を支えた官僚の一人として、その足跡を今に伝えています。

若き日と熊本藩での活躍

熊本藩士・鎌田左一郎の長男として生まれた景弼は、幼少期から学問に励み、その才能を開花させました。明治2年（1869年）には熊本藩に出仕し、参政、公議人に就任。藩政の中枢で活躍しました。明治4年（1871年）に熊本藩が熊本県となると、権大参事に就任し、県の行政を担いました。

司法官僚としての転身

その後、景弼は司法の道へ進み、明治8年（1875年）には左院五等議官に転じます。同年6月には七等判事・東京裁判所判事に就任し、司法官としてのキャリアをスタートさせました。一時的に廃官となるも、すぐに復帰し高知裁判所長に就任。その後、司法権大書記官、兼参事院員外議官補を歴任し、司法行政の中枢で活躍しました。

佐賀県令・知事としての功績

明治16年（1883年）5月19日、第二次佐賀県が発足すると、景弼は初代県令に任命され、県政のトップとして手腕を発揮します。特に、明治17年（1884年）7月1日に開校した佐賀県師範学校の設立には、多大な尽力をしました。明治19年（1886年）7月19日、地方官官制改正に伴い、同県知事となり、県政をさらに推し進めました。

千歳川治水事業や九州鉄道の開通など、県内のインフラ整備にも力を注ぎました。特に、博多〜久留米間の鉄道開通に際しては、「佐賀にも一つ位駅がなければ」という彼の意向で、鳥栖駅が設置されたという逸話が残っています。

明治20年（1887年）5月27日には、勲六等を授章し、従五位勲六等に叙せられました。しかし、知事在任中の明治21年（1888年）6月18日、47歳という若さで病のためこの世を去りました。その功績を称え、死後正五位が贈られました。

家族と親族

景弼は、二度の結婚を経験しています。最初の妻・つた（都多）は、熊本藩士江良丹七の娘で、早くに母親を亡くし、継母の親族の上月八郎の養子となっていました。嘉永元年8月生まれ、16歳で景弼と結婚しましたが、明治13年12月30日に結核のため33歳で亡くなりました。彼女は、台東区谷中の宝塔山多宝院龍門寺に埋葬されましたが、昭和37年に熊本へ改葬されました。後妻のすゑとの間には、三男・恬三をもうけています。長男・諧、長女・登利、次女・喜津、次男・剛治は、最初の妻であるつたとの間に授かっています。三男の恬三は、第一生命保険大分・静岡支部長を歴任しました。妹のマシ（麻志）子は、神風連の乱の参謀格・小林恒太郎と結婚しましたが、恒太郎の自決後、鎌田家と共に東京へ移り、その後、再婚、離婚を経験しています。

墓所

景弼の墓所は、熊本県熊本市西区池田３丁目54付近の富ノ尾墓地にあります。この場所は、桜が丘病院職員駐車場の裏の雑木林の中に位置しています。墓碑銘には、漢学者としても知られる竹添進一郎（光鴻）が、鎌田家の由来や景弼の生涯を綴っています。戒名は、五柳院殿酔石日景大居士です。現在は管理者不明となっています。

楊柳亭と顕彰碑

佐賀市松原にある楊柳亭は、明治15年（1882年）に岸川平左衛門が創業した料理店です。景弼は、政務の多忙な日々の中で、この場所を訪れ鋭気を養っていました。特に、しだれ柳の多かった場所にちなんで「楊柳亭」と命名しました。昭和24年（1949年）には、全国を行幸した昭和天皇が、この場所を御駐泊所としました。現在でも、景弼が愛用した酔石銘の花瓶や掛け軸が残されています。

佐賀県日蓮宗寳塔山親正寺の境内には、鎌田景弼顕彰碑が建立されています。この碑には、竹添進一郎（光鴻）が綴った景弼の知事としての功績が刻まれており、明治23年（1890年）に落成式が行われました。景弼が川上峡の景色を好んだことから、この場所に建てられたとされています。かつては、50周忌から毎年30年以上にわたり遠忌祭が行われていましたが、現在は行われていません。

著作

景弼の著作としては、『酔石先生遺稿』（池辺吉太郎編、1903年）が残されています。

参考文献

鎌田景弼に関する情報は、以下の文献で確認できます。

内閣「佐賀県知事従五位鎌田景弼陞叙ノ件」明治21年。国立公文書館 請求番号：本館-2A-018-00・任Ａ00189100
干河岸貫一編『明治百傑伝』青木嵩山堂、1902年
小早川秀雄編『血史熊本敬神党』隆文館、1910年
石原醜男編『神風連血涙史』大日社、1935年
井上毅伝記編纂委員会編『井上毅伝史料篇』第6、国学院大学図書館、1977年
『大和町史』、P.546,549〜550、1975年
大植四郎編『明治過去帳』新訂初版、東京美術、1971年（原著私家版1935年）
歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年
上田正昭他『日本人名大辞典』講談社、2001年
* 安岡昭男編『幕末維新大人名事典』上巻、新人物往来社、2010年

鎌田景弼は、幕末から明治にかけての激動の時代を駆け抜けた人物であり、その多岐にわたる活躍は、今日の日本社会の礎を築いたと言えるでしょう。

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