長尾景長

長尾景長とは

長尾 景長（ながお かげなが）は、室町時代後期から戦国時代へと移り変わる激動の時代に生きた武将です。下野国足利庄を拠点とする足利長尾氏の当主であり、関東管領である山内上杉家の家宰という重職を務めました。武将としての活動だけでなく、画家としても優れた才能を持ち合わせていたことで知られています。

生涯

若年での家督継承と苦難

文明元年（1469年）、景長は長尾景人の次男として生を受けました。しかし、幼くして実父を亡くし、さらに後を継いだ兄・定景も病に倒れたため、わずか7歳という若さで足利長尾氏の家督を継承することとなります。幼少の景長は、叔父である長尾房清の後見を受けながら、一族を率いる立場となりました。

長享元年（1487年）、事態は急変します。後見人であった叔父の房清が、山内上杉家と対立していた扇谷上杉家の上杉定正と密かに通じたことが露見したのです。これにより、山内上杉家の当主である関東管領上杉顕定は、叔父の勧農城を攻撃。この出来事が、関東における上杉氏の長期にわたる内紛「長享の乱」の幕開けとなりました。景長は、自身の居城が戦乱の発端となるという苦境に立たされます。

家宰代行と影響力の確立

明応四年（1495年）には、横瀬成繁に攻められて窮地に陥っていた岩松尚純を救援するなど、周辺勢力への影響力を行使し始めます。同年、古河公方足利高基の元服の儀式が行われた際には、本来参列すべき山内上杉家の家宰長尾顕忠に代わって景長が参列し、但馬守に叙せられました。古河公方の元服という重要な儀式に、家宰ではない景長が参加したという事実は、当時の彼がすでに家宰に匹敵する、あるいはそれ以上の影響力を持っていたことを示唆しています。この頃を境に、景長は足利長尾氏の当主として本格的に政治・軍事活動を開始しました。

自立と永正の乱での活躍

永正元年（1504年）の立河原の戦いで、後見人であった叔父の房清が戦死しました。これにより、長年叔父の影響下にあった景長は、名実ともに足利長尾氏の当主として自立を果たします。

永正七年（1510年）、関東管領上杉顕定が没すると、その後継者を巡って山内上杉家内で再び内紛が勃発しました。これは「永正の乱」と呼ばれます。上杉顕定の養子である上杉憲房と、実子とも甥とも言われる上杉顕実が関東管領と山内上杉家当主の座を争ったのです。景長は横瀬景繁らとともに憲房を支持し、顕実を擁立する成田顕泰や長尾顕方らと対峙しました。この戦いにおいて、景長は顕実の本拠である鉢形城を攻め落とすなど、憲房派の勝利に大きく貢献します。この永正の乱における功績により、顕実派であった前任者の長尾顕方に代わり、山内上杉家の家宰に任じられることとなりました。これにより、景長は関東における有力な大名である山内上杉家の政治を主導する立場に昇りつめたのです。

画家としての側面

長尾景長は、武将として戦乱を生きた一方、優れた文化的な才能も持ち合わせていました。彼は画家としても知られており、彼自身が創建した長林寺（現在の栃木県足利市）には、景長が描いたとされる自画像や、当時の関東における水墨画の第一人者であった祥啓（室町時代の画僧）の影響が見られる山水図が現在も伝えられています。また、初期狩野派の祖であり、足利幕府の御用絵師であった狩野正信とも交流があったとする説も存在しており、当時の文化人たちとの繋がりもうかがえます。

武と芸の両方に秀でていた長尾景長は、室町時代末期から戦国時代初頭にかけての関東地方において、武将として、そして文化人として確固たる地位を築いた人物と言えるでしょう。

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