長楽寺 (恵那市)

長楽寺

長楽寺は、岐阜県恵那市笠置町姫栗に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を安智山と称し、恵那三十三観音霊場の二十九番札所として知られています。この寺の歴史は、複数の寺院の興亡と深く関わっており、その複雑な経緯を紐解くことで、長楽寺の重層的な歴史が見えてきます。

長楽寺の創建に至るまでの経緯

観音寺（観音庵）

長楽寺の起源は、明確ではありませんが、観音菩薩を祀る寺庵として始まりました。この寺庵は、清岩浄詳によって開山された曹洞宗の寺院とされ、その創建は江戸時代初期に遡ると考えられています。その後、三世の久岩玄昌の代に、苗木城下にあった雲林寺の末寺となり、臨済宗妙心寺派に改宗しました。しかし、慶安3年（1650年）の大洪水により、観音寺は流失してしまいました。

龍現寺

観音寺の流失後、寺は水上へ移転して再建されることとなり、郷士の吉田藤九郎からの寄進を受け、天和3年（1683年）に龍現寺として再興されました。開山は久岩玄昌で、本尊は釈迦如来でした。龍現寺は、地盤が安定した後、一時衰退しましたが、六世の倹峰廉公の代に中興しました。九世の雲叟守臨の時代には、村人たちの協力により本堂が改築され、苗木藩領内でも屈指の建築物となりました。本堂には釈迦如来を中心に、開山の木像や千手観音などが安置され、庫裡には韋駄天、大黒天、毘沙門天の木像が祀られていました。しかし、明治3年（1870年）の廃仏毀釈により、龍現寺は廃寺となり、仏像や仏具は失われました。龍現寺が所蔵していた開山の木像や位牌などは、後に長楽寺に移され安置されています。龍現寺の跡地には石仏群が残っています。

三十三所の観世音菩薩像

龍現寺には、寛延2年（1749年）に村民が建立した三十三所の観世音菩薩像がありました。しかし、明治3年（1870年）の廃仏毀釈により、そのうち五体が破壊されました。その後、明治25年（1892年）に地元の人々の尽力により、破壊された像は再建されましたが、後に瑞浪市釜戸町の岩滝山観音堂に移されました。

長増寺

現在の長楽寺がある場所には、かつて長増寺という寺院がありました。寛文2年（1662年）に玄外宗三によって開山されたこの寺は、天明6年（1786年）の火災で多くの寺宝を失いましたが、その後、再建されました。しかし、明治3年（1870年）の廃仏毀釈により、長増寺も廃寺となり、取り壊されました。現在、長増寺の跡地には庫裡、開山の木像、数体の石仏、天満宮祠などが残っています。長増寺は、姫栗村と毛呂窪村の二村を檀家としていましたが、廃寺の際に寺産の配分を巡って村同士で争いが起きた記録が残されています。

長楽寺としての再興

長増寺が廃寺となった後、その再興を願った野田長蔵は、かつて明知町にあった廃寺「長楽寺」の寺号を移転する形で、明治14年（1881年）に長増寺の跡地に寺を再興しました。明治17年（1884年）には妙心寺の直末となり、明治34年（1904年）には梵鐘を鋳造し、鐘楼を建設しました。大正12年（1923年）には大般若経を購入し、仏具や仏画を完備しました。本尊は釈迦牟尼仏で、左右に文殊菩薩と普賢菩薩が安置されています。また、恵那三十三観音霊場の札所として、聖観音菩薩も祀られています。

境内

長楽寺の境内には、天満宮祠、三界萬霊供養塔、狩猟鳥獣供養塔などがあります。

参考文献

『恵那市史 通史編 第2巻』 恵那市史編纂委員会, 1989年
『恵那市史 通史編 第3巻』 恵那市史編纂委員会, 1991年
『笠置村誌』 笠置村教育会, 昭和13年
『河合郷土史』 河合青年支會, 大正4年
『恵那郡史』 恵那郡教育会, 1926年
『八百津町史』 1972年

これらの文献を参考に、長楽寺の歴史を詳細に記述しました。

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