長谷川強

長谷川強(1927-2024)氏は、日本の近世文学研究において重要な役割を果たした国文学者です。東京大学文学部卒業後、1971年には「浮世草子の研究　八文字屋本を中心とする」という論文で九州大学より文学博士号を取得しました。この論文は、近世小説研究に新たな視点を提示するものであり、氏の研究者としてのキャリアの出発点となりました。

その後、熊本大学助教授、埼玉大学教授を経て、国文学研究資料館教授に就任。1991年には同館を定年退官し名誉教授となりました。その後は昭和女子大学教授を務め、1997年に退任されました。

長谷川氏の研究分野は近世小説と演劇に及びます。特に浮世草子研究では高い評価を得ており、数多くの著作を発表しました。代表的な著書として、『浮世草子の研究　八文字屋本を中心とする』（桜楓社、1969年）、『浮世草子考証年表　宝永以降』（青裳堂書店、1984年）、『浮世草子新考』（汲古書院、1991年）などがあります。これらの著作は、綿密な考証に基づいた緻密な分析が特徴であり、近世小説研究に大きな影響を与えました。

また、長谷川氏は『西鶴をよむ』（笠間書院、2003年）や『近世文学考』（汲古書院、2007年）といった、より広い読者層を対象とした分かりやすい解説書も執筆しています。これらの著作を通して、近世文学の魅力を多くの読者に伝えました。

さらに、長谷川氏は多くの共編著書も手がけています。例えば、『江戸の笑い』（明治書院、1989年、ハワード・S・ヒベット氏共編）や『近世文学俯瞰』（汲古書院、1997年）などがあります。これらは、近世文学研究の多様な視点を取り入れ、分野横断的な研究の進展に貢献しました。

学術的な著作活動に加え、長谷川氏は多くの古典作品の校注にも携わりました。代表的なものとして、『仮名草子集・浮世草子集』（小学館「日本古典文学全集」、1971年）、『西鶴集　鑑賞日本の古典』（尚学図書、1980年、宗政五十緒氏共著）、池田委斎『あやしぐさ　霊怪艸』（古典文庫、1987年）、江島其磧『けいせい色三味線・けいせい伝受紙子・世間娘気質』（岩波書店「新日本古典文学大系」、1989年）、根岸鎮衛『耳嚢』（岩波文庫、1991年）、『元禄世間咄風聞集』（岩波文庫、1994年）、喜多村筠庭『嬉遊笑覧』（岩波文庫、2002-2009年）などがあります。これらの校注作業を通して、古典文学の正確な理解と普及に貢献しました。

長谷川強氏の研究は、近世文学研究に多大な貢献を残し、後世の研究者にも大きな影響を与え続けています。その業績は、日本の国文学研究史において重要な位置を占めるものと言えるでしょう。

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