長野温泉

長野温泉

長野温泉は、大阪府河内長野市を流れる石川沿いに位置する温泉の総称です。狭義には石川と天見川の合流地点付近を源泉とする温泉を指しますが、広義には河内長野市内に点在する複数の温泉地（長野温泉、錦渓温泉、天見温泉、汐ノ宮温泉など）をまとめて指すこともあります。この文章では、これらの温泉地について詳しく解説します。

概要

長野温泉の源泉は、石川と天見川が合流する地点付近（行者岩）にあります。この場所は「噴出井戸」とも呼ばれ、古くから高野山参詣道である高野街道の宿場町として栄えてきました。温泉の歴史は古く、平安時代にはその存在が確認されていますが、実際に温泉として利用されるようになったのは江戸時代からという説もあります。文献に残る記録では、1906年に極楽寺温泉として開業したのが始まりとされています。

明治末期から昭和中期にかけて石川沿いに温泉街が形成され、多くの観光客で賑わいました。しかし、現在では温泉街は衰退し、温泉旅館としては「河内長野荘」が残るのみとなっています。一方で、2002年には大阪外環状線沿いに日帰り温泉施設「風の湯　河内長野店」が開業するなど、新たな動きも見られます。

泉質

長野温泉の泉質は、含炭酸土類食塩泉（ナトリウム・マグネシウム塩化物泉）です。源泉温度は16.6℃で、ラドン含有量は3.309x10−10Ci/L（0.91マッヘ/L）となっています。

歴史

極楽寺温泉時代

長野温泉という名称が使われるようになったのは昭和初期からで、それ以前は極楽寺温泉として利用されていました。その起源は、長野村古野（現在の河内長野市古野町）にあった極楽寺に温泉が開かれたこととされていますが、正確な時期は不明です。江戸時代から湯治客を受け入れていたという説があるほか、聖徳太子が病気平癒のために極楽寺を訪れた際、境内の杉の木の根元にある泉を勧められ、その霊水を飲んで病気が治ったという伝説も残っています。

現存する記録によると、1906年に極楽寺温泉が開業し、1908年には寺内に湯屋兼宿泊施設「三笑館」が開館したことで広く知られるようになりました。当時の源泉は、現在の長野温泉の源泉とほぼ同じ場所にあったとされています。また、藤沢南岳や渡辺霞亭といった文人も訪れた記録が残っています。1911年までには、長野駅周辺に複数の温泉旅館が開業し、温泉街が形成されました。

しかし、極楽寺では寺の趣旨にそぐわないとして、境内の温泉場や料理屋を撤去し、庭園として整備しました。その後、極楽寺温泉は閉鎖され、源泉は利用されなくなり、温泉街は衰退していきました。

長野温泉時代

極楽寺温泉が閉鎖された後、1960年に長野町観光協会が中心となり、極楽寺から温泉権利を譲り受け、河川敷の使用許可を得て、翌1961年に大阪府温泉審議会の開業許可を得ました。これにより、約40年間放置されていた源泉が再び利用されるようになりました。

新しく掘り下げられた集水池から、7軒の旅館に温泉が供給されました。長野温泉加盟店は1964年に6軒となり、翌1965年には5軒となっています。この時期を最後に温泉街は衰退の一途をたどっています。

現在では、多くの温泉旅館が廃業し、住宅地などに変わっていますが、一部の旅館が営業を続けています。

温泉街

1900年から1920年頃の温泉街は天見川周辺に、1960年代の温泉街は黄金橋から行者岩周辺までの石川河川敷を中心に形成されました。しかし、現在では駅前再開発や宅地造成によって、これらの温泉街はほとんど姿を消しています。その代わりに、大阪外環状線沿いに日帰り温泉施設「風の湯」が開業していますが、新たな温泉街は形成されていません。

温泉旅館

河内長野荘

長野公園長野地区（奥河内さくら公園）の近くにある温泉宿泊施設です。かつては大阪府が所有・運営していましたが、現在は河内長野市が所有し、民間事業者が運営を行っています。温泉は、宿泊客または食事を伴う日帰り利用客に限り入浴が可能です。

おばな旅館 富貴亭

現在も営業を続けている料理旅館です。

八重別館

現在も営業を続けている旅館です。

名所

行者岩

石川と天見川の合流地点にある島状の岩です。頂上には弁財天の祠が建てられており、役行者が座禅を組み修行したという伝説が残っています。

黄金橋

石川にかかる橋で、かつては温泉街への入口でしたが、現在は奥河内さくら公園や河内長野荘への玄関口となっています。

河内長野市の温泉

1960年代に河内長野市近辺の温泉をまとめて長野温泉と呼ぶようになりました。現在、市内には長野温泉の「河内長野荘」、天見温泉の「南天苑」、日帰り温泉施設の「風の湯　河内長野店」などがあります。

錦渓温泉

錦渓温泉は、かつて三日市温泉として知られ、高野山御用宿として栄えた旅館です。その起源は不明ですが、文永・弘安の頃に旅の僧が発見したという伝説があります。近代では、烏帽子形城址の山麓から噴出する鉱泉を利用し、賑わいましたが、1975年に廃業し、現在は温泉旅館は残っていません。

天見温泉

南北朝時代に湯治場が開かれたと伝えられています。現在は、国の登録有形文化財である「南天苑」が温泉旅館として知られています。

汐ノ宮温泉

汐ノ宮温泉は、かつて彼方村横山（現在の富田林市）にあり、石川東岸の潮湧岩から湧出する鉱泉を利用した温泉地です。河内長野市内にはありませんが、長野温泉の一つとして数えられています。かつては複数の旅館がありましたが、現在は住宅地となっています。2022年現在、この地域で鉱泉を利用している施設は研修施設のみです。

滝乃郷温泉

滝畑にあった温泉で、潮湧荘という温泉旅館がありました。滝畑ダムの造成により、1981年に廃業しました。

菊水温泉

観心寺の南に存在した温泉で、菊水館という温泉旅館がありました。現在は残っておらず、詳細は不明です。

笠神温泉（南面利の湯）

天野山南西にあったとされる温泉ですが、所在は不明です。南面利（現在の大阪府和泉市）にあった入湯所「南面利の湯」が笠神温泉にあたると考えられています。

交通アクセス

長野温泉（河内長野荘）

鉄道：南海高野線・近鉄長野線河内長野駅から徒歩約8分。

天見温泉（南天苑）

鉄道：南海高野線天見駅下車後すぐ。

風の湯 河内長野店

鉄道：南海高野線・近鉄長野線河内長野駅のバス停4番のりばから「上原口」バス停下車後すぐ。

脚注

関連項目

天見温泉
奥河内
河内長野市
谷村新司 - 親族が経営していた長野温泉内の旅館に居住していた

外部リンク

河内長野荘
* 風の湯 河内長野

もう一度検索