烏帽子形城

烏帽子形城（烏帽子形公園）

烏帽子形城は、大阪府河内長野市喜多町に位置する、標高182mの烏帽子形山にあった日本の城です。別名「押子形城」とも呼ばれ、奥河内の名所である高野街道の沿線にあります。その歴史的価値から、城跡は国の史跡に指定されています。また、日本遺産『中世に出逢えるまち 〜千年にわたり護られてきた中世文化遺産の宝庫〜』の構成文化財の一つでもあります。

現在は烏帽子形公園として整備され、市民の憩いの場となっています。この記事では、烏帽子形城の歴史的背景、構造、そして現在の公園としての様子について詳しく解説します。

概要

烏帽子形城は、楠木正成が築城したとされる楠木七城の一つで、上赤坂城の支城としての役割を担っていました。城の東側斜面には烏帽子形八幡神社、北側斜面には烏帽子形古墳が存在します。2012年1月には、中世から近世初頭にかけての政治・軍事の歴史を理解する上で重要な遺跡として、大阪府で70年ぶりとなる国の史跡指定を受けました。

横堀を利用した遊歩道や案内板が整備されていますが、烏帽子形八幡神社の神域とされていたため、大規模な改変工事は行われていません。そのため、安土桃山時代の遺構が比較的良好な状態で残されており、歴史ファンにとっては見逃せないスポットとなっています。

立地

烏帽子形城は、標高182mの烏帽子形山の山頂部に位置しています。北と西は断崖となっており、その足元には石川が流れています。東側は河岸段丘が広がり、天見川に落ち込んでいます。このように、東西北の三方は川に囲まれ、南方のみが開けた構造で、天然の要害となっています。付近には、京と堺と高野山を結ぶ東高野街道と西高野街道が高野街道に合流する地点があり、河内国から和泉国へ抜ける河泉街道、紀伊国とを結ぶ九重道、大和国へは大沢越えの道などが分岐しており、交通の要衝でした。

構造

城郭の規模は、東西約180m、南北150mと比較的小規模です。しかし、多彩な構造物が施されており、瓢箪型の主郭とそれを取り囲む逆L字型の腰曲輪を中心に土塁と横堀が築かれ、尾根には堀切、主郭の北側には切岸が設けられています。この地域周辺の城では堀切が用いられることが多いのに対し、烏帽子形城では土塁と横堀が効果的に配置されているのが特徴です。

現在の城郭は、織豊系城郭の三要素（瓦の使用、礎石建物の建造）が見られることから、中世の土塁を主とした城郭から発展していく過渡期のものと考えられています。

歴史

烏帽子形城は、元弘2年 / 正慶元年（1332年）に楠木正成が上赤坂城の支城として築城したと伝えられています。南北朝時代には、南朝の楠木氏の城として、北朝の畠山氏との間で争奪戦が繰り広げられました。平家物語に登場する源行家が篭城した「長野城」は、当時の烏帽子形城があった地域が長野荘と呼ばれていたことから、その有力候補地の一つとされています。

高野街道を見下ろす要所に位置するため、室町時代・戦国時代には義就流畠山氏と政長流畠山氏の家督争いによる争奪戦が起こり、応仁・文明の乱へと発展しました。

江戸時代に入り、甲斐庄氏は大坂の陣で徳川方として河内の道案内を行った功績により、旧領に復帰しましたが、城を維持することができず、元和3年（1617年）に廃城となりました。

烏帽子形公園

昭和30年代に風致公園として開園した烏帽子形公園は、烏帽子形城跡を含む烏帽子形山の敷地に広がっています。横堀を利用した遊歩道（ハイキングコース）が整備され、自然がそのまま残されています。また、公園内にはプールや展望台などの施設もあります。

烏帽子形遺跡という古墳時代後期の円墳も存在し、過去の調査で横穴式石室の存在が確認されています。長年整備がされていなかったため、公園全体が烏帽子形城跡と認識されることもありましたが、現在は一部を除いて再整備が進められています。

交通

南海高野線・近鉄長野線河内長野駅から南海バスの各路線で「上田」停留所を下車後、上田町北交差点から西へ約600メートルです。車の場合は、阪和自動車道美原北ICから国道170号（大阪外環状線）、もしくは国道309号を経由し、国道371号上田町北交差点から西へ約600メートルです。

もう一度検索