門付

門付 ― 日本の伝統芸能とその歴史

門付（かどづけ）は、日本の伝統芸能の一つであり、家の門口で芸能を披露し、金品を受け取る形式のものです。「かどつけ」とも呼ばれ、門付芸、門付芸人といった言葉も用いられます。多くの門付は、新年の祝い事や豊作を祈る予祝芸能として行われてきました。

歴史と概要

門付の起源は、神が人々の生活に祝福をもたらすという民間信仰に深く関わっています。古代には、「祝言人」と呼ばれる人々が神を装い、家々を訪問して祝いの言葉を述べ、金品を得ていました。平安時代の文献『和名類聚抄』には「乞児」として記載されており、物乞いとの関連性が示唆されています。

室町時代には、寺や神社に関係する芸人たちが、読経や舞踊などの芸能を披露する形で門付を行っていました。しかし、次第に経済的な困窮から、単なる物乞いに転落していくケースも増えました。この時期には、「千秋万歳」や「松囃子」、「人形回し」などが盛んに行われていました。

江戸時代になると、門付はさらに多様化し、正月には「萬歳」、「春駒」、「鳥追」などの門付歌が広く普及しました。「萬歳」は平安時代の芸能の流れを汲み、「鳥追」は江戸初期に始まったとされています。女性芸人による三味線演奏を伴う「鳥追唄」も人気を博しました。また、「大黒舞」、「獅子舞」、「ちょろけん」など、神様を模した扮装による門付も盛んに行われました。

正月以外でも、節分や大晦日の「厄払い」、師走の「節季候」、事件を題材にした「歌祭文」、そして「鉢叩」など、様々な形態の門付が存在しました。門付はしばしば非人（社会的に低い身分の人々）によって行われていたため、門付を拒否したい家には「仕切り札」が用いられました。

明治時代には、「法界屋」という新しい門付が登場しました。書生が月琴で『法界節』を歌うことから始まり、やがて複数の楽器を使った大規模な門付へと発展していきました。沖縄では「京太郎」と呼ばれる、人形回しを伴う門付がありました。

門付の文化

門付は、当初は宗教者によって行われていましたが、次第に貧しい人々が担うようになり、独自の芸能文化を形成しました。『四つ竹節』や『法界節』といった俗謡も門付の中から生まれました。門付で用いられた大黒天やお福などのキャラクターは、各地の土人形のモチーフにもなっています。

まとめ

門付は、日本の歴史と社会構造を反映した芸能であり、民間信仰や宗教、経済状況といった様々な要素が複雑に絡み合って発展してきたことが分かります。現在では、一部の地域で伝統が受け継がれていますが、その歴史と文化的な意義は、現代社会においても再考する価値のあるものです。

参考文献

『乞胸 江戸の辻芸人』、塩見鮮一郎、河出書房新社、2006年7月15日 ISBN 4309224547
『中世の村のかたちと暮らし』、角川選書、角川学芸出版、2008年6月11日 ISBN 4047034258

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