開局を断念した放送局一覧

「開局を断念した放送局一覧」は、日本国内における放送事業の歴史の中で、実際に電波を発射し、番組を放送するという段階に至らなかった計画や申請に関する記録です。

放送局の開設には、総務省（旧郵政省）からの予備免許の取得や、電波周波数の割り当てなど、様々な行政手続きと厳格な審査が必要です。

開局に至らなかったケースはいくつかのパターンに分類できます。

予備免許を取得しながらも開局しなかった事例

一つ目は、必要な予備免許は交付されたものの、何らかの事情により計画が頓挫し、最終的な本免許の取得や開局に至らなかったケースです。

現在、このような状況にある事例としては、奈良県で計画されている民放FM局（周波数85.8MHz）が挙げられます。計画の進展が見られない場合、将来的に周波数割り当てが取り消される可能性が指摘されています。

テレビ周波数割り当てが取り消された地域

二つ目は、特定の地域に対してテレビ放送用の周波数が割り当てられたものの、放送局開設に向けた具体的な動きが途絶え、申請が全て取り下げられた結果、割り当てられた周波数自体が取り消されてしまった地域です。

予備免許を申請しながら開局が認められなかった事例

最も多くの団体が含まれるのが、予備免許の申請を行ったものの、行政当局から開局が認められなかったケースです。

これらの申請団体は、国民教育放送協会（日本教育新聞が中心）、日本経済放送（日本経済新聞社）、新潟日報施設放送（新潟日報）、北陸文化放送（北国新聞社）、大阪新聞施設無線放送（大阪新聞）、西日本文化放送（西日本新聞社）、河北放送（河北新報）、セントポール放送（聖パウロ教会）、日本仏教放送（本願寺派）、日本キリスト教放送協会（プロテスタント系団体）など、多様な母体や目的を持っていました。

中には、計画していた放送局が、別の既存放送局の設立に「形式上」関わる形で結実した事例も少なくありません。

例えば、日本経済放送は形式上、日本短波放送として開局し、北陸文化放送は金沢の局が北陸放送として開局しました。河北放送はラジオ仙台、セントポール放送、日本仏教放送、日本キリスト教放送協会は日本文化放送協会（現・文化放送）の設立に形式上関わったとされています。東京放送やセントラル放送はラジオ東京（現・TBSラジオなど）の設立母体の一部となり、全日本放送（東海大学が母体、現存するニッポン放送とは別）は後のFM東海（現・TOKYO FM）の下地となりました。

また、山陽放送（現存のRSK山陽放送とは別）、広島放送、ラジオ広島は、申請が一本化されて中国放送として開局。四国放送（現存の四国放送とは別法人ながら同じ筆頭株主）は香川県高松市で計画されていましたが実現せず、徳島県の四国放送が開局しました。久留米放送は九州朝日放送、長崎平和放送は長崎放送、東北放送（形式上の同名別団体）は既存の東北放送、北日本実業は青森放送として、それぞれ開局に繋がる形となりました。

その他にも、ラジオ東都やラジオ大阪（現存局とは別、国鉄主導）、須賀川放送、市営西宮放送といった地域密着を目指した計画や、日本科学放送局（誠文堂新光社）、日本放送（日本野球連盟、現存のニッポン放送とは別）、ラジオ時計（後のJJYの基礎）、日本テレビジョン協会（現存の日テレとは別）、ヴォイス・オブ・トーキョーなど、特定の分野や技術に関連したユニークな放送構想も多数存在しましたが、これらも実現には至りませんでした。

これらの開局を断念した放送局の記録は、限られた電波資源を巡る競争や、放送事業者に対する当時の審査基準、あるいは事業計画の難しさなど、日本の放送史における知られざる一側面を示しています。

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