JJY

JJY：日本の時刻と周波数の基準

JJYは、日本標準時（JST）と正確な周波数を全国に発信する日本の無線局です。国立研究開発法人情報通信研究機構（NICT）が運用しており、電波時計など、正確な時刻を必要とする様々な機器に活用されています。呼出符号であるJJYは、長波による標準電波送信局そのものを指す名称としても用いられています。

JJYの運用と送信所

JJYは、福島県田村市と双葉郡川内村境のおおたかどや山標準電波送信所（40kHz）、および佐賀県佐賀市と福岡県糸島市境のはがね山標準電波送信所の2か所から長波で電波を送信しています。おおたかどや山送信所は1999年6月に、はがね山送信所は2001年10月に運用開始。西日本への電波到達範囲拡大と、おおたかどや山送信所のバックアップを目的として設置されました。

JJYは原則として常時送信していますが、メンテナンスや自然災害などの影響で停波する場合があります。NICTは周波数偏差などの情報を随時公開しており、高い精度が求められる機器の校正などに利用されています。

送信内容：タイムコードと停波情報

JJYの信号には、時刻情報を含むタイムコードが重畳されています。1秒間に1ビットの情報が送られ、1分間で60ビットのデータが送信されます。このタイムコードは、日本国内で販売されている多くの電波時計が受信し、時刻を自動調整するために利用しています。タイムコードはデータ放送形式であるため、音声では内容を理解することはできません。

タイムコードの各ビットは、長波の出力強度の変化（高出力、低出力）で表され、0ビット、1ビット、そしてポジションマーカーの3種類の信号パターンがあります。毎分0秒、9秒、19秒…59秒の各秒、そして次の0秒の1秒前にポジションマーカーが送信されます。残りのビットは、分、時、1月1日からの通算日、年（西暦下2桁）、曜日といった時刻情報と、うるう秒情報などを二進化十進表現（BCD）で符号化して送信しています。

また、毎時15分と45分には、最後の20秒間、異なるコードが送信されます。これは、呼出符号「JJY」のモールス符号と、停波予告情報で構成されています。停波予告情報では、停波までの時間や、停波が昼間のみか終日かなどが送信されます。停波予定がない場合は、全ての関連ビットは0になります。

JJYの歴史：短波送信時代

2001年3月まで、JJYは短波でも標準電波を送信していました。1940年1月30日に、世界で2番目の短波標準電波局として開設され、千葉県検見川町（現・千葉市花見川区）、その後東京都小金井市に移転しました。1977年12月からは茨城県猿島郡三和町（現・古河市）の送信所から送信され、2.5MHz、5MHz、8MHz、10MHz、15MHzの周波数を使用していましたが、混信などの問題から、廃止時には5MHz、8MHz、10MHzの3波のみが運用されていました。

短波送信時代のJJYは、毎秒の信号音、毎分・毎時の信号音、世界時と協定世界時との差（DUT1）の情報、モールス符号による局名と時刻のアナウンス、そして電波伝播状態の警報などを送信していました。正確な周波数情報は、アマチュア無線機の周波数校正などにも利用されていました。

テレホンJJY

テレホンJJYは、一般電話回線を利用した日本標準時と協定世界時提供サービスでした。1995年8月1日に開始され、2024年3月31日にサービスを終了しました。精度は±1～10ミリ秒程度で、パソコン通信用のアナログモデムまたは専用機器が必要でした。2019年2月からは、光電話回線を使用した「光テレホンJJY」が本格運用されています。

まとめ

JJYは、日本の時刻と周波数の正確さを支える重要なインフラです。長波による現在の運用だけでなく、短波送信時代も含めた歴史、そして電話回線を利用したサービスまで、その多様な展開は日本の時間標準の進化を示しています。今後、より高精度で安定した時刻情報提供のために、NICTは技術開発を継続していくことが期待されます。

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