開成山大神宮

福島県郡山市に位置する開成山大神宮は、伊勢神宮の分霊を奉斎していることから、「東北のお伊勢さま」として広く信仰を集める神社です。かつての社格は県社に列せられていました。特に、拝殿に掲げられている「大神宮」の神号額は、幕末から明治にかけての皇族・有栖川宮熾仁親王の筆によるものです。

歴史

開成山大神宮の創建は、明治時代の安積開拓という一大事業と密接に関わっています。広大な未墾地の開墾に挑んだ開拓民たちの心の拠り所とするため、安積開拓を指導した福島県の典事、中條政恒は、伊勢神宮からの御分霊を迎えることを計画しました。当初、明治6年（1873年）には伊勢神宮を遥拝するための「遥拝所」として計画が進められ、翌明治7年（1874年）10月には本殿と拝殿が完成しました。

伊勢神宮からの分霊を正式に祀る神社とするためには、政府の認可が必要でした。当時、伊勢神宮の分霊を祀ることは極めて稀で、東京や横浜でさえ遥拝所しか認められていない状況でした。中條は、地元からの神社建立の強い願いを受け、教部省を経て神宮司庁へ働きかけますが、容易には許可が得られません。そこで中條は、旧知の間柄であった大教正・西涼寺雪辰に仲介を依頼し、神宮司庁から特別に御分霊奉遷の許可を得ることに成功しました。こうして、明治9年（1876年）1月29日に太政大臣の認可が下り、同年8月4日には正式名称が「開成山大神宮」と決定しました。当初、地元では「岩代大神宮」という名称を希望しましたが、伊勢神宮と同様に旧国名を冠することに政府が難色を示したため、現在の名称に落ち着いた経緯があります。

また、開成山大神宮は、安積開拓の成功に不可欠であった安積疏水の歴史においても重要な役割を果たしました。猪苗代湖から水を引くこの一大事業の起業式は明治12年（1879年）に行われ、明治15年（1882年）10月1日には、岩倉具視右大臣をはじめとする多くの政府高官や関係者が参列し、この開成山大神宮の地で盛大に通水式が執り行われました。

創建から約100年後の昭和50年（1975年）には、御分霊奉遷100年を記念する事業が行われました。この際、伊勢神宮の遷宮で用いられた古材の一部を特別に譲り受け、現在の荘厳な本殿が造営されました。それに伴い、もとの本殿は境内の別の場所に移築され、「桑野宮」として祀られています。

境内と文化財

境内の中心である本殿には、伊勢神宮の内宮・外宮のご祭神である天照大御神（あまてらすおおみかみ）、豊受大神（とようけのおおかみ）に加え、初代天皇とされる神倭伊波禮彦命（かむやまといわれひこのみこと）がお祀りされています。

桑野宮は、明治8年（1875年）に建てられた創建当時の本殿を移築したもので、本殿にお祀りされている三柱の神々の荒魂（あらみたま）を祀っています。

宝物殿では、市指定重要文化財である太刀「勝光（かつみつ）」や槍「国綱（くにつな）」など、神社に伝わる貴重な神宝が展示されています。

境内の御手洗場は、伊勢神宮の内宮近くを流れる五十鈴川の御手洗場を模して造られ、清らかなせせらぎの中に太鼓橋が架けられています。

その他、境内には安積開拓に貢献した開成社の初代社長、阿部茂兵衛の功績を称える阿部茂兵衛像や、安積開拓の立役者である中條政恒を顕彰する中條政恒翁頌徳碑があります。頌徳碑の碑文は大久保利通の長男である大久保利武が手がけ、中條の彫像は著名な彫刻家、北村西望の作です。

摂末社としては、農業や商業、興業、開運などの守り神として倉稲魂神（うかのみたまのかみ）を祀る開成山稲荷神社があります。

祭礼

年間を通して様々な祭礼が行われ、多くの参拝者や地域住民で賑わいます。

桜まつりは、4月の桜の開花時期に合わせて開催されます。周辺にはぼんぼりが灯され、隣接する開成山公園では桜のライトアップが行われます。4月22日の春季例大祭までの期間には、神楽や雅楽、「開成山太鼓」の奉納など多彩な奉納行事が行われ、参道には露店が並び、花見客も加わって華やかな雰囲気に包まれます。

夏まつりは、7月末の土曜日または日曜日に行われます。参道に露店が軒を連ねるほか、開成山太鼓の迫力ある演奏、子ども向けの神社探検、消防車の公開など、家族で楽しめるイベントが企画されます。

秋まつりは、10月16日、17日を中心に秋季例大祭などが斎行されます。また、その直後の週末には、午前中に勇壮な神輿渡御が行われ、地域を巡ります。

交通アクセス

鉄道を利用する場合、JR郡山駅西口の9番バス乗り場から「柴宮団地経由免許センター行」または「市役所経由静団地行」のバスに乗車し、「開成山」バス停で下車します。

乗用車の場合、国道49号線沿いの開成二丁目交差点付近に位置し、隣接する開成山公園の駐車場を利用できます。

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