関屋 (新潟市)

新潟市 関屋

新潟市の中央区と西区の境界付近に位置する「関屋」は、多くの町字にその名を冠する歴史ある地域です。かつては新潟島の西部に広がる大字名でしたが、現在は主に海岸線沿いに地名が残っています。2007年に新潟市が政令指定都市へ移行した際、関屋地区は関屋分水路を境に分割され、その大部分は中央区に、分水路より西側の一部地域は西区に属することになりました。

歴史と由来

関屋の歴史は江戸時代にさかのぼります。当時は西蒲原郡に属する関屋村古新田として開発され、関屋村とも呼ばれていました。地名の起源については、戦国時代の武将である上杉謙信の家臣「関屋某」がこの地に住みついたことに由来すると伝えられています。

近世末期には、この地が日本の近代史における重要な舞台となりました。1868年（慶応4年）に勃発した北越戊辰戦争において、関屋の金鉢山（現在の金鉢山公園）には新政府軍が本拠地を構え、旧幕府軍側の奥羽越列藩同盟軍と激しい戦いが繰り広げられました。この戦いは「関屋戊辰戦争」とも称されるほどであり、米沢藩家老の色部長門ら多くの兵が命を落としました。戦没者を悼み、その史実を後世に伝えるため、激戦地の一つであった関屋下川原町には色部長門の追念碑が建立され、周辺は戊辰公園として整備・保護されています。金鉢山公園の造成工事からは、当時のものと見られる遺骨や武具などが発見されており、この地に関わる多くの人々の遺骨が今なお埋まっている可能性が指摘されています。

さらに遡ると、約7000年前から3000年前の縄文海進期には、関屋地区一帯が海の底にあったという、驚くべき古代の景観変遷も知られています。

近代から現代へ

明治時代に入ると、関屋は新潟市の発展と共に大きな変化を遂げます。1889年（明治22年）には、市制施行に伴い新潟区と合併し、新潟市の大字となりました。同時期には、亀田郷の悪水対策として信濃川分水路の開削が試みられましたが、新潟町の反対により実現しませんでした。

また、明治後期からは臨海部を中心に工業化が進み、1896年（明治29年）に新潟硫酸の工場が建設されたのを皮切りに、明治40年代（1907年～1917年）にかけて十数社の製油所が集積し、新潟港に近い工業地帯として栄えました。

戦後の昭和期には、日本中央競馬会（JRA）の新潟競馬場が関屋に存在した時期があります（1948年～1965年）。現在の新潟競馬場で開催される重賞レース「関屋記念」は、この旧競馬場の歴史を記念して創設されたものです。

そして、地域の治水に大きな役割を果たしたのが関屋分水路です。1964年（昭和39年）に工事が着手されましたが、新潟地震の影響で一時中断。翌1965年（昭和40年）に再開され、1972年（昭和47年）に通水を開始しました。この分水路の開通は、地域の景観や交通網にも大きな影響を与えました。

多様な町字名

関屋地域からは、時代と共に多くの町字が分立・新設されてきました。現在も残る「関屋」を冠する町名だけでも、関屋大川前、関屋御船蔵町、関屋金鉢山町、関屋金衛町、関屋下川原町、関屋昭和町、関屋新町通、関屋田町、関屋浜松町、関屋本村町、関屋松波町、関屋恵町、関新、関南町などがあります。これらの町名には、歴史的な字名や通称（例: 関屋大川前地区の「団九郎」）、庄屋の名前（関屋金衛町）、宅地造成の経緯や開発前の景観（関屋田町、関屋松波町）などが反映されています。

また、分水路によって東西に分断された堀割町や関屋堀割町、旧競馬場跡地の一部を利用した信濃町や文京町など、戦後から高度経済成長期にかけての都市開発やインフラ整備に関わる由来を持つ地名も多く存在します。

地域社会と産業

現在では畑はほとんど見られませんが、かつては「関屋南瓜」というブランド野菜が栽培されており、女池菜や青山葱と並んで地域の名産として知られていました。教育機関としては、日本歯科大学新潟生命歯学部の他、新潟県立新潟高等学校や新潟第一中学校・高等学校、複数の市立小・中学校などが点在し、文教地区としての側面も持っています。

観光面では、夏の時期に賑わう関屋浜海水浴場があり、市民の憩いの場となっています。交通の要衝としては、JR越後線の関屋駅が利用されています。かつては新潟交通電車線が地域南部を通っていましたが、1999年に廃止され、現在はその姿を見ることはできません。

このように、関屋は古代の海の時代から、近世の開拓と戦乱、近代の工業化、そして現代の都市開発と治水事業を経て、多様な顔を持つ地域へと変貌を遂げた歴史的な深みを持つ場所と言えます。

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