新潟島

新潟島（にいがたじま）

新潟島とは、新潟県新潟市中央区にある特定の地域を指す名称です。具体的には、信濃川、関屋分水、そして日本海に囲まれた範囲がこれにあたります。もともとは信濃川河口の左岸部に位置する陸地の一部でしたが、1972年（昭和47年）に開通した関屋分水路によってその周囲が水域で分断され、結果として文字通りの「島」のような地理的形態になったことから、この名で称されるようになりました。

このエリアは、1889年（明治22年）に市制が施行された当時の新潟市の市域とほぼ重なります。島の中央部に位置する古町エリアは、江戸時代から続く歴史を持つ旧市街地であり、現代でも新潟市の定める都心軸「にいがた2km」を構成する重要な一角を占めています。

概要と歴史的変遷

「新潟島」と呼ばれるようになったのは関屋分水開通後の1972年以降ですが、いつから具体的にこの呼称が広まったかの詳細は明確ではありません。しかし現在では、単に市民の間で使われる通称にとどまらず、新潟市の行政や議会の会議でも正式な名称として用いられるほど定着しています。新潟市には、新潟島と同様に水域に囲まれた地域がいくつか存在しますが、その中でも新潟島は市の歴史と深く結びついた特別な地域と言えます。

新潟島の面積は約10平方キロメートル、周囲は約17キロメートルです。これは、現在の新潟市中央区全体の面積の約4分の1強に相当します。

人口と経済の変化

新潟島の人口は、1889年の市制施行時には4万6千人台でしたが、その後増加を続け、1965年（昭和40年）には13万人を超えました。しかし、新潟地震の影響や信濃川対岸の開発、さらに新潟県庁や新潟大学、有力企業などの郊外への移転、佐渡汽船ターミナルの移転といった要因が重なり、人口は急速に減少に転じました。1985年（昭和60年）には8万人台、2005年（平成17年）には6万人台へと、わずか40年間で半減する事態となりました。かつて新潟市の金融・商業の中心地であった古町エリアの商業機能も、人口分布の変化に伴い、信濃川対岸の万代シテイや新潟駅周辺へと中心が移っていきました。2000年代以降も一部の施設移転は続きましたが、近年では専門学校などの都心回帰の動きも見られ始めています。

地形と地域の特性

新潟島の地形は独特です。その大部分は、海岸線に沿って形成された新潟砂丘に由来する丘陵地が広がっています。現在、この砂丘地帯は住宅地や学校、公園として利用されています。一方、信濃川沿いには、かつての河道や中州、後背湿地を起源とする海抜ゼロメートル地帯を含む標高2m以下の低地が帯状に続いており、ここに新潟市の中心市街地の一部が形成されています。地図で見ると、海岸側の砂丘が刃背、信濃川側の低地が刃にあたるメスのような形に似ていると言われることもあります。

新潟島は、新潟市役所、多くの金融機関の本店、そして繁華街である古町といった都市機能が集中するエリアです。また、マリンピア日本海や新潟市歴史博物館（みなとぴあ）、寄居浜などの観光スポットも点在しています。2007年（平成19年）の政令指定都市移行時には、新潟島を一つの区とする案もありましたが、最終的には沼垂や万代などの信濃川対岸地域と共に中央区の一部となりました。島内には新潟中央警察署があり、その管轄区域は新潟島全域をほぼカバーしています。

中心部である古町や本町周辺は、古い中州の上に発展した地域で、かつては縦横に堀が巡らされていました。しかし、1964年（昭和39年）の新潟国体開催を機にこれらの堀は全て埋め立てられ、現在の道路網へと姿を変えました。堀の名残は、東堀、西堀といった地名に今も残されています。北部には、旧中州を前身とする入り組んだ路地や低層住宅が特徴の下島エリア（下町とも）が広がり、船見町など港に関連した地名が多く見られます。この地域は海抜が低く、後背湿地であるため、災害への脆弱性も指摘されています。古町は新潟島で最も歴史が古く、多くの飲食店やホテル、金融機関の本店・支店が集まる経済の中心地です。古町に隣接する寄居エリアは、砂丘上の高台に邸宅が多く、西大畑地区は坂口安吾の生誕地として知られるほか、旧齋藤家別邸などの歴史的な和風建築が点在しています。白山公園の西側一帯に広がる白山浦エリアには、新潟大学医学部をはじめとする多くの学校や、市役所などの官公庁が集まっています。

商業と宿泊施設

商業の中心は、新潟市の旧市街である古町・本町エリアです。古町通や本町通の一部にはアーケードが設置されており、本町通は生鮮食品店などが並ぶ「新潟の台所」として親しまれています。関屋地区には郊外型の商業施設も見られます。かつては新潟大和や新潟三越、イトーヨーカドー丸大などの都市型大型商業施設も立地していましたが、人口減少に伴いそのほとんどが撤退しました。しかし、旧市街の地の利を活かした個人店や小規模店舗の集積は市内で随一であり、若者主体の商店街なども生まれています。

ホテルも旧市街エリアに多く集まっています。1875年創業の老舗ホテルイタリア軒をはじめ、ホテルオークラ新潟、新潟グランドホテルなどのシティホテルのほか、東横インやアパホテルといったチェーン系のホテルも多数立地し、宿泊需要を支えています。

交通網

新潟島は文字通り「島」であるため、外部との往来は橋梁や水底トンネル（新潟みなとトンネル）、あるいは水上バスに限られます。交通の結節点である新潟駅や新潟空港、佐渡汽船ターミナル、主要な高速道路や幹線国道のインターチェンジはいずれも島外に位置しており、島内の交通ネットワークには地理的な不利があります。かつては萬代橋付近の慢性的な渋滞が問題でしたが、2002年（平成14年）の新潟みなとトンネルと柳都大橋の開通により、アクセスが改善されました。西部方面への関屋大橋や有明大橋も交通量が多いため、時間帯によって車線が変更されるリバーシブルレーンが導入されるなどの対策が取られています。

島内の公共交通機関は、主に新潟交通による路線バスが担っています。新潟島内は多くが均一運賃区間です。新潟駅と島内を経て西区方面を結ぶバス路線が多数運行されており、その多くが古町などがある柾谷小路を経由します。特に古町と新潟駅の間は高頻度で運行され、信濃川によって隔てられた両地区間の重要な移動手段となっています。島内にはJR越後線の白山駅と関屋駅がありますが、運行頻度はそれほど高くありません。白山駅は多くの高校や市役所の最寄り駅として利用者が多く、関屋駅も大学や高校、県庁の最寄り駅として機能しています。かつては新潟交通電車線が島内を走っていましたが、1999年に廃止されました。

文化・スポーツ施設

新潟島内には、文化・スポーツ施設が集積しています。白山公園に隣接するエリアには、新潟市民芸術文化会館（りゅーとぴあ）、新潟県民会館、新潟市音楽文化会館といったホール施設が集中しており、様々な公演やイベントが開催されています。特にりゅーとぴあには大規模なコンサートホールや劇場、能楽堂などが備わっています。また、白山公園周辺には新潟市陸上競技場や新潟市体育館があり、西海岸公園内には市営プールもあります。信濃川沿いの「やすらぎ堤」は市民のランニングコースとして親しまれており、新潟島を一周する自転車道の一部にもなっています。毎年10月には、新潟島と新潟市西部をコースとする新潟マラソンが開催されます。歴史関連施設としては、新潟市歴史博物館（みなとぴあ）や新潟県政記念館などがあり、地域の歴史や文化に触れることができます。

新潟島は、その地理的な成り立ちと歴史的な背景から、新潟市において独自の存在感を放つ地域であり、都心機能、居住地、そして文化・スポーツの拠点としての多様な側面を持っています。

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