闞沢

闞 沢（かん たく）について

闞沢（かん たく）は、中国後漢末から三国時代にかけて活躍した政治家であり、儒学者でもあります。本名は徳潤で、揚州会稽郡山陰県の出身です。彼の業績は『三国志』の呉書において詳細に記され、特に儒学におけるその卓越した知識と生涯の歩みが称賛されています。

生涯

閻沢は貧しい農家に生まれましたが、独学で学問を身につけ、故郷で頭角を現しました。まず孝廉として銭唐県の県長に推挙され、その後、郴県令としても活躍しました。やがて、孫権が驃騎将軍に就任する際、彼は招聘され、西曹掾に任命されます。さらに、孫権が即位すると、闞沢は尚書に、続けて嘉禾年間には中書令に昇進し、侍中も兼任しました。

嘉禾6年（237年）には、孫和の講師として諸学や儀礼を教え、赤烏5年（242年）には、孫和が皇太子に立てられる際、太子太傅を兼任し、引き続き彼の教育に力を尽くしました。闞沢は、孫和と息子の孫覇に対して、さまざまな学説を考慮し、それに基づいて教科書を編纂しました。

彼はさまざまな学問に精通していましたが、特に暦数に優れていたとされています。その時代に使用されていた乾象暦には誤差があり、この不具合を解消するために『乾象暦注』を著しました。この修正によって、乾象暦は呉の滅亡まで問題なく使用されることとなりました。また、朝議において経典の解釈が議論となる際、孫権は必ず闞沢に意見を求めていました。

彼の儒学者としての功績が認められ、都郷侯に封じられましたが、赤烏6年（243年）冬に彼は亡くなります。この際、孫権は深い悲しみに包まれ、数日間食事を摂らなかったといわれています。闞沢は謙虚で慎み深く、他人の短所を口にすることは決してなく、宮廷の小役人にさえ敬意を持って接していました。

逸話

闞沢は若い頃、学費を稼ぐために写本の仕事をし、その余った紙や墨を使って学問に励みました。借りた本は熟読し、返す頃には暗記していたと伝えられています。また、魏の曹丕が帝位についた際、群臣から意見を求められた中で、彼は鋭い観察力で曹丕の死を予言するような発言をしました。この予言は実際に彼の予想通り、曹丕は在位七年にして急死します。

さらに、呂壱の専横が続く中、集まった群臣の中には厳罰を求める声もありましたが、闞沢は「賢君の治世にそのような残虐な刑を復活させてはならない」と明言し、彼の態度は尊重されました。書籍の中で最も優れたものを問われた際には、『過秦論』を推薦し、国家の状態を知ってもらうための配慮を示しました。

評価

同郷の虞翻は、闞沢を引き合いに出しその博学や徳行を称賛しています。彼の死後、孫登も遺言の中で、「国家に尽力した良臣」として闞沢の名を挙げました。『三国志』の編者・陳寿も、彼を一代の名儒とし、後世に名を残す人物として評価しています。

三国志演義での活躍

小説『三国志演義』では、闞沢は孫権の時代において重要な人物として描かれています。赤壁の戦いでは、黄蓋の策略を見抜き、さらには曹操との交渉にも立ち会うなど、その慧眼を発揮しました。また、夷陵の戦いにおいては、陸遜を大都督として推薦し、彼の能力を正しく評価する役割を果たしています。

闞沢はその教養と高い道徳観を持ちながら、非常に重要な決定に関与した賢明な政治家であり、道徳的指導者でした。

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