阪和貨物線

阪和貨物線：関西本線と阪和線を結んだ貨物線の歴史

阪和貨物線は、大阪府八尾市の関西本線八尾駅から大阪市住吉区の阪和線杉本町駅に至る貨物線を指す通称で、正式には関西本線の支線でした。「阪和連絡線」とも呼ばれ、2004年に休止、2009年に廃止された路線です。本稿では、関連する未成線であった南港貨物線についても解説します。

阪和貨物線の役割と経緯

阪和貨物線は、接続に難があった阪和線と関西本線とを結ぶ役割を担うバイパス路線として建設されました。全線電化され、単線でしたが、多くの区間で複線化用地が確保されていました。竜華操車場（後に竜華信号場となり廃止）と和歌山操車場の間では多くの貨物列車が運行され、国鉄時代には特急「あすか」などの定期・臨時列車も運行されていました。営業キロは11.3kmと設定されていましたが、これは八尾駅から杉本町駅間の距離です。実際には、関西本線と重複する区間があり、久宝寺駅付近から分岐していました。

晩年には、甲種輸送列車や団体列車、臨時列車しか運行されず、利用頻度は非常に低くなりました。そのため、線路保守目的で、王寺駅と鳳駅間を117系電車を使用した回送列車（錆取り列車）が1往復運転されていました。また、関西本線が電化された当初は、鳳電車区（後に日根野電車区に移管）に電車が配置されており、阪和貨物線を使用して出入庫を行っていました。後に奈良電車区が開設されると、関西本線の電車はそちらに移管されました。

沿線状況

関西本線久宝寺駅と加美駅間の踏切付近から廃線跡が始まり、住宅街や国道25号、大阪府道179号住吉八尾線、地下鉄谷町線出戸駅付近などを経て、大和川の右岸を走ります。阪神高速14号松原線、国道309号、近鉄南大阪線などを横切り、大阪府道28号大阪高石線、地下鉄御堂筋線と交差した後、杉本町駅に到着します。沿線は市営団地や住宅地、大和川の堤防などがありました。

阪和貨物線の旅客化計画

高度経済成長期には、「大阪外環状線」計画の一部として、阪和貨物線を複線化し、旅客化する計画がありました。大阪市が主導し、出戸駅、瓜破駅、新矢田駅を新設する計画でしたが、国鉄の財政悪化、地下鉄谷町線の延伸、大阪環状線と阪和線の直通運転開始、なにわ筋線計画などにより、計画は頓挫しました。1982年の鉄道網整備調査委員会では、出戸駅から泉北ニュータウンを経由して日根野へ至る新線を建設する案も検討されましたが、実現しませんでした。

歴史

阪和貨物線は、大正飛行場（現在の八尾空港）への引き込み線が始まりです。戦後、竜華操車場と阪和線を結ぶ貨物線として改良され、1952年に開業しました。関西本線が非電化であった当時、阪和線を走行する電気機関車が乗り入れることを想定し、開業当初から電化されていました。鉄道貨物の衰退に伴い、貨物列車は減少、1986年11月には定期貨物列車は全廃されました。南海向けの甲種輸送ルート変更や大和川の改修事業、おおさか東線建設工事の影響などもあって、2004年6月末に休止、2009年3月31日に廃止されました。

主要な歴史的節目の年表

1942年：大正飛行場支線が開業
1952年9月1日：関西本線の貨物支線として八尾駅～竜華操車場～杉本町駅間が開業
1965年3月1日：特急「あすか」運行開始（旅客営業開始）
1967年10月1日：特急「あすか」廃止
1986年11月1日：定期貨物列車全廃、竜華操車場を竜華信号場に変更
1987年4月1日：国鉄分割民営化によりJR西日本に承継
2003年4月1日：JR貨物の第二種鉄道事業免許廃止
2004年7月1日：全線休止
* 2009年3月31日：全線廃止

駅一覧

八尾駅 - 竜華信号場 - 久宝寺駅 - 出戸駅（未開業） - 瓜破駅（未開業） - 新矢田駅（未開業） - 杉本町駅

南港貨物線計画

大阪市は、阪和貨物線と合わせて、杉本町駅から南港駅（現在の阪神高速4号湾岸線南港北出入口付近）に至る南港貨物線計画も進めていました。北島（現在の新北島小学校・新北島中学校の敷地）に操車場を設ける計画で、外環状線と一体で旅客化も計画されていました。しかし、大阪外環状線計画の凍結、オイルショックの影響による大阪南港のコンビナート構想の凍結などにより、計画は頓挫しました。その後、住之江公園駅と中ふ頭駅間を結ぶニュートラム（南港ポートタウン線）が開業し、南港へのアクセスを担うようになりました。

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