阪神7801・7901形電車

阪神7801・7901形電車は、1963年から1971年にかけて阪神電気鉄道が導入した急行形電車です。当時の急行系車両は「赤胴車」と呼ばれており、本形式もその一翼を担いました。

概要

本形式は、老朽化した旧型車両の置き換えと輸送力増強を目的に開発されました。設計が簡素化された経済的な車両として、大量に増備されました。1969年以降の増備車は、両開き扉とラインデリアが採用され、1970年からは冷房車も登場しました。製造は川崎車輛、汽車製造、武庫川車両工業の3社が担当しました。

形式の種類は以下の通りです。

7801形 (Mc): 制御電動車
7901形 (T): 付随車

さらに、3011形の余剰車を改造した7922号車が編入され、総勢90両が在籍しました。製造時期によって車体形状が異なり、派生形式として2両編成の7861・7961形や、増結用の3521形も存在します。これらの形式は、ラッシュ時の輸送を考慮して「R車」と総称されることもあります。

開発の経緯

阪神では、1954年登場の3011形を皮切りに大型車の導入を進めていました。1963年のダイヤ改正では、普通列車に「ジェットカー」を投入し、昼間時の特急・急行は大型車で運行できるようになりました。しかし、ラッシュ時には依然として小型車が必要とされていました。また、1968年には神戸高速鉄道が開通し、山陽電気鉄道との直通運転が開始される予定で、架線電圧の昇圧も控えていました。

これらの状況を踏まえ、小型車の置き換え、ラッシュ時の輸送力増強、合理化を目的として開発されたのが本形式です。3601・3701形を基本としつつ、発電ブレーキを省略するなど、大幅な簡素化が図られました。形式番号は、電気ブレーキの省略を理由に7000番台となりました。

編成は、7801形と7901形を組み合わせた2両1ユニットを2組連結した4両編成が基本です。7901形は、阪神初の付随車となりました。阪神では、他の急行系車両を「E車」と呼ぶのに対し、本形式は「R車」と呼ばれていました。これは、Rush（ラッシュ）の頭文字から取られたもので、当時の輸送事情を反映したものです。

車体

車体は、3601・3701形を踏襲した、ノーシル・ノーヘッダーの19m級全金属製です。1963年から1971年までの増備車は、外観上3つのタイプに分けられます。

初期車: 切妻・片開き扉
ラインデリア車: 折妻型・両開き扉、ラインデリア搭載
* 新製冷房車: 7001・7101形と同様のスタイル

主要機器

電装品

主電動機は、3601形と同様の直流直巻整流子電動機を搭載します。駆動装置は中空軸平行カルダン駆動方式で、歯数比は5.69です。主制御器は三菱電機製の電動カム軸式抵抗制御器を搭載し、発電ブレーキは装備していません。

台車

7801形は、住友金属工業製のFS-341軸ばね式金属ばね台車を装着します。7901形は、小型車から転用したボールドウィンタイプの台車を装着しています。2次車以降の7901形は、電動車に準じた形状の住友金属工業FS341Tを新製装着しています。

集電装置

初期車は、7801形に菱枠形パンタグラフを2基搭載していましたが、昇圧後の増備車は1基のみの搭載となりました。

ブレーキ

HSC電磁直通ブレーキを採用し、発電ブレーキは装備していません。

連結器

先頭部にはバンドン式密着連結器、中間部には棒連結器を採用しています。

冷房装置

新製冷房車は、国鉄AU13類似のMAU-13形分散式ユニットクーラーを搭載しています。冷房装置の搭載に伴い、パンタグラフは下枠交差式に変更されました。

形態分類

初期車

1963年から1966年にかけて製造されたグループで、車体は切妻構造、側面窓は上段下降・下段上昇式、客用扉は片開き扉です。内装も簡素化され、蛍光灯の灯具カバーが省略されました。

ラインデリア車

1969年以降に投入されたグループで、両開き扉、組み立て式のサッシ窓、ラインデリアを搭載しています。前面は再び3面折妻となり、貫通幌も収納式となりました。

新製冷房車

1970年以降に投入されたグループで、7001・7101形と同様の両開き3扉車体です。7001・7101形との連結運用を前提としており、偶数番号車ユニットのみが製造されました。

改造工事

昇圧改造

1967年に架線電圧が昇圧され、7801形のパンタグラフが1基撤去されました。

体質改善工事

1968年より、初期車の体質改善工事が開始され、7901形の台車交換、冷房化改造、座席増設などが行われました。

冷房化改造

1971年より、非冷房車の冷房改造が開始され、MAU-13H形分散式ユニットクーラーが搭載されました。

行先表示器設置

1977年から、全車に行先表示器の取り付け改造が行われました。

3000系への改造

1983年から1989年にかけて、一部の編成が3000系に改造されました。

7861形との3両固定化

1986年に、一部の編成が7861形と3両固定編成となりました。

2000系への改造

1990年から、3次車が2000系に改造されました。

運用

1963年から急行運用に投入され、山陽電気鉄道との直通運転にも使用されました。2001年以降は本線での運用がありませんでしたが、2006年に短期間復帰しました。末期は西大阪線（現・阪神なんば線）での運用となり、2008年に引退しました。

廃車

1989年より廃車が開始され、2008年に形式消滅しました。

編成表

(省略)

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