阮咸

阮咸：竹林の七賢と琵琶の名手

阮咸（げんかん、生没年不詳）は、三国時代の魏から西晋にかけて活躍した文人で、名高い竹林の七賢の一人として知られています。字は仲容、陳留郡尉氏県出身です。

生涯

阮咸は、魏の武都太守阮熙の子であり、同じく竹林の七賢の一人である阮籍の従子にあたります。阮瞻と阮孚の父でもあります。竹林の七賢の中では、生涯に関する記録が比較的少なく、『世説新語』や『晋書』、その他唐宋時代の文献にわずかに記述が見られるのみです。

年齢は王戎よりやや年上と推測され、竹林の七賢の中では二番目に若いとされています。若き頃から叔父である阮籍と共に酒宴を楽しみ、放蕩な生活を送ったと伝えられています。官職としては散騎侍郎に任じられたことがありますが、西晋の時代、山濤が彼を吏部郎に推薦した際、武帝（司馬炎）は阮咸の軽薄な言動と酒好きを理由に、その登用を認めませんでした。

阮咸は奔放な性格で、礼法を重んじないことから、当時の儒学者たちからはしばしば批判されました。しかし一方で、琵琶の名手としても知られており、音律にも精通していました。そのため、彼が亀茲から伝わった琵琶を改良したという説があり、後世にはその琵琶自体も「阮咸」と呼ばれるようになりました。略称として「阮」とも呼ばれました。

荀勗と不仲になったことがきっかけで、始平太守に左遷されたことから、「阮始平」という異名でも呼ばれるようになりました。晩年は長寿を全うして亡くなったと伝えられています。

阮咸：楽器

阮咸は、4弦のリュート属撥弦楽器で、阮咸自身にちなんで名付けられたと言われています。彼の改良によって生まれたとする説や、彼が優れた演奏家であったことからその名が付けられたとする説など、起源については諸説あります。独特の音色と演奏性から、中国の伝統音楽において重要な役割を果たす楽器として、現在まで受け継がれています。

阮咸と竹林の七賢

阮咸は、魏晋時代の風流な文人集団である竹林の七賢の一人として、その名を知られています。阮籍、山濤、向秀、劉伶、王戎、嵇康らと共に、世俗を嫌い、自然を愛し、酒を楽しみ、自由奔放な生活を送った彼らですが、阮咸はその中でも特に奔放な性格で知られています。その生き様は、後世の文人や芸術家に大きな影響を与えました。

まとめ

阮咸は、優れた琵琶奏者であり、竹林の七賢の一人としての自由奔放な生き様から、後世に名を残す人物です。彼の生涯は、当時の社会状況や文化風習を理解する上で貴重な手がかりとなります。また、彼にちなんで名付けられた楽器「阮咸」は、中国音楽史において重要な位置を占めています。彼に関する記録は断片的ではありますが、その生き様と音楽への貢献は、現代においても高く評価されています。

参考文献

『晋書』巻49「阮籍伝」
那波利貞「秦漢子」（『芸文』9-12）
* 岸辺成雄「琵琶の淵源」（『考古雑誌』26-10）

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