阮瑀

阮瑀（げん う）

阮瑀（げん う、2世紀? - 212年）は、中国三国時代の魏の文学者。字は元瑜（げんゆ）。建安七子の一人に数えられ、文学的才能を発揮した人物です。

生涯

兗州陳留郡尉氏県（現在の河南省開封市尉氏県）に生まれました。幼い頃から学問に励み、蔡邕（さいよう）に師事し、その才能を高く評価されました。曹洪（そうこう）がその才能を聞きつけ招聘を試みましたが、阮瑀は応じませんでした。その後、曹操（そうそう）にその文才を認められ、司空軍謀祭酒（しくうぐんばいさいしゅ）に任じられ、陳琳（ちんりん）や路粋（ろしゅい）らと共に典記室（てんきしつ）として文書作成に携わりました。曹操が発する多くの檄文は、阮瑀や陳琳の手によるものでした。後に丞相倉曹掾屬（じょうしょうそうそうえんぞく）に転じ、曹丕（そうひ）が五官中郎将（ごかんちゅうろうしょう）に任じられた頃には、曹植（そうしょく）や劉楨（りゅうてい）ら建安七子と交流を深めました。212年（建安17年）に亡くなりました。

逸話

張騭（ちょうしつ）の『文士伝』には、阮瑀が曹操の招集に応じず山に逃げ隠れたため、曹操が山を焼き討ちにして追い立て、捕らえたという逸話が記されています。しかし、裴松之（はいしょうし）は『典略』や『文章志』の記述を引用し、阮瑀は病気を理由に曹洪の招聘を断ったものの、曹操の招集には喜んで応じたと反論しています。山の焼き討ちに関する記述は信憑性に欠けると言えるでしょう。

『典略』には、曹操が韓遂（かんすい）討伐の檄文を阮瑀に起草させようとした際、阮瑀は馬に乗って外出している最中でありながら、馬上ですぐに草案を書き上げ提出したという逸話が記されています。曹操はその草案を推敲しようとしましたが、一文字も修正する必要がなかったと言われています。この逸話から、阮瑀の文章作成能力が非常に高かったことがうかがえます。

評価

阮瑀は総じて文章を得意とし、特に檄文や書簡などの実用的な文章に優れていました。詩作については、やや劣ると評されることもあります。

『文心雕龍』：「琳瑀章表、有譽當時」（陳琳と阮瑀の章表は、当時高く評価された）
曹丕『與呉質書』：「元瑜書記翩翩、致足楽也」（阮瑀の書記は非常に優れており、満足できる）
曹丕『典論論文』：「琳瑀之章表書記、今之雋也」（陳琳と阮瑀の章表書記は、現代の優れた才能である）
鍾嶸『詩品』：「元瑜詩，並平典，不失古體」（阮瑀の詩は、平易で正統であり、古体の形式を失っていない）

作品

唐代までは『阮瑀集』5巻が書庫に保管されていたと記録されていますが、その後の詳細は不明です。明代の張溥（ちょうふ）が、当時残存していた作品を収集し、『阮元瑜集』を編纂しました。

家系

子の阮籍（げんせき）と孫の阮咸（げんかん）は、共に竹林七賢として知られています。阮瑀の血筋は、文学や音楽の才能を受け継ぎ、後世に大きな影響を与えました。

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