阿部正蔵

阿部正蔵の生涯と業績

江戸時代後期、特に幕末の混乱期に功績を残した旗本の一人が阿部正蔵です。彼は白河藩の分家にあたる阿部家の出身で、石高は3000石という恵まれた家柄でした。正蔵は従五位下の遠江守という官位を持ち、父である阿部正良から家督を継ぎました。

正蔵は、天保12年（1841年）の6月24日に、天保の改革が進行する中で大坂西町奉行に就任しました。当時、大坂では物価が高騰し、商人たちの経済活動にも大きな影響を与えていました。正蔵はこの状況を深刻に受け止め、株仲間解散令によって物資の流通が減少していると指摘し、問屋商人を通じて流通の統制を強化する必要性を提言しました。彼の施策は商業の安定に寄与したとされています。

天保14年（1843年）には江戸北町奉行に任命され、同年の10月1日には小姓組番頭に転任しました。正蔵が北町奉行としての役割を果たしている間、彼は江戸における治安維持や商業振興に努め、さらなる信頼を築きました。彼の墓所は池上本門寺にあり、江戸時代の重要な官僚としてその名を後世に残しています。

家族の足跡

阿部正蔵の家族もまた、彼の影響を受けて様々な道を歩んでいきました。正蔵の長男である阿部正定は、宗家である白河藩を継承しましたが、次男の阿部正外が父の後を継いで北町奉行の地位に就きました。正外はその後に幕府の命によって宗家を継ぎ、老中としての地位を担っています。一方、三男の阿部邦之助（1839-1895、別名・阿部潜）は、旗本の曾根家に養子入りしていたものの、兄の正外が宗家を相続する際に実家に戻りました。

邦之助はその後も活躍しました。歩兵差図役の頭取として勤めることから始まり、1867年には目付に任命されました。維新後は公議所御用取扱として議事制度の創設に尽力し、陸軍では頭や重立取扱いを務めました。彼は徳川家の駿河移封に随行し、沼津兵学校創設に大きく貢献しました。その後、沼津奉行、静岡藩少参事兼軍事掛を経て、1870年には広島藩や鹿児島藩に御貸人として派遣されました。また、広島藩兵学校の設立には顧問として参加し、その後の日本の教育制度の構築に寄与したとされています。

さらに、邦之助は1871年に大蔵省に七等出仕として転職し、岩倉使節団に理事官として参加しました。帰国後は公職を辞し、尾去沢銅山や大葛金山などの経営に努め、養蚕や醤油の醸造事業にも取り組みました。

参考文献

• - 『幕末維新人名事典』（宮崎十三八・安岡昭男編、新人物往来社）
• - 『大阪市史』第2巻

阿部正蔵とその家族は、時代の変革に適応しながら、それぞれの役割を果たし日本の近代化に貢献していったことがよくわかります。彼らの足跡は、今もなおその影響を感じることができるでしょう。

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