阿閉貞大

阿閉貞大の生涯

阿閉貞大（あつじ さだひろ）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将で、浅井氏及び織田氏に仕官し、その名を刻んだ人物である。彼は近江国の山本山城主である阿閉貞征の子として生まれ、戦の舞台で多くの経験を積んできた。

戦の始まり

貞大は元亀元年（1570年）に発生した姉川の戦いに参加し、父と共に戦場に立った。この戦闘では、浅井軍において磯野員昌、浅井政澄に次ぐ3段目に配置され、戦略的役割を果たしていた。彼はこの時点で浅井氏の重臣としての地位を確立し、当主である浅井長政からも感状を受け取っていた。この頃、貞大は武士としての経験を積むと共に、家族の名誉を守るために奮闘していた。

しかし、時代の流れは彼を苦しめるものとなった。浅井氏が滅亡の危機に直面する中、貞大も父と共に山本山城を守り、織田信長の軍に対して抗戦していた。しかし、天正元年（1573年）8月8日、ついに貞大は織田氏に降伏し、山本山城に織田軍を引き入れざるを得なかった。この行為は、小谷城の孤立を招き、浅井氏の滅亡に大きく寄与することとなった。

新たな立場と葛藤

浅井氏の敗北後、貞大は山本山城と伊香郡の本領は安堵されたものの、羽柴秀吉の与力として仕官することになる。彼は安土桃山時代の混乱の中で、自身の領土配分について秀吉に対する不満を抱くようになった。特に1575年8月に行われた越前一向一揆討伐に参加しつつ、執筆した書状では秀吉による竹生島の扶持奪取が「違乱」として表現されており、彼の不満が伺える。

このような背景もあって、父子は秀吉の中国攻めには同行せず、近江に留まった。天正6年（1578年）には、安土での相撲大会において信長の馬廻として奉行を務める。そこで強力な相手として知られる永田景弘との相撲に挑み敗北を喫するなど、武士としての立ち位置を再確認する出来事もあった。

明智光秀との関係

彼の運命は、天正10年（1582年）の本能寺の変によって劇的に変化した。光秀による信長の暗殺の一報を受けた貞大は、すぐに明智光秀に加担し、長浜城を占拠する。この行動は、彼自身の忠義心を示すものであった。しかし、山崎の戦いに参加し敗北した後、貞大とその家族は秀吉の軍に捕らえられる運命にあった。

最期と歴史の記憶

『惟任退治記』によれば、貞大の処刑方法は磔刑であり、彼の首または胴体が本能寺に晒されたと言われている。その最期は彼の忠義を象徴しており、戦国時代の武士の生き様を色濃く反映している。彼の生涯は、戦う者の宿命と忠義、また裏切りの歴史の中での大義を教えてくれるものである。

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