院源

院源（いんげん）

院源は、平安時代中期の天台宗の僧侶で、第26世天台座主を務めた人物です。光孝平氏の平基平の子として生まれ、幼くして父を亡くした後、比叡山で出家しました。良源と覚慶に師事し、天台宗の教えを深く学びました。

経歴

980年、良源の中堂供養に僧綱として参加し、僧侶としてのキャリアをスタートさせました。987年には山科の慈徳寺が創建された際、初代の阿闍梨の一人に選ばれます。993年の山門派と寺門派の分裂では山門派として行動し、園城寺長吏の勝算の横暴と、その弟子の逮捕を朝廷に訴え出ました。

998年、覚慶が天台座主に就任すると、その後任として法性寺座主に就任。985年には延命院七禅師に任じられています。1001年に権律師に任命され、翌年には内裏八講会供奉の賞として権少僧都に進みました。1005年には崇福寺別当に任命され、1010年には内裏での法華経千部会の講師を務め、その賞により権大僧都に昇進しましたが、翌年には辞任し、感神院検校に移ります。同1011年には一条院の出家の戒師、冷泉院の葬送の導師を務めました。1017年に法印に叙され、同年には三条院、1019年には藤原道長や皇后藤原娍子の出家の戒師を務めています。

1020年、天台座主に就任し、同年に権僧正に進みました。1022年には法成寺金堂の落成供養で導師を務め、1023年には僧正に転じ、良源以来中断していた法務も兼務しました。1024年には脩子内親王の出家の戒師を、翌1025年には藤原嬉子の葬送の導師を務めました。同年には後一条天皇に仁王経を講じ、その賞として輦車を賜る栄誉を得ています。1027年には相次いで亡くなった皇太后藤原妍子と藤原道長の葬送の導師を務めました。

晩年は西塔北尾谷の西方院に住み、1028年に生涯を閉じました。

人物

院源は弁舌に優れており、説教の名手として知られていました。その才能は宮廷社会の要求に応え、王侯貴族からの信頼も厚く、彼らの招きに応じてしばしば仏事を執り行いました。特に藤原道長との関係が深く、道長の出家や葬儀の際には戒師や導師を務めています。

『今昔物語集』には、源満仲とその郎党らが院源の説教を聞いて感銘を受け、涙を流して発心し、主従そろって出家したという逸話が記されています。この逸話からも、院源の説教の力が非常に大きかったことがうかがえます。

参考文献

多賀宗隼 著「院源」、国史大辞典編集委員会 編『国史大辞典』 1巻、吉川弘文館、1979年。ISBN 978-4-642-00501-2。
三橋正 著「院源」、朝日新聞社 編『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞社、1994年。ISBN 978-4-02-340052-8。
飯田悠紀子; 山本吉左右「多田満仲」『新編 日本架空伝承人名辞典』平凡社、2012年。ISBN 978-4-582-12644-0。
上田正昭; 西澤潤一; 平山郁夫 ほか 編『日本人名大辞典』講談社、2001年。ISBN 978-4-06-210800-3。
* 東京大学史料編纂所 編『大日本史料 第二編』 27巻、東京大学出版会、2001年。ISBN 978-4-13-090077-5。

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